第3話
3話
◉マルメンライトの詐欺師
いわゆる義賊の真似事だった。悪人から大金を巧妙に騙し取って。表に出せない金だから泣き寝入り。そんな、悪人を騙しまくる天才イケメン詐欺師ギンジ。巷ではその悪人だけ狙った義賊的な活躍からコードネーム『ジンギ』と呼ばれていた。
ジンギが悪党から奪った金は2億円にもなった。
それだけあればもうリスクを背負って詐欺を働く必要もないと思い、そこで詐欺師稼業から足を洗う。
もう働く必要もないがまだ増やしたいと思うのがジンギであった。
この元手で肉巻きおにぎりの店を作ろうと思い立ち実行するも売り上げはまるで上がらず、やるだけ無駄だということで一年と持たずに閉店。ヤケになりマカオで増やすことにしたのがさらに良くなくて素寒貧になるまでギャンブルした。気付いた時には2億円は閉店から2年で見事に無くなっていた。
ジンギは今さら普通に働いて稼ぐなんて出来ない身体になってしまった。
タバスコをドバドバかける味覚障害者に似ていた。もう普通には戻れない。
どうしたものかと思って街をフラついていると『麻雀』の看板が目に入る。
麻雀なら学生時代に友人達とかなりやり込んだので腕に覚えがあった。これで稼ぐのもいいかもしれない。元詐欺師のフリーデビューであった。
「ロン!ザンク」「ロン!ザンク」「チー!」「ロン。ザンク」
テンパイの気配がまるでない3900をよしとする麻雀をジンギは得意とした。ジンギ曰く『ザンクを制する者は麻雀を制す』だそうだ。これはあながち間違いでもない。
2億稼いだことのあるジンギに取ってはごくごく一般的なピンの店は刺激の少ないレートではあったが麻雀にはそれとは関係なく満足できる何かがあるという事を感じていた。久しぶりの麻雀は思った以上に楽しくて夢中になって牌を握った。
ジンギはそれ以来毎日麻雀を真剣にやるようになった。
幸い、家だけはもう買っておいたので日々の食事と水道光熱費などが稼げれば暮らしていけた。あとマルメンライトがあればいい。
(意外といけるかもしれないな)
こうして元詐欺師による騙し討ち麻雀生活がここに始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます