第68話 生徒たちの救出

 カートゥーンモンスターに対抗する手段は得られた。


 絶対に殺すマン。いわんや死神。そのデスサイズから生者は誰も逃れられない。

 生きとし生けるものは、いつか絶対に死ぬものだから。


 ……よくよく考えたら、私、神様を召喚しちゃったのね。今回の魔神様騒ぎのさ中に、しれっと神様(死神)召喚とかホント凄いタイミング。まるで出来の悪い宗教を興した教祖みたいで不愉快だけど、そうも言ってられないので黙殺しよう。


 まとめ。


 召喚した死神は、ちゃんと実行力のある神様である。

 権能は生者を絶対に殺すこと。

 生ける者ならどこに隠れても、次元の先へ逃げても、死はすぐ隣でU・Die!


 さて、さて。


 私はアモル侯爵と死神のサンズを引き連れて、トコトコとダンジョンを探索していた。当初呼び出していた五体の暗黒騎士たちは、タワシ型のカートゥーンモンスターによって人形を壊すみたいにバラバラに粉砕されていた。なので一旦引っ込めた。


 ダンマスとしての能力のおかげか、トラップの類には一切引っかからない。


 どこにトラップがあるか一目でわかるし、見なくても感じ取ることができる。罠解除も自分のダンジョンコアに干渉すると、魔力消費を代償に解除もできる。



「わちょっ、熱っ、あちちっ、からっぽのフラスコが盛大に火を噴きましたよっ」



 学院ダンジョン探索中。錬金術研究室の内部を通り抜ける際、足元を気をつけるよう私が忠告しているのにアモル侯爵は実験器具に足を引っかけていた。



『アーチーチー、アーチー♪』



 楽しそうに死神のサンズが歌っている。色々と結構、危ない歌詞だなと思う。主に利権ヤクザひとでなしどもの耳に入ると。具体的には日本音楽著作権協会的な?


 そうこうしているうちにカートゥーンモンスター五体とエンカウントする。


 彼らは部屋の隅で恐怖に震えるパジャマ姿の少女たちを扇状に囲み、さりとて攻撃するでもなく、しかしあえて威嚇行動などをとって彼女らを怖がらせて遊んでいた。


 よし、ブッコロ。


 サンズにカートゥーンモンスターへの攻撃を命じる。


 陽気な死神はオペラの出演者みたいな大仰な礼を私に取り、そうして歌い踊りつつモンスターに襲い掛かった。まず、ドラ〇もんみたいなモンスターを脳天から尻までデスサイズで唐竹割りにする。次いで二頭身のの〇太みたいなメガネモンスターの首をスパンッと刈り取る。勢いで飛んで行った首はコ〇助みたいなモンスターの頭部にゴツンと一発、陥没死させる。ギガ〇ンビみたいなシャーマンモンスターは逆袈裟でシャットアウト。フクゾー・○グロみたいな黒服のモンスターはデスサイズの台尻で眉間を突かれて身体を内部から爆発、お前はもう死んでいるを実地再現した。



『ユー・ハ・ショック!』

「愛をとりもどせ?」

『イェース!』



 パチパチパチ、となぜか私は逆にサンズに拍手され、サムズアップされる。


 私も笑顔でサムズアップを彼に返す。

 うーん、陽気だね。



「……それで、大丈夫だったかにゃ?」



 身を寄せ合ってガクブルしていた学院少女たちに声をかける。ネグリジェっぽい寝間着やら無駄に可愛いロリパジャマやら、正しく女の子な彼女たちが10名ほど。



「き、吸血公女さま。アモル学院理事長……」



 彼女たちの一人が、私を見て呟くように声を漏らした。そして、堰を切ったように泣き出した。緊張からの緩和。安心泣きだった。それは次々と伝染していく。



「にゃあ。アモルん侯爵、任せた!」


「えぇー。こういうのはカミラお嬢様のほうが適任な気がいたしますが……」


「幼女にイイコイイコされるのと、学院の長に保護されるのとどっちが安心する?」


「私なら断然バブ美をセレクト! ロリっ子にイイコイイコされたいですよ!」


「もー!」



 呆れた。やっぱりこの人、変人だわ。


 私は泣き続ける彼女たちのもとに近寄って、一人ずつイイコイイコしてあげる。


 もう大丈夫だから、一緒に他の女の子たちも助けて、このわけのわからないところから脱出しましょう。あの怪物は自分たちが対処するので、ついてきてほしい。


 ハグしてほしい子には、ハグしてあげる。

 小さい私とハグなんて、一体どっちが抱かれているのかさっぱりだけどね。


 裸足の子たちが多いようなので、戦力にはならないことを前提にレベルを抑えた暗黒護衛騎士たちを人数分出して一人ずつお姫様抱っこにして移動手段とする。



「この騎士たちは、見た目に反して所作は完璧に紳士そのものですねえ」

「アモルん侯爵もお姫様抱っこ希望?」

「あー。私は似合わないので、あはは……」


「でもルナマリアちゃんに、逆にお姫様抱っこされたかったり?」

「うふふ。いいですね、そういうの。トキめきで心がぴょんぴょんします♪」

「処置なしにゃ」



 私たちは探索を再開する。

 後ろには暗黒護衛騎士 with お姫様抱っこな令嬢たちを連れて。


 もしかしたらダンマスとしての勘、なのだろうか。よくわからない。

 自分でもあやふやではあれど、なんとなくトラップの少ない方へと選んで移動すると、不思議とカートゥーンモンスターに遭遇しにくい傾向にあると私は気づいた。


 あるいは、誘われている?


