可愛い寝顔
一通りの片付けを終えて戻ると、大宮さんは、もう寝ていた。
いつか、大宮さんを私のものに必ずするからね。
私は、大宮さんの横に眠る。
「由紀斗、無理だよ」
何の夢を見てるのか、大宮さんの目から涙が流れている。
子供が、出来ない事を泣いているのだろうか?
子供にイライラするから、めんどくさいって、前に働いていた人が言っていた。
イライラも出来ない人が、ここにいる。
イライラ出来るなんて幸せじゃないの?
あの時は、大変だねーなんて笑ったけど。
大宮さんに出会って変わった。
イライラしたくても出来ない。
あの人は、大変じゃない。
ワガママだよ。
私は、大宮さんを抱き締めていた。
イライラしたり、喧嘩したり、怒ったり、泣いちゃったり、もう、嫌だって言っちゃったり、笑い合ったり、したかったでしょ?
嬉しさも悲しさも怒りも、三倍、四倍だったでしょ?
大宮さんは、きっといいお母さんになれたはずだよ。
なのに、なんで、出来ないのかな?
私と付き合ったら、苦しまない?
なら、一緒になろうよ。
大宮さんが、楽になるなら何だってするから…。
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チュンチュンって、鳥の鳴き声で目が覚めた。
「店長、起きちゃいましたか?まだ、五時過ぎですよ」
「はあー。目覚まし時計鳴る前にいつも起きるんですよ。」
私は、ゆっくりベッドから起き上がってキッチンに行く。
軽く、口をゆすいで水を飲んだ。
「日本人は、わがままですね」
私の言葉に大宮さんが、私を見つめた。
「蛇口をひねったら、綺麗な水が出るのにミネラルウォーターや浄水器をつけてますから」
「そうですね。」
「よその国は、こんな水を飲めないんだよーって、叔父さんがよくうんちくを話してました。」
「そうですか」
「今から私が、勝手に話すこと。聞き流してくれますか?一人言なので」
私は、お水をカラフェに汲んで、大宮さんに持って行く。
「はい、なんですか?」
グラスに水を注ぐ。
「よその国の戦争のNEWSに可哀相だ、酷いと話すのに、隣のあなたの事を何故誰も守ってくれないのでしょうか?」
大宮さんに、グラスを差しだした。
「店長……それって?」
「何故、あなたには酷い言葉が言えるのでしょうか?」
私は、自分のグラスに水を注ぐ。
大宮さんの目から涙が
「隣のあなたを救えない人間が、世界平和を語って何になるのでしょうか?」
私は、大宮さんの涙を拭う。
「世界の平和って、隣にいるあなたに優しくする事から始まるんではないですか?」
私は、水を飲む。
「でもね、人はね。隣にいるあなたより、いい人生が送りたいんですよ。あなたより、いい物を持ちたいんですよ。あなたより、幸せな家庭を築きたいんですよ。あなたより、子供を産みたいんですよ。今の私達の隣はsnsですよ。だから、世界平和も争いもなくならないです。一生」
大宮さんの手を握りしめた。
「だから、大宮さんがお母さんにホッとした気持ちは、感じていい気持ちだったんですよ。」
「店長…」
大宮さんは、私の手を握り返してくれた。
「ただの一人言を聞いてくれてありがとうございます。」
家族や身内より幸せになりたい。
友達より幸せになりたい。
仕事仲間より幸せになりたい。
みんなが、当たり前にもってる感情です。
そんな感情に、苦しんで欲しくない。
「子供を祝えない気持ちだって、もっていていいんですよ。人の幸せを祝えないのなんて、当たり前なんです。それが、人間なんです。それを正論で、押さえ込まないで下さい。そんな事したら、大宮さんが息が出来なくなりますよ。だから、私には話して下さい。嫌だって、辛いって、赤ちゃんが欲しいって」
私は、大宮さんを抱き締めた。
「店長、結婚ってもっと幸せな日々だと思っていました。当たり前のように、子供が出来て、当たり前のように、お母さんになって。だって、誰も教えてくれなかったから…。子供は簡単に出来ないよって」
大宮さんを抱き締めて、背中を擦ってあげる事しか出来なかった。
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