メイド効果
☆ † ♪ ∞
[二〇××年 某月某日]
[午後五時七分]
[
メイド服姿のコマリが、アマネに紅茶を注いでいた。
メイド服――と一口にいってもその種類は数多い。
コマリが着ているメイド服はミニスカタイプ。ジャパニーズメイドとも呼ばれるビジュアルに特化したものである。
ヘッドドレスからエプロン、スカートに至るまでふんだんにフリルをあしらい、短めのスカートから伸びた細い脚は白いサイハイソックスに包まれている。
クラシカルスタイルのメイド服からすれば、魔改造、あるいは歴史への反逆とも捉えられかねないそれは果たしてメイド服と呼べるのか――という疑念はさておき、マユナとサリナはコマリに対してスマートフォンのカメラで集中砲火のごとくシャッターを切り続けていた。
そのメイド服に品格はないかもしれない。
だがそれはそれとして、かわいい。
それだけで二人にとって撮る価値は十二分だった。
アマネは下校時から着替えておらず、いつもの制服姿であったが――いつも以上に貴族然とした振る舞いを見せていた。
小皿に盛られたアルフォート(バニラホワイト)を
たったそれだけの動作。しかしその全てがたおやかで
まるでワルツを踊るかのような優雅な所作。
「――美味」
アマネが紡いだ静かな一言に、マユナとサリナは感嘆の息を漏らす。
「メイドさんにお嬢様……ファンタジーかしら」
名画を見たかのような充足を得たサリナ。
コマリのみならずアマネも連写する。
「やー、アマネちゃんは普段からお上品な立ち振る舞いしてるけど、今日は特に……なんかオーラが出てるネ!」
「うむ。コマリが女中の装いをしているゆえ、私もその趣向に乗ったというべきか……いつにも増して美味だった」
興奮気味のマユナに応じながら、アマネはアルフォートをコマリにも食べさせる。
「いーなー……ねーコマリン! お姉ちゃんにもお紅茶ちょうだい!」
アマネが羨ましくなったのか、マユナもコマリに紅茶を要求する。
言われるまま、つすー、と静かにマユナのティーカップに紅茶を注ぐコマリ。
マユナも先ほどのアマネと同じように、アルフォートを食べてから紅茶を口にした。
「――うまい!!」
てーれってれー♪ と目を輝かせるマユナ。
「全然ピンとこない」
それを見るランセの目はいつも通り冷ややかだった。
――が、マユナとサリナはそれも織り込み済み。
母娘そろってギラリと眼光を輝かせる。
「それではここでもう一人のメイドさんにご登場願いましょう。はいユアナおいでー!」
リビングの外に向けてマユナが声をかけると、上階からおずおずと、
「お、おかえりなさいませ……」
メイド服姿のユアナが現れた。
フリルが付いたエプロンに蓬色の着物――和装メイドである。
ミニスカメイドのコマリが見る者の目を引くダリアであるとすれば、和装メイドのユアナは見る者の心を落ち着かせる
方向性は違えども、どちらも華美。
マユナとサリナが持つスマートフォンのカメラが火を噴くかのごとく連写される。
台所で煎茶を淹れるユアナ。手慣れているのか一連の動作は自然、かつタイマー無しで茶葉の浸出時間もほぼ三〇秒と的確だった。
「あの、これ、よろしければ……」
小さな盆には淹れたての煎茶と天乃屋の
ユアナから差し出されたそれを、手に取るランセ。
ざくざくと小気味いい音を立てながら歌舞伎揚を噛み砕き、続けて煎茶で洗い流した。
「……いかがでしょうか?」
やや重めの、慎重な口ぶりでランセに問うマユナ。
ランセはいつもの無表情のまま、
「三倍うまい」
「ランセちゃんチョロいなー!」
あっさり陥落した。
ランセは案外アイドルとかにハマりそう――とも思ったが、そこは口には出さないマユナであった。
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