101 憑依スライム・アリス&カナタ24


「……我がいた頃はな」


 ダンジョンの奥へと進みながらアリスが話す。


「うん」

「この世界は魔力が足りない状態にあった」

「え?」

「魔法文明が急速に発展しすぎてな。人類が必要とする魔力量を世界が賄うことができなくなった」

「なんだか、聞いたことがあるような?」


 現実世界の電力問題みたいだ。


「似たようなものだろう。単一の種族が力を持てば、そういうことになるのはどこでも同じということだな」

「それで、ダンジョンをアリスが作ったんだ?」

「ダンジョンが発生するシステムをな。まぁ我だけではないが」

「そっか……だから僕のスキルのシステムもすぐ作れたとか?」

「その通り!」


 そりゃあ、こんなのが作れるならできるよね。

 たぶん。


「でも、それならこの魔力はどこから?」


 魔力不足だったのに、どこから?


「うむ、色々大変だったぞ。まずはとあるドアホウの魔法使いの論文を見つけるところから始まるんだが……」


 と、アリスの思い出話というか自慢話というかを聞きながらダンジョンの奥を目指す。


「……そんなわけで、世界の壁に干渉する空間魔法の奥義へと辿り着いたのだ」


 アリスの長い話が終わる頃、ダンジョンの奥に辿り着いた。


「これがボス?」

「そうだ」


 広い空間に仰々しい鎧付きローブみたいなのを着たのが浮いている。

 ローブから覗き見える中が真っ黒になっていて不気味だ。


「メタルウィザードという。硬いし魔法を使うし、しかも召喚魔法で手駒を次々と増やすという面倒な奴だな」

「そうなんだ」


 言ってる側から次々と魔物を召喚している。

 そしてその魔物は続々と外へと向かって移動している。


「とはいえ、我らを狙ったりはしない。スライムと戦うなんて不毛だからな」


 そうなんだよね。

 ここに来るまで、一度も襲われなかった。

 他のゲームだとだいたい雑魚扱いなのに、この世界のスライムの扱いって不思議。


「カナタ、メタルウィザードの後ろにある渦が見えているだろう?」

「うん」

「あれがダンジョンに魔力を供給し形作っている自己増殖式核型魔法陣だ」


 アリスに言われて見てみる。

 ついでに魔眼・解析を使ってみる。


《解析不能》


 なにもわからなかった。


「解析と魔法陣学のレベルが足りんな。レベル上限も足りんから総合制御も足りん。未熟未熟ぅだな。わはは!」

「むう……」

「ほれ、そんなことよりカナタにしかできん解決方法があるだろう?」

「僕にしか? ……魔力喰い?」

「その通り。ほれほれ」


 言われた通りに魔眼・魔力喰いをオンにする。

 効率アップで遠視と並列思考もオン。


 うわっ!


「なんか、すごいんですけど」


 吸い込んでると凄まじい圧力を感じる。


「それはそうだ。このダンジョンとその魔物たちを情報から現実化させるほどの魔力だぞ。すごいに決まっている」

「ええ……」


 貯蓄魔力値がいままで見たことないぐらいの速度で上昇していってる。


「これ、どうなるんだろ?」


 なんとなく途方にくれた気分で吸収を続ける。

 だけど、意外にもすぐに吸収は終わった。


「あれ?」


 消え去るメタルウィザードを見て心の中の首を傾げる。

 この前からバタバタしてたからスキルアップとかしてないんだけど?


「ボスを倒せば、ダンジョンは自動的に閉じるようになっている」

「ああ、なるほど」


 魔力喰いでメタルウィザードが倒れたから吸収が終わったのか。

 あれ?

 だったら、ボスが倒れないように気を付けながら魔力喰いを使ったら?


「…………」


 なんか怖い事実に気付いたような気がしたので、忘れることにした。


「時間がある時にダンジョンを見つけたらやってもいいかもな」

「っ⁉」


 見透かされてる。


「とはいえいまそれをやれば、地上が大変なことになる。我はかまわんが、カナタはそれを望まんだろう?」

「だよね!」


 って……。


「なんか、ゴゴゴ……とか言ってるけど?」


 周りで地鳴りみたいな音がしてるだけど?


「それはそうだ。魔力の供給が切れればダンジョンの現実化も終わる」

「そっかぁ……すぐに逃げた方がいいんじゃ?」

「心配せずとも安全に外に放り出されるように作ってある」


 アリスの言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、上に引き上げられる感触がしたかと思うと地上に出ていた。


 貯蓄魔力値は合計で850000になった。





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