全文解説「期間限定オレオ」

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  『全文解説「穴」』のページに詳述しましたが、匿名コンには通常のレギュレーションに加えて、評価には一切関わらないチャレンジミッションが定められています。

  本作では、以下の2項目に挑戦しています。

  ・タイトルまたは本文に「オレオ」を含む

  ・冒頭3行を夢見里 龍氏(https://kakuyomu.jp/users/yumeariki)の文体に偽装する


  カクヨムといえば、ユーザビリティのために九龍城塞コーディングを重ねた「小説家になろう」とは対極的に、クライアントの要求仕様を通り一遍満たした仕様バグの温床として知られています。

  過去にデザインの改善は行われましたが、バグ修正については収益にも繋がりませんし、基本的に放置するスタンスのようです。


  そんなカクヨムで「オレオ」と言うと、サービス開始当初、現在では(珍しく)修正済みの仕様バグによってランキング1位に君臨した三文字小説『オレオ』を連想します。

  恐らくその『オレオ』にもインスパイアされたものかと思いますが、カクヨム上で開催される本コンテストにおいても、歴史的に「オレオ」に関する作品がたびたび登場するそうです。


  なので、本作ではとりあえず、大きなオレオをAA(AAではない)で描いてみました。

  PC表示の場合は表示が崩れますし、スマホ表示でも機種によって崩れる可能性はありますが、ひとまずスマホ閲覧用としています。


  また、2項目に関する個人の追加ミッションとして、

  ・文体を偽装しつつも本人の作だとは絶対に思われないようにする

  という物を加えています。

  詳しくは別途、本文に添える形で解説していきます。

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 白塗りの鉄扉を押し開いた。


 甘みを帯びた幽香ユウコウが漂う。バニラの香りは柔らかくも、部外者を押し返す圧を放っていた。そのひとは化繊カセンの白衣の袖から生白い手を掲げ、戸口で躊躇タメラうわたしを手招きした。

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  冒頭3行の文体偽装ですが、この文体は最新の物ではなく、カクヨム投稿分の初期短編、中編を主に参考にしています。

  例えば、最新の連載作等では固有名詞や外来語を除く振り仮名は、平仮名で振られる場合が多いのです。

  しかし旧作では片仮名の物が多かったため、本作ではそちらを採用しています。


  形態素のパターンや漢字の開き方、ルビの比率以外での偽装ポイントとしては、

   1. 色名を記述する

   2. 素材名を記述する

   3. 視覚以外の情報を記述する

  といった物が主にありますが、この冒頭3行にはそれを無理やり全て詰め込みました。

  目的と手段が転倒しています。

  抽出した要素だけ詰め込めば良いというものではありませんね。

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「秋季限定、オレオ・スイートポテト味ですか」


 オレオ商品開発部からの呼び出し。

 それは新商品の開発に関する協力依頼だった。

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  『全文解説「おやすみチャンネル」』でも触れましたが、今回はテーマが四季ということで、テーマから即座にストーリーを思い付く、というのは難しい所があります。

  実際に幾つか見られた通り、春夏秋冬の連作で応募するのが最も馴染み、綺麗に収まる手段だったのでしょう。

  四季の限定オレオみたいな感じで。

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「商品案を二種類作ったのだが、自分達では客観的な判断が難しい。

 第三者として意見を聞かせてもらえないだろうか」

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  実際に書いている私が後述の1、2案のいずれを本採用するか決め兼ねたので、両方載せとこう、ということでこうなりました。

  掌短編小説なのだから、理想的な展開以外は全て剪定した方が良いのですが、折角AA(AAではない)を作ったので勿体ないなと。

  この「勿体ない」という感覚が良くないんですよね。

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 急な呼び出しでわずかに緊張していたが、それならば話は分かる。

 オレオ・スペシャリスト検定のエキスパート資格を保有し、個人的にもオレオ・アドヴァンスド・パートナー会員であるわたしに、そのような業務命令が来たのは自然なことだった。

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  この物語はフィクションであり、実在の人物、企業、オレオ等とは一切関係ありません。

  現実世界のオレオにオフィシャルの検定試験はありませんし、社外の個人と業務委託契約を結ぶ制度も恐らくありません。

  なお、Advancedは「アドヴァンスト」と表記すべきですが、その辺の企業独自の名称というのは案外適当なので、最初に付けた名称をそのまま使っているのではないでしょうか。

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「承知しました。それでは実際にサンプルを見せていただきましょう」


 なお、本作はPCではなくスマートフォンでの閲覧を推奨する。

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  スマートフォン複数台で確認しましたが、スマホ表示ならそこまで大きく狂うこともないかなという所です。

  PCで見るとガッタガタに見えます。

  逆に、PC表示用に調整したものは、スマホで見ると変に歪んだりします。

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◆第一案


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  横から見たオレオです。

  スマートフォンにしても1行の文字数は違いますし、カクヨムは文字サイズの調整も設定で可能なので、そこそこの層には想定通りに表示される横幅にしつつ、ある程度は妥協しています。


