第14話 広告兵器奪還作戦

かくして、俺たちは緊急作戦会議を開いた。議題は当然広告兵器奪還についてだ。整備士である俺も一応事の次第を知っておくために参加する。重い空気が広がる中、まずボスが第2部隊唯一の生還者に口を開いた。


「一体なぜ第2物資調達部隊が襲われたのだ。ダミーの第一部隊や、特別製のナノ・フィールドを展開しておいたはずだが。」

「それが・・・よると、どうも第2部隊のトラックを運転していた奴が、その・・・アド・レナリンを服用していたみたいで・・・しかも、大量に・・・」

「何だと・・・あれほど使い過ぎるなと言っておいたのに!・・・だがそれだけではUAGに襲われはしないのでは・・・」

「正規品のアド・レナリンじゃないんです、成分を調べたところ、あれはUAGがつり出したいわば模造品で・・・効果が劇的な反面、副作用も強い、粗悪品なんです・・・」


会議場はどよめいた。正規品でも依存性が強いのに、それの粗悪な模造品を服用していたなんて・・・だが決して皆理解できないわけでは無かった。このいつ死ぬか分からない厳しい情勢の中、俺たちにはどうしても”心の逃げ場所”がいるのだ。そのためにボスはアド・レナリンの快楽的使用を制限付きとはいえ許可していたのだが、まさかこのような形で仇となって帰ってくるとは!


「それで、アド・レナリンに依存した運転手はどうしたんだ。」

「そいつ、任務前には必ずそれを飲んでいたんですが、どうも途中で切らしちまったようで・・・それでよりにもよって”ぶつ”を受け取った帰り道、段々薬の効果が切れてきて、どうしようもない不安に襲われたそうなんです。そこへ、襲い掛かった奴らの心理的広告攻撃ゆさぶりをかけられて・・・」

「ドアを開けてナノフィールドを解除してしまった、という訳か・・・ううむ、これは参ったことになったぞ。」


この際、二台しかないトラックの一つがやられたことや死んだ同士の事はどうでもよかった。問題は広告撹乱兵器スパム・ボムの事だ。あれが奴らの研究所に持ち込まれて解析でもされてみろ、すぐさま対策を施されていよいよ俺たちはお手上げだ。


「それを奪ったUAGの連中は、今どこに?」

「へい、どうやら奴らはナバリィタウンを目指して西へと向かってるそうなんでさぁ」

「ナバリィタウンか、場所が分かれば好都合だ。」


そういうとボスはすっくと立ちあがり、会議に集まった全員に号令をかけた。


「スパム・ボムは我々の切り札だ。これが無ければ勝利もない、どんな犠牲を払ってでも取り返すのだ!野郎ども、出撃の準備!!」


かくして、広告兵器奪還作戦は開始された。唯一帰ってきた武装トラックのトレーラー部に俺たちは武装して乗り込んで、一路ナバリィタウンへと飛ばした。例の生き残ったやつがトラックを運転して兵士を運ぶ。勿論俺もアド・キャンセラーによって無効化された兵器を武装して乗り込んでいる。整備の仕事がメインだが、それなりに戦闘訓練は受けているし、何分人手が足りないのでどのみち出ざるを得ない。ごとごとと揺れるトレーラーの中で、俺は来る戦いに備えて精神を整えた。


「いたぞーっ!奴らだ!!」


叫び声が聞こえた。奴らを見つけたらしい。やけに早く見つかった気がするが、そう思いつつも俺たちはトレーラーから進み出て攻撃態勢を整えた・・・が。出てみるとそこにはUAGはおろか人っ子一人いない荒野のど真ん中だった。遠くにトラックの残骸らしきものが転がっているという事は、第二部隊はここでやられたようだ。しかしやはりUAGの姿はない。では何故奴はここにいるといったのか。


「おい、どういうことだ!UAGのロボット共は本当に居たのか!?」


ボスがキャブから降りてくる運転手に怒鳴った。第二部隊唯一の生還者たるそいつは運転台を降りてきてボスに近づいた。


「・・・全員トレーラーからでましたかい?」

「当たり前だ、それでUAGはどこに・・・」


そいつの顔がにやりと笑った。そして奴の顔に黒い縦の線と、UAGのマークが浮かび上がる・・・俺はその顔に見覚えがあった。だが気づいたときにはもう遅すぎたのだ・・・


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