第16話 ひとときの幸せ

当分の間困らない程度にクエストで稼ぎ

ルーク達は次の町を目指して旅を続けていた


ルーク「しかし、思った以上にクエストで稼げたな」


大きな袋を手に取りジャラジャラと音を立てながら振る


マイ「まぁ、割りに合わないクエストもあったけど比較的報酬は高いからね」


特に討伐や捕獲など、命に関わるものはそれなりに報酬が良い、そうしないとクエストを受けてくれる人がいないからだ


しかしゴブリン等、素材も少ない魔物などの討伐は発注側の利益が少ない為、危険だが報酬は少ない


ルーク達はゴブリン等の報酬の低いクエストと逆に強すぎて受ける事が出来ない報酬の高いクエストを数日間受けていて、そこそこの金額を持っている


普通の生活(旅を続けて必要最低限の生活)を数ヶ月ぐらいは4人でも出来るぐらいには溜まっているが、何が起こるかはわからない

次の町でも多少のクエストは受けるべきであろう


ユキ「それにしても僕達が高難易度クエストを受けてる時や完了した時のみんなの顔が凄かったね」


シャイン「ああ、まさかあそこまで驚くとは思わなかった」


そう高難易度クエストを受ける時最初の時は止められていたのだ

それもそのはず、ルークは曲芸師

そいつがリーダーなのだから他の人達もそれと同じか、少しいい職業程度に考えていたのだろう、馬鹿な真似はやめてもっと真面目なクエストを受けた方が良いと言われたのだ。


しかしそれは侮辱ではなく、忠告、つまり自分たちの身を案じてくれたのだ。

(その時の3人の顔はヤバかったらしいが)


それでもマイ達の職業を見たらすぐに許可を得た

マイ達は魔法使い、聖女、剣姫

逆に何故曲芸師がリーダーなのか不思議がられていた。


そんな事もあったが、クエストをこなしていくうちにそんな事も言われなくなった


ルーク「所でさ、1つ疑問に思ったんだけど......」


マイ「?......どうしたの?ルーク?」


ルーク「いや、なんで俺がリーダーなんだろうって」


ユキ「男1人だから?」


ルーク「え?」


訳がわからない為、首を傾げる


シャイン「女性がリーダーのパーティは他のパーティ(野蛮な男達)に声をかけられたり色々めんどくさいからな」


彼女達は幼き頃はその容姿や言葉使いなどで嫌な思い出があるのだ

今は逆にそれが仇となって周りの男達からモテるようになった


しかし彼女達はルーク以外の男には興味がない、その為"私達は彼のパーティに入っています"とアピールすることによって諦める奴らもいる


いるっと言う事は逆にそんな男よりも俺たちの方が断然いいと迫ってくる輩もいた

昔は勇者という屑のお陰(とてつもなく癪だが)で助かった所もある(ムカつくけど)


しかしルークは曲芸師、ルークがいない所で迫ってくる者達がこの数日間いたのだ

だが


マイ「話しかけないでください」


ユキ「生理的に無理」


シャイン「殺すよ?」


等、ルーク以外の男には興味が全くないのだ

そのせいで今度はルークが狙われる事もあったが


マイ「ルークを狙う奴なんて死ねばいいのに」


ユキ「聖女として言いたくないですが、僕はそう言う惨めな男が消えて欲しいです」 


シャイン「殺そうかな?」


と、話が漏れてトドメ(精神的)を、刺されて諦めている


勇者と言う正真正銘の屑相手に1年も地獄を見たのだ、その辺にいる奴等など、大した事はないのだ


ルーク(俺的には別に俺じゃなくても変わんないような気がするんだが?)


しかしその事を言えばとてつもなく嫌な予感がする為、ルークは心の中で止めておいた。


ルーク「まぁ、お前達がそれで良いなら、俺は何も言わないよ」


そう言って、旅を再開する


——————————————————————

マイ「.................」


ただ隣を歩く、それだけでここまで心が満たされるなんて思いもしなかった


彼がいなくなって、彼を探して、その時の私達は本当にどうやって生きてきたのだろう


あの屑の地獄を耐えられたのも、1年間探し続けて行けたのも、ただ彼の隣にいたかったから


昔のように皆んなで川に行って魚を釣り

山に行って果物を取る


そんな当たり前のように過ごしていたあの日々に戻りたかったから


今は追われているけど、それでも幸せだと思うのは


マイ(皆んなと笑っていられるから.....かな)


ユキ(僕達は彼が、ルークが好き、でもルークはマイちゃんが好きだった)


最初は諦めようと思った、彼らは両想いだし彼の幸せがなによりも大事だから


でも、今は皆んなで彼と共にいる

彼は僕達の想いも受け止めてくれた


だから僕は僕でいられた、そのままの僕を受け入れてくれたから


だからこそ、僕は聖女としてではなく、1人の女性として彼のそばにいたい、彼と共に1つの家でただ隣でボーとしてのんびりと過ごしたい


ユキ(ルーク.......どうして貴方が勇者じゃないの?)


シャイン「...................」チラ


ルーク「?.......どうした?」


シャイン「.......いや......なんでもない」


ルーク「そっか」


シャイン「.................」


ルーク.....俺が唯一愛している男性

小さい頃はこの口調のせいで女の子には好かれたけど、男の子には嫌われていた

まぁ俺自身も男が嫌いだったから良かったけど


そんな俺を1人の女の子として見てくれたのはルークただ1人だった


俺の遊びたい遊びに付き合ってくれて、可愛いぬいぐるみを皆んなにバレないようにこっそりとくれた


俺だって女だ、そう言うのにも興味はある

それを受け止めてくれたのが、何よりも嬉しかった


剣姫になった時だって

「姫」と言う名があったからその時は

「姫様」といじられた


恋愛の話を聞くと彼氏のいない所では皆悪口を言っていた


彼氏の性格が嫌いだの

彼氏の体型が嫌だの

彼氏が奢ってくれないから嫌だの


小さい頃や旅の途中などで色々と聞こえていた


それを聞いて俺は何処も当てはまらなかった

性格だって合うし

体型なんか気にしないし(太ったら痩せさせるから)

奢るとかしない、いつも半分ずつだ


それにいてくれた方が居心地が良いそれだけで何時間でもいられる


だからこそ俺は...........


シャイン(この幸せを守って見せる)


——————————————————————

次の町に行くと、町の中央に何故か人集りが出来ていた


ルーク「?...........なんだ?何があったんだ?」


マイ「気になるね、あっちょっとすいません」


気になったマイは近くにいた人に話しかけた


町人「ん?どうしたんだ」


マイ「実は私達は今日この町に来たばっかなのですが、これはなんの集まりなんですか?」


町人「なんだ知らないのか?今勇者様がある人物を探しているようなんだ」


その言葉に4人は戦慄が走る


マイ「へぇ、そうなんですか、んでく.....勇者.......様は誰を探しているんですか?」


とてつもなく嫌な予感がするが取り敢えず知らないよりはマシだと思い聞いてみる


町人「ああそれなんだが........男の名前はわからないらしいが、そいつに騙されて拐われている3人の名前はわかっているらしい」


そして次の言葉に、4人の顔が青ざめる


町人「確かマイ、ユキ、シャイン.......の3人だったかな?」


マイ「そ......そうですか.......ありがとう.....ございます........」


なんとか話し終えてその場から去る


その瞬間彼らは悟った


彼は死の果てまでも追ってくると


——————————————————————

続く

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