第3話 好きの反対は........
その平和な日々も唐突に終わりを迎えた。
~ある日の朝~
ルーク「うーん....今日も一仕事しますか!」
ベットから出て窓を開けるまだ太陽が完全に上(のぼ)っていないが、外はもう十分に明るく、冷たい風が顔に当たりとても心地よい
中の空気と入れ替えてルークは窓を閉め部屋の外に出る、此処(ここ)は宿屋の2階な為、下に降りる階段まで歩く
宿娘「あ!ルークさん!おはようございます!」
ルーク「ああ、おはよう、今日も朝から頑張ってるねぇ」
下に降りると既に机を拭き始めている此処の宿屋の娘が元気に挨拶してきた。
宿娘(でも本当は貴方に会いたくて早く起きているんですけどね)ボソ
ルーク「?..........何か言ったかい?」
宿娘「い.....いえ!なんでもありません!」
そう言って慌てて机を拭く、しかし顔を真っ赤にしたままなので大丈夫か聞くと
宿娘「だ.....大丈夫でしゅ.....//////」
ルーク(あ、噛んだ)
そしてあまりにも恥ずかしさが溜まったのか、2階に駆け上がり作業員(宿娘)の部屋に入っていった。
ルーク「......ちょっとからかいすぎたかな?」
後でお詫びに何かをあげよう、そう思いながら朝食を食べ損ねた事に気づき、跪つき後悔した
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その後宿娘の部屋に行き、なんとか説得して朝食を用意してもらい外に出る。
既に太陽が見える高さまで上がりとても気持ちの良い天気となっていた。
ルーク(取り敢えず、今日はクエストを受けて、その後広場でショーでも開くか)
お金はまだ十分に残っているが、何かしないと不安になってしまうので、取り敢えず簡単なクエストでも受けようと思いギルドに赴(おもむ)く
???「...........」
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~ギルド~
ガチャ
ルーク「おはようございまーす」
ドアを開けて中に入ると何やら騒がしかった
特にギルドナイトと受付の人達が急いで準備をしている
ルーク「おはようございます、あの......何があったんですか?」
ルークはその様子を見ている冒険者に声を掛けて事情を聞く
冒険者「ああ、ルークか、いやな............」
そこまで言うと冒険者の男は黙りこくってしまった、その顔はとても不安そうな顔をしていた。
ルーク「....俺に何か言えない内容なんですか?」
冒険者「いや.......そういうわけじゃないんだ.......ただ.......」
ルーク「ただ?」
冒険者「...........後で後悔するなよ?」
そう言うと彼の顔は真剣になった、そこまでの事なのか?と少し疑っていたが
.......次の言葉で、全て理解する
冒険者「..........勇者パーティが此処に向かってきてるそうだ」
その言葉に一瞬だったため気づかなかったが、全員がその仕事を辞めて、目つきが鋭くなるが、すぐに仕事を再開する
ルーク「彼奴らが?」
しかしルークはだからどうしたと言わんばかりの態度を取る
その姿に不思議に思い、冒険者は
冒険者「嫌じゃないのか?」
と質問する、しかしルークはキョトンとした顔で
ルーク「何でですか?」
一言そう言った
冒険者「お前を裏切った奴等が来るんだぞ?魔王討伐に行くのなら此処は逆方向だし、魔王を倒したとしても、此処に来ることなんてあり得ない、間違いなくお前に会いに来ているんだぞ?」
ルーク「わかっていますよ、でも俺にはもう関係ありません、彼奴らが何を言おうが戻るつもりはありませんから」
そしてルークは踵(きびす)をかえし、ドアノブに手をかける
ルーク「では、また」
ガチャン
ドアが閉まり、冒険者の男は深いため息を吐いた
冒険者「はあ、一体どうしたら........」
ギルドナイト「仕方ないよ、あのクズは話すのが上手い、人の心が弱ってる時にあんなのさせられたら.........ね」
受付嬢「私達はセッティングをしました、後は彼ら次第ですね」
そう言って彼らは"通常業務"に取り掛かった
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町中央広場
ルーク「さあさあ皆さんお立ち会い!これから私、曲芸師ルークによる、ショーを開催します!」
そう大きな声で言うとあっという間に人が集まった
町民「お!ルーク待ってたぜ!」
町民2「ルークさん!今日もお願いねー!」
町民3「ルークお兄ちゃーん!頑張れー!」
最初こそ人は少なかったが、色んな人たちに笑顔を届けていくうちに様々な人達が見に来るようになった、それはもう様々で
ヤクザ「ルークの兄(あん)ちゃん、またやってくれるのかい」
マフィア「ウチの娘がこれが好きでねぇ、ウチもハマったんよ」
組長「俺達に怯えず、媚びず、対等に話せる奴なんざそうはいねぇからな、何かあった時は死ぬ気で守れよ?」
裏社会陣「「「「「おう!」」」」」
彼らも最初は友好的ではなかった、いきなり現れて、自分達の領土で勝手に商売をするのだ、敵対して当たり前だった
しかしマフィアの娘が外で魔物に襲われているところを助けてもらい
組長に至っては汚職に手を染める裏切り者達を組長の前に差し出したりと普通の人ならやらない事を平気でやり、また恩を売らず見返りも求めない姿に惚れ、今に至る
(此処の裏社会の人間達は薬等の違法者を使わず、逆にそう言った連中を潰すのを仕事としている)
そうやって大勢の人達がいる目の前でルークは皆が驚く事を次々と見せる、同じネタでも少しバリエーションを変えて皆を飽きさせない様に工夫して約30分、披露した
本当だったらいつもは1時間するのだが、"とある人達"により、終了したのだ。
ルーク「さあ、次の芸は.............」
ざわざわと大盛り上がりだったのに、いきなりルークの様子が変になったので、皆が心配になり声をかける
町民4「あの、ルークさん、大丈夫ですか?」
ルーク「................」
皆が心配して声をかけても反応がなく、いきなりどうしたんだろうと思い見ていると、彼が自分達の後ろを見ている事に気づき、振り返る........すると
???「..................」
???「..................」
???「..................」
3人の女性が虚な目でルークを見ていた
その姿を見て即座に思い出す
ヤクザ「お........おい.......」
マフィア「こ.......こいつらっ.......て」
組長「ああ、間違いない.......」
町娘「"勇者パーティの3人".............」
驚きのあまり声が出ない、ざわざわザワザワと戸惑いが隠せない中、ルークが
ルーク「皆さん!すいませんが、今日はこれにて終了です!本日もありがとうございました!」
と言い、強制的に終わらせた、事情はわからないが、なんとなく此処から離れた方が良いと皆が思い、去っていった
そして残されたのはルークと.................
勇者という権力に屈した哀れな女達だけだ
ルーク(どうせ捨てられたから、こっちに来たんだろ?どうせ)
彼女達を見ても不思議と怒りが湧いてこない、寧(むし)ろ何も感じないのだ
好きの反対は嫌いと皆が言うが実際のところは違う
嫌いと言うのは相手に対してそう言う感情を持っている、つまり意識しているのだ、好きはそれの好意バージョンだ。
つまりその反対は意識しない、感情を抱かない、つまり無関心だ
例えるとするならば、町中で出会う人達に何かしらの感情を抱く事はない、相手に対して興味がないからだ。
今のルークはそれと同じで彼女達に興味がない、無関心なのだ。
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続く
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