第2話
「すいません! 遅くなりましたぁ!」
「……お、おう、遅かったな」
「どうしたんっすか? まだ荷物も開けないで」
「おい! 向こうで状況を説明してやれ!」
「ああ、分かった。……ちょっと向こうに行って話そう」
「何かあったんですか? キャンプサイトの予約取れてなかったとか? あ、忘れ物しちゃったとかですか?」
「そ、それがだな……どこから説明すればいいか。くそっ! 一体どう説明しろって言うんだよ! こんな面倒な役回りをやらせやがって!」
「と、とにかく落ち着いてくださいよ。直接キャンプとは関係ないトラブルなんですか?」
「ああ、そうだ。……このまま悪者にされるのはごめんだからな、くそっ」
「悪者? もしかして、怪我人が出たか、あるいは、あの動揺の仕方じゃ行方不明……いや、まさか死んでしまったか、とかじゃないでしょうね?」
「え? 何を突拍子もないこと言ってんの? ちょっと遅れて来はしたけど、そんな事件が色々起こるか?」
「だって、『説明してやれ』なんて声荒げて言ってるの、初めて見たし」
「そりゃあ、そうだけど……」
「な……何もしていないぞ。何も知らないんだ」
「やっぱり、そういうことなんですか」
「そういうことって、どういうことだよ?」
「着いてすぐだよ。見たでしょ? テントとか全く関係ないところを、スコップで均していたじゃないか」
「まさか、あそこに埋めていた?」
「いいや、それはどうかな? あんなキャンプサイトに入ってすぐの所に埋めるはずがない。遅刻してきたといっても、大きな穴を掘る時間だってない」
「じゃあなんだよ」
「関係ないぞ……。関係ないからな……」
「あれはそう、おそらくだけど、流れ出た血とか、千切れた何かを隠していたんじゃないかな。そしていま、車に積まれようとしているあのシュラフ。あの中には……、あの中に入れられているはずだ!」
「ああ! もう知らねえ! 知らねえぞ!」
「なんだって? だとしたら……。いない! 一人足りないじゃねえか! どういうことだよ……。ねえ、教えてくださいよ! さあ!」
「……」
「黙っているところを見ると図星っぽいね」
「まじかよ……。でもいったい何がどうなって?」
「それは、あれさ。ほら、必死になって手を洗っているじゃないか。スコップで掘る、シュラフを積む、状況の説明をさせる、その全てを指示しながら」
「まさか!」
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