 ちょっとその辺はわからない。が、答えがあっているのか間違っているのか、救出すべき学院少女たちとよく出会えた。もうすでに百名を超えている。


 問題は、未だマリーとセナーナを筆頭とするメイド隊と出会わないことか。


 先頭に私。次いで死神のサンズ。そしてアモル侯爵。私たちの後ろには整然と並ぶ暗黒護衛騎士 with お姫様抱っこな令嬢たち×百数名。


 整然と並んで歩くものだから、第三者視点ではかなりシュール。最初はおっかなびっくりで騎士に抱かれる令嬢たちも、じきに慣れて完全に身を任せている。


 私の暗黒騎士は、騎士道を遵守する紳士だからね。女の子には特に優しいよ!


 たまに遭遇するカートゥーンモンスターはサンズが出会い頭にズンバラビと処してしまう。さすが死の神様。絶対殺すマン。陽気に片っ端から斬り捨てる。


 気が向いたので、私は往年の歴代女児向けアニメのOPテーマを歌いながら行く。


 ただ歌うのもつまらないので想像魔法で拡声器つきマイクを作り、熱唱する。


 なんで歌うのかって? 別に、俺の歌を聞けぇなどと言うつもりはない。ただ原色全開のモンスターにうんざりした心を慰撫するために歌っているだけだった。


 同じ可愛いでも、狂気の可愛さより萌えの可愛さのほうが私は好みだった。


 モンスターが出ない間は、死神のサンズはギターを何処かから取り出して私の歌に伴奏までつけてくれる。神様って多彩だね。ノリノリで歌っちゃうよ。


 そんなこんなで進むと、今度は……なんだこれ? わけわかんない。



『警告。これより先を進みたいなら、探索者は大人でなければならない』



 廊下の行先、次のエリアへ行く扉の前。

 そう、書かれた立て看板が。


 ……どゆこと?


 どこかの死神探偵みたいに、身体は子供でも頭は大人なら通れるのかな?

 それとも、頭の中は子供のままでも、身体さえ大人ならセーフ?


 精神と肉体のどちらを優先させているのかという問題。

 


「うーん、もしかしたら公国指定冒険者ギルド規定ですかねえ?」

「アモルん侯爵。ここ、学校だよ。冒険者ギルドなんて関係あるの?」


「学院には校外学習も当然あって、学院指定のダンジョンに入る授業もあるのです」

「そうなんだー」


「ただ、ダンジョン探索は成人してからでなければ入れない規則がございまして。公国内冒険者ギルド独特の決まりです。ちなみに成人は、人類では15歳となります」


「ふむふむ」


「カミラお嬢様はどこをどう見ても三歳児です。とっても可愛いのです」

「みゅう……」


「しかし、いまさら、何故ですかね?」

「ダンジョンの決まりごとに、なぜどうしてはないの。それ自体がデバフだから」


「嫌がらせ、ですか」

「決まりを守らないとペナルティー」


「……どうしましょう」


「ふみゅ。そりゃあ当然、魔法の天使ク○ィミーマミなの」

「魔族なのに天使!?」


「細かいところはいいのよー」



 私は前回の大罪との邂逅で貰った『嫉妬』の権能を発動させる。

 あれっ、身体が勝手に動いて魔女っ子(魔法少女)の変身シーンっぽいポーズ取っちゃう。光とスモークがそれっぽい演出してくる。やめてとめて恥ずかしい。


 くるくると回転しつつ変身完了。あっけにとられるアモル公爵以下少女たち。



「ふー。人類観点でのカミラ15歳バージョン。魔族天使プリティカミラ参上!」

「お、おお……カミラお嬢様、おっぱい大きいですね……」


「ひと言目がそれとか、アモル侯爵はデリカシーが無さ過ぎでしょう……」


「いやあ、それほどでも。お褒めいただきありがとうございます」

「――褒めてないわよ!?」



 とりあえずこれで条件は満たしたと考えても良くないだろうか。


 中身は大人(だと思う)。身体も15歳に合わせた。……おっぱい、ホント大きいね。

 後ろの少女たちは救出対象であって探索者ではない=戦力外なのでセーフ。


 つまり、私さえその条件をクリアーできれば行けるはず……。


 私は扉を開け放ち、中に侵入した。




【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る