フラッシュバック
連喜
第1話 トラウマ
*本作は「スナック」の続きです。
俺は知人に勧められて、場末のスナックに行った。俺はそこで出会った客の女性に薬を盛られてしまった。警察に行こうか迷ったけど、最初は和姦だったし、睡眠薬を飲まされたかどうか証拠がない。睡眠薬はすぐに検出されなくなるみたいだから、女の部屋を出てすぐに警察に通報すべきだった。
だけど、俺が寝ている間に、猥褻行為をされていたかどうかはわからない。ただ、寝ていただけかもしれない。俺は女に会うのが怖くて確かめられないでいる。
そのスナックに連れて行ってくれた人とは会社で毎日会うのだが、彼は今でも通っているみたいで「また行こうよ」と言う。
でも、俺は薬を盛られたということが恥ずかしくて、彼に言えないでいる。もし、話したら、すぐに店のママやホステスたちに言うに決まっている。そしたら、俺が逆レイプされたことが皆の飯の種になってしまうんだ。それは嫌だ。
それに、あの女にまたどこかで会うかもしれないということも恐ろしい。彼女はオフィス街にある中小企業のOLだった。都内で会う可能性もある。俺は男だから、帽子を被ったり、化粧したりするわけにもいかない。発見したら声を掛けてくるかもしれない。俺に薬を盛っておきながら、女は「また会いたい」と言っていたんだから。
とにかく、俺にとってはかなりショックな出来事であったのは間違いない。あの出来事のせいで、長年腐心して、何とか均衡を保ってきたメンタルが崩壊してしまったのだ。
俺は頭がおかしくなって、風俗に通うようになってしまった。自らネットで調べて、危なくなさそうな店に行った。俺が選んだのはピンサロとヘルス(違いが判らない人は、ネットで調べてください)。最初のうちは初心者でおどおどしていたけど、お気に入りの子ができるほど通い詰めていた。俺は月の手取りが60万くらいあったから、ちょっと無理をすれば、そういうお店には毎日行けるくらいだった。
その頃は、家に帰ると、同居人から変な匂いがすると言われていた。風俗に行ったことがばれると、そいつから包丁を持って追いかけまわされてもいた。地獄のような日々だった。
夜寝ていると、夢でうなされるんだ。
俺は南の島のリゾートにいる。一緒にいるのは会ったこともない人たちだ。みんな外人。男も女もいる。彼らとビーチサイドのレストランで飯を食っていた。若い男が変な話をしている。
「ネットで家を買ったけどトイレがないんだ」
そして、また、睡眠薬入りのブルーのカクテルを飲まされる。みんな似たような物を飲んでいる。俺はそれが危ないとは思っていない。
その後、記憶を失って、気が付くと体が動かなくなっていた。ベッドの上で、繰り返しレイプされる。俺は悪夢にうなされて、同居人に心配される。
「大丈夫?」
俺は震えていて、その夢が現実なんじゃないかと思いこむ。
その頃には、市販の精神安定剤を飲むようになっていた。一人で寝れなくて、中学生に隣で寝てもらう。
「病院に行った方がいいんじゃない?」
「行きたくない・・・」俺は駄々をこねる。
でも、フラッシュバックに1日何度も襲われる。仕事をしていても、頭の中にスナックで会った女の顔が浮かんで来る。女の声。一緒に部屋にいた時の会話。セックス。カクテルを一緒に飲むところ。そういう場面が、写真のように順番に俺の頭の中に現れる。俺は恐怖で頭を抱え込む。もう、仕事にならなくなっていた。
俺は思い切って、行政の電話相談に電話をかけたが、出たのは女性だった。俺は相談するのが恥ずかしい。あちらは、男のくせにと思っているらしい。それか、男だから女性ほどダメージがないと踏んでいる。
「ああ、そうですか。お辛いですね・・・。警察に相談してみたらどうですか?カウンセリングもありますよ」と、言われるだけだった。
俺は風俗に行くことで気を紛らわす。仕事のある日は毎晩行ってしまう。風俗に行き終わると、一人でいることに耐えられなくて、暇つぶし系のチャットルームに入り浸る。夜寝るのが怖い。怖い夢しか見ない。繰り返しレイプされる夢ばかり。
でも、仕事には行かなくてはいけない。働かないとローンを返済できない。眠るために睡眠薬を飲む。怖いけど、布団をかぶって無理やり眠りにつく感じだ。まさに、地獄。夜寝ていると、ED薬を飲まされて元気になった俺の上に色んな女が乗って来る。
風俗にばかり行っていたから、そのうち、性病にかかってしまった。淋病とクラミジア。前もかかったことがあったけど、病院に行くのは恥ずかしい。
男の医者がいる所を探して行く。
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