39

 ぼくはこうして過ごしてきた日々を漠然と思い返していた。

 不可解な日々の連続ではあったが、すべてがつながっていたようにも感じる……。


 自分が何をしでかし、こうして今があるのか……。


 そのとき天使が言った。「で、どうするつもりだ」


 ぼくはふと我に返る。気づかされる。


 しかしそう……このままでは……この世界の崩壊は止まらない……。このままでは世界はただ滅んでいく……。何もしなければ、坐(ざ)しているだけでは……、今日でぼくは終わる……。


 「それで」と天使が言う。ぼくは頭がフル回転を始める。


 「今日で」と天使が言う。

 どうすればいい……。

 「終わるわけだが」

 崩壊は止められない……。

 「おまえは」

 何ができる……。

 「一体」

 何をすれば……。

 「「「どうするんだ」」」


 そのとき、ぼくの脳裏に真実が閃く――。

 すべての過去が未来へと繋がり、フラッシュバックが起きる――。


 

 罪。

 願い。

 思い出せないだれか。

 自分が生きた証。

 愛が。

 善きものに導く。

 希望。

 すべてを失ってこそ。

 クオリア。

 漂い。

 電波。

 人間が天使を見ることはない。

 風に乗せて。

 夢。

 人はコミュニケーションの中に。

 歌の中に生きた。

 想い。

 書きかけの小説。

 償い。

 なろうと思ってなるやつほど。

 光。

 逝ってほしくない。

 可能性。

 ひとりじゃない。

 よろこんで手放したいと思うものしか。

 期待。

 まだ何も残せてない。

 大丈夫じゃん。きっと。

 どうして。

 おまえはとことん。

 晴れに変わるよ。

 奇跡。



 ――瞬時に自分が何をやるべきかを知る。何がしたいかを悟る。すべてのアイディアが完成する――。

 やるしかない!


 天使! 最後に思い出せないだれかと話す時間を、少し与えてくれないか!

 「いいとも」と天使があっけらかんと言う。「もう待ちくたびれた」

 最初からそのつもりだったのