第4話 魔術学校の道のり
魔術学校の話を聞いたルカはある決心を決めていた。
そこで自室のクローゼットから適当な服を取り出して、着てみた。うん、変わらない。
「あの日から何も変わらないか」
ルカは自分の背負った罪と罰を頭の片隅に思い浮かぶ。
ルカの背負った罰は重たい。罪を補うためのものだけど、そのせいで体の成長が完全に止まってしまっていた。つまり永遠の十五歳。
それがトキワ・ルカが背負ってしまった果実の呪いだった。
「よし、これでオッケー」
ルカは適当に着られるものを着た。
昔着ていたもので、ネイビーのジャケットにロングのゆったりカーゴ・パンツ。白のベルトには革製のウエストポーチが二つくっ付いていた。
「この格好も懐かしいな。確かセレナと旅をしてた時のだっけ」
懐かしさが込み上げる。
セレナとは仲良くしていた。変なライバル意識を持たれていたけどさ、ルカの対の存在として様々な境遇を共にした。そんな彼女は対のせいか、ここにはもういない。決して血の繋がりがあるわけではないが、それは何だか悲しかった。
「さてと。そろそろ行こう。適当にまずは近くの町までテレポートだ」
ルカはテレポートの魔法が使える。
ただし最近は魔力の質が安定していないので、大量の魔力を必要とするこの魔法はしばらく使わないでおこうと決めた。
つまりは見納め。しっかりと使ってあげよう。
「適当に私の知る限りその町まで一番近い町……あそこしかないか。《テレポート》!」
ルカは地面に手を合わせた。
すると真下に光の魔法陣が描かれる。一瞬だけ、ピカッと明るくなるもすぐに収束してルカの姿をその場から消してしまった。
そして次の瞬間。ルカは人が多く行き交う町に転移していた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「よし無事着いた」
ルカがやって来たのは目的の町から一つ離れた町だった。
名前はルーブル。商業的な町で昔からある。それこそ建物の配置とか主な空気とかは何も変わっていなかった。
「千年経っても変わらない町か。なんかいいかも」
くすっと笑ってしまった。
だけどそれで気味悪がられて真横を通り過ぎる通行人の目がやや冷たい。
(ヤバいヤバい。早く行こ)
ルカは急いでその場を離れた。
この町に来た目的を果たす。それがルカのやりたいことだった。
「残念ですが、入試の手続き及び入試は先日終了してしまいました」
「えっ!?」
ルカは驚きで声を上げてしまった。
そんなのってない。じゃあ何で私はここに来たのか、と考えてしまった。
「えーっと、じゃあ次はいつ……」
「来年になるかと」
「ま、マジですか……」
ルカは崩れた。
ルーブルの町の役所で働くお姉さんは優しくそう教えてくれた。だけど諦めきれない。手続きは他の町の方が周りが早い。その情報をもとにやって来たのにそりゃないよ。
「あの例外は……」
「一定以上の実欲を認められるか、推薦ですね」
「推薦……」
それは無理だ。この時代に私の知り合いなんていない。
いるにはいると思うが、流石にここにはいないだろう。
そう悟ったルカの心は一瞬で打ちひしがれた。
「そうですか。ありがとうございました」
「またお越しください」
そう言われてしまった。
そこでルカは一旦町まで行ってみることにした。
「えーっと、ここから隣の町までは……走るしかないかな」
溜息交じりだった。
この時間で馬車に乗せてもらえるかどうかのレベルだった。
「それじゃあまずは如何やって実力を示すかだけど……」
茫然と考えて歩いていた。
すると豪華な馬車が奥から見えた。いや、馬車じゃないな。あれは竜車だ。ルカはすぐに気が付いた。
「こんなところに竜車って……凄い貴族なんだ」
そんなことを考えていると、
「このっ!」
「か、返して!」
目の前で強盗があった。
相手はお婆さん。そんな相手から男が鞄を盗んだんだ。
「誰か取り返して!」
しかし誰も近づけない。
ナイフを持って逃走しようとしていた。すると竜車がスピードを上げた。しかも魔力の気配を感じる。
「邪魔だ退け!」
ナイフを振り回す。
辺りの人が危ない。ルカは男の前に立ちはだかり、足を引っかけて転ばした。
「うわぁっ!?」
男は前のめりになって転倒する。
ルカは空中に舞い上がった鞄をキャッチすると、お婆さんに返しに行く。
「はい、お婆さん」
「ありがとねー」
「いえいえ」
ルカは笑顔で返した。
しかし盗もうとした男は諦めきれない。それどころか、盗みを失敗させられて逆恨みをしてきた。
「おい女!」
「なんですか?」
「よくも邪魔してくれたな」
完全に逆恨みだった。
そこでナイフを突き立ててルカを襲う。しかし、
「恨むなら自分を恨むんだなぁ!」
「恨むね。それなら勝手に恨んでてよ」
ルカはナイフを払い落とした。
それから腹に拳を一発入れると、風の魔法で吹き飛ばした。
「ぐはぁっ!」
男の体が後ろ向きに吹き飛んだ。
地面に背中から叩きつけられる。しかし着地までに他の魔力の反応があった。
「えっ!?」
ルカの魔法じゃない。
しかし確かに魔力の反応があった。
「一体誰の……」
私は魔力の反応を確かめる。
男に近づいて指を触れると、感じたことのある魔力の反応だった。
「これってまさか……」
ルカは気が付いていた。
この魔力の反応を知っていたからだ。すると、
「やはり貴方でしたか」
「その声……」
ルカは振り返った。
そこにいたのはホワイトベースのゆるふわブロンドヘアーの女性。
長い耳を持ち、頭には魔法使いの古い帽子を大事に被っていた。
「お久しぶりです、ルカさん」
「ナタリー」
女性は笑った。
そこにいたのはまごうことなき千年前の魔法使いの一人だった。
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