鼓動の速さでわかる事
三愛紫月
吉宮凛の楽しみ
「かっちゃん、届いてた?」
「はい、はい。ラブレター」
俺のマネージャーの勝田さんは、いつもそのラブレターを見つけると中身をさっと確認してすぐに渡してくれる。
本当は、駄目なのだけれど。
「ありがとう」
その人から、ファンレターがやってきたのは、人気絶頂の俺のドラマで唯一打ちきりになった作品が最終回を迎えた後だった。
「ラブレター、届いてた?」
「届いてたよ」
俺の彼氏、
こちらも、人気絶頂の若手俳優だ。
俺は、
俺も、人気絶頂の若手俳優だ。
「早く、読もうよ」
「ああ、そうだな。えっと」
[吉宮凛様。私は、この度、主人と別れ、女性とお付き合いする事になりました。彼女に、不安な思いをさせてしまっています。どうすれば、いいのでしょうか?今は、主人と主人の彼と彼女の四人で、ルームシェアをしております。【鼓動の速さでわかる事】が、Blu-rayになったので、またお手紙を書いてしまいました。いつか、私のお弁当屋さんのお弁当を食べてもらいたいです。梨寿 ]
読み終わると、はやてが首を横に傾ける。
「どういう状況?」
「さあ?」
お弁当屋さんのチラシを広げた。
「美味しそう。差し入れにしたら?今度の映画の」
「じゃあ、味見してこようかな」
「凛君、出歩くのはダメですよ」
「イーじゃん。少しくらい」
「ダメです。人だかりが出来ます」
そう言って、かっちゃんに怒られてしまった。
「凛は、この大宮さんに興味ありまくりだね」
はやては、俺の膝の上に頭を置いた。
「ああ、あの役に興味持ったのこの人だけだしな」
「あの、ドラマ。不妊の話だったよね。」
「不妊とかよくわかんない世界の事だけどさ。俺としては、悟みたいなやつもいると思ったんだけどなー。」
「確かに、人間らしかったよね。」
「だけど、何か教育によくないとか、深夜にやれとか、吉宮にやらすなとか、批判しかなくてさ。大宮さんだけ、ラブレターくれたんだよな。」
俺は、お守りがわりに財布にいれてる手紙を出した。
「また、読んでよ。」
はやては、このラブレターがお気に入りだった。
【吉宮凛様。初めてファンレターを書かせていただきました。【嘘つきは、夜に泣く】が、7話で終わってしまって残念でした。私自身、結婚して9年いまだに子宝に恵まれておりません。悟のように、思ってる事を口に出し、浮気の一つも出来たら違いましたかね?吉宮さんが、悟役でよかったです。素晴らしかったです。これからも、応援しています。梨寿】
パチパチパチパチ
「いつも、拍手するな。はやては」
「だってさ、悟がこんなに愛されてるの何か嬉しいじゃん」
「まあな。」
「結構好きだったよ。俺も、【嘘つきは、夜に泣く】」
「俺もだよ。かっちゃんや、監督さんにファンが減りますけど、どうしますか?って言われたけどさ。俺は、悟が嫌いじゃなかった。不妊治療の末、浮気したり、奥さんに酷いこと言ったり、友達の子供殴っちゃったりさ。酷いやつかも知れないけど、人間臭くて好きだったな。」
「だよね。俺も好きだったよ。」
「でも、次のドラマで御曹司の好青年やって人気回復できたから…。悟は、人生の汚点になっちゃったかな?」
「何か、寂しいよね。気に入ってる役が、嫌われちゃうのって」
「はやても、ヤバかったよな。【蛇の目に恋】だっけ?」
「そうそう。爬虫類とキスするはやて、キモすぎるー。だってさ。」
「仕事選べよってな」
「台本読んで、よかったから決めたんだけどね」
「まあ、【鼓動の速さでわかる事】で。取り返したからよかったじゃん」
「凛が、俺以外の男の俳優とラブシーンやるとか考えたら狂いそうだったわ」
「
一年前に、撮影をした【鼓動の速さでわかる事】は、BLものなのに異例のヒットを飛ばした。
台詞と、俺とはやての恋人同士感がリアルでよかったらしい。
って、リアルで付き合ってるんだけどね。
「明日、休みでしょ?凛」
「弁当、買いにいく。シッーな」
俺は、はやての頭を撫でた。
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