  実をいうと、オレオのAA自体は前回匿名コンの時点で作成していたものの、使い道がなくて死蔵していたのです。

  元々はスタンダードなオレオのAAだったため、クリームも白い「○」の形に描かれていましたが、季節限定のスイートポテト味なので、代わりに芋の絵文字を挟むことになりました。

  絵文字の横幅は閲覧環境によって異なるため、PC閲覧だとクリームがクッキーからはみ出ています。

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 ココアクッキーでサツマイモクリームを挟んだもの。

 味は良い。ココアのほろ苦さと芋の皮の渋みが、程よく舌を震わせる。

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  想像してみましたが、普通にオレオの中身をサツマイモクリームに置き換えてもあまり美味しくなさそうな気がします。

  期間限定商品なんてそんなもん、と言われればそうなのですが、オレオ好きの主人公が味は良いというのだから、きっとこれは開発部が頑張ったのでしょう。

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 ただ、クッキー生地はいつものココア味、黒いそれだった。

 通常、期間限定のフレーバーはクッキー生地の色を変えることで、その外見的個性を際立たせるのだけれど。

 これでは真上から見た時――通常のオレオと見分けがつかない。

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  お菓子の期間限定商品は往々にして、味は二の次に見た目で売るものですから、見た目が変わらないのは致命的なのではないでしょうか。

  どう考えても商業的にはこちらが没です。

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  この文字入りココアクッキーと、中のクリーム(大きい○)と、ココアクッキーの裏側のAAを作っていたのです。

  表面以外は没になりましたが。


  なお、コメントで縦書き表示で閲覧しているという話があったので「そういやそんなのあったな!」と確認してみたところ、案の定、縁がギザギザになり、OREOの文字もバラバラになっていました。

  そりゃそうだろうなと思いました。


  また、それ以前の問題として、私は普段は黒背景白文字でカクヨムを閲覧しているため、オレオの白黒も反転して表示されています。

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◆第二案


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○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

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  芋で白いクリームを挟むパターンのAA(AAではない)です。

  例によってPC表示ではクリームが凹んでいます。

  Androidのスマホではそれなりに問題なく表示されていますが、そういえばiPhoneでの表示は確認していないので、どうなっているかは不明です。

  しかしながら、iPhoneユーザやアップル社は「iPhoneとスマートフォンは全く異なる存在である」という認識を持っている場合が間々あるのです。

  「スマホ表示」とだけ書いていれば、仮にiPhoneで表示が崩れても、iPhoneユーザは「ああ、これはスマホじゃなくてiPhoneだから仕方ないよな」と納得してくれることでしょう。

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 こちらはサツマイモ味のクッキーでバニラクリームを挟む。

 これも味は良い。芋の風味が広がった後、絹のように滑らかなバニラが舌を覆い、両者が渾然と溶け合う。

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  普通に実在してそうな商品なので、念のために過去に発売されたフレーバーを確認しましたが、インターネットでざっと確認できる範囲には見つかりませんでした。

  もし似たような商品が本作の公開前に発売されていた場合は、甘んじて恥を受け入れましょう。

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 ただ問題点が一つ。

 真上から見た時、とにかく色味が不気味なのだ。

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  改めて見ると、この絵面は集合体恐怖症の人には厳しいかもしれませんので、苦手な方は薄目で見てください。

  現実世界で商品化するなら、芋の皮は入れないので黄色いクッキーになると思うんですけど、↓

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  このAA(AAではない)では当然のように皮も混入されています。

  皮も入れた方が栄養価が高くなるのではないでしょうか。知りませんが。


  一応OREOの文字だけは黒線の組み合わせで入っています。

  縦書き表示の場合は、もちろん崩れます。

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「味はどちらも素晴らしいものです。しかし問題は外見でしょう」

「そうだろう」


 オレオ商品開発部も、その問題点には気付いていたのだ。

 流石はオレオの最先端を行く精鋭。

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  味がどちらも素晴らしくなっている時点で、商品開発部の有能さが覗えますね。

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 そんな彼らをしても。

 オレオの開発は一朝一夕にはゆかぬのか。


 わたしはオレオの奥深さを改めて実感し、開発部を後にした。

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  繰り返しとなりますが、現実世界で商品化するのであれば第2案で即決です。

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 台風が過ぎ、銀杏イチョウの葉すら散っている。


 今年の秋には、きっと。

 発売は間に合わないのだろう。

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  この辺りの改行の感じや、植物の名称を差し込む辺りは件の文体偽装が絡んでいます。

  が、テーマが「秋」だから秋の植物を使わないといけないし、そうなると既に秋は来ているのだから商品開発が間に合うわけがない。

  そういうわけで、このようなオチが取って付けられたわけです。


  秋が来るどころか、銀杏の葉が散っているならもう真冬なのでは……?

  とは思うものの、落葉の原因は台風らしいので、きっとまだ秋なのでしょう。

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