第18話 この世界の真実

ルーク(.................)


何も見えず、何も聞こえず、ただただ浮いている

真っ暗な闇の中目を瞑りながら、ただただそこにいる


ルーク(...............俺は.........死んだのか?)


それはそうだろうあの後勇者や王国兵にリンチにされ内臓はボロボロ、腕や足ももう繋がっていなかった


不思議なことに、その時痛みは無く、ゆっくりと今の自分に起きている状況が理解出来た


その中で頭の中で浮かぶのは幼き日の姿

マイとユキとシャインと4人で遊んでいる姿

春になったら桜を見に行き

夏になったら川に行き

秋になったら果物を取りに行き

冬になったら雪だるまを作りに行き


暖かい日も寒い日もずっと一緒にいてくれた彼女達の笑顔が思い浮かんだ

多分走馬灯と言われるものだろう


思い出す度に涙が止まらず、無い腕で倒れている彼女達に手を伸ばし...................


ルーク(多分そこで死んだんだろう)


そんな事を考えていると何処からか声が聞こえる


???「あー、我の声が聞こえるか?人間よ」


幻聴だろうか?誰かがルークに声をかけてくる


ルーク(聞こえてはいるが、どうやって返事を.................)


???「おー!聞こえたか!良かった良かった」


どうやら心の声(念力に近いもの)が聞こえるらしい。


ルーク(貴方は.......一体?)


取り敢えずこの状況を知らなければならない

今は生きているのか、死んでいるのかわからない状態だ今はただ声をかけてくれるの者に聞くしかないのだ


???「我か?我は、リディア.........お前達で言うところの魔王........かな?」


ルーク(魔王!?)


そんな事ってあり得るのか!?

え?魔王?世界を滅ぼすとか言われてる魔王様!?


ルーク(魔王......まおう.....おうま......オウマ......お馬?)


リディア「いや......文字入れ替えないでよ、我は魔王正真正銘の魔王だ!」


ドヤァという音が聞こえたような気がする

気にしないでおこう


ルーク(.......貴方が魔王かどうかはまだ信じきれていませんが、取り敢えず魔王と信じて貴方と話します。)


リディア「まぁ仕方ないか、今見えないからな」


口調からして若さを感じる(自分を我と呼ぶのは無視して)


ルーク(貴方は一体何故俺を助けてくれたのですか?そもそも生けているのですか?)


まずは生存確認だ、生きているか、死んでいるのか確かめなければならない


リディア「正直なところ半分だな」


半分...........つまり


ルーク(今は生死の境目.......という事ですか?)


リディア「ああ、むしろ今まで生きていたのが奇跡みたいなものだ」


確かにあれ程のダメージを負っていたのなら、普通死んでいてもおかしくない


ルーク(そうですか........では此処は何処なんですか?)


リディア「此処は異空間、此処でお主の治療をしていた、因みに外は魔王城だ、流石にあの町でやるのは不味いからな」


確かにあそこには勇者もいた、そのまま行えば町が危なかった........まて


ルーク(マイは.......?ユキとシャインは!?)


そうだ自分は今助かっているが彼女達がどうなっているか、もし此処にいなければすぐに助けに行かなくては


リディア「落ち着け.......とは言えないか、彼女達はお主を連れていく時には勇者達に連れ去られていた、助けに行きたくとも人質がいては戦えぬからな」


ルーク(人質?確かにそうだけど、貴方には関係ないのでは?)


先程から話を聞くと、小さい頃から聞いてきた話と全く違うのだ、騙している可能性もあるが、とても人間らしい


リディア「関係ある、お主の仲間が死ねばお主は悲しむだろ?恩人をみすみす悲しませるわけにはいかない」


ルーク(...........恩人?)


魔王を助けた覚えはない、そもそも魔王を助けられる程強いのであれば、勇者と少しは戦えるはずだ


リディア「ああ、お主1人の魔族を救っただろ?」


ルーク(1人の...........魔族?)


記憶にない...............いや、確か..........


ルーク(俺が1人旅をしているときに助けた......あいつか!)


リディア「おお!覚えていたか!」


ルーク(はい、確か空腹で倒れていて、リンゴをあげた気がします)


そうルークが世界に絶望していたときに、目の前に人型の者が倒れていたから声をかけて

お腹が空いていると言っていたので、荷物の中から、リンゴをあげたのだ


ルーク(しかし、それと貴方で何か関係があるのですか?)


リディア「ああ、そいつな我の息子だ.........」


ルーク(は?)


リディア「いやだから我の息子.........王国の状況を視察しに行って帰りに敵に襲われたせいで食料がなくなって困っていた時に助けてもらったらしい」


ルーク(............................)


リディア「何も言うな、それのおかげで助かった、それだけ覚えておけばいい」


ルーク(はい)


しかし、助けてもらったのは良いが、どうにも違和感が拭えない、魔王と言うのは世界を滅ぼさんとする悪の象徴として幼き日から聞いてきたのだ。


自暴自棄になり魔族を魔王の息子を助けたとは言えここまで親切にしてもらうと、どうもやりきれないのだ


リディア「しかしお主のような人間がまだいたとはな」


そう言うと魔王は深いため息をついた


ルーク(俺のような人間...........ですか?)


リディア「ああ」


そう言うと魔王は驚くべき事を話し始めた


リディア「我らと人間は古くから共存関係にあったのだ」


人間は魔族よりも知能があり

魔族は人間よりも知恵があった


人間の知能で建物や作物などを作り

悪魔の知恵で魔法や魔術などを作り


共に支え合って生きていた


しかし人間というのは欲の生き物、自分達の住む場所が無くなり始め、次第に争い始めた


最初、魔族はそれには不干渉だった、それは人間の問題であって我々の問題ではないからだ


しかし、人間は思った、魔族の領土を奪えば良いと


そうして起きたのが今日(こんにち)まで続く魔族と人間の戦争だと


昔は反対する人間もいたが、洗脳教育

(幼き日から魔族は悪であり人間が善であると言う教え)で、今の人間達は昔の関係や魔族との共存していた事を知らないのだ


ルーク(となると勇者は一体何者なんだ?神様がいるのなら何故止めない?)


そうなるとおかしな所もある、何故勇者と言う存在が現れるのか、そして神様がいるのなら何故この様な無意味な.......いや、人間の味方をするのか謎が多い


リディア「勇者か.......それは人間の王達が知っているはずだ」


国王達が?一体何故?

そんな風に考えていると魔王は驚くべき事を言った


リディア「神......は多分おらんぞ?」


ルーク(え?)


リディア「我らも信じる者たちがいるが、もし本当にいるのなら都合の良い神か、最低な屑神しかいないだろ?」


確かに、もし本当にいるのなら勇者シンの様な屑人間達が得になる世の中にしているのか理解できない


ルーク(それでは、聖女や職業の時はどう説明するのですか?)


人間がある一定の年齢になると決まる職業の儀、それは神に祈りを捧げてもらうはずだ


リディア「それも簡単だ、職業は素質や体内魔力量、筋力などで決まる、それは神の力ではなく、我々魔族が発明した物を人間が改良しいかにも神がやっている様に見せているだけだ」


そして聖女もただ光の治癒魔力が高いだけらしい

しかし光の魔力を持っていて、

治癒魔法も持っている人がそもそも少なく、いたとしても魔力が低ければただの魔法使い

高い魔力も持ってやっとなれるため

選ばれる人が少ないようだ


——————————————————————


続く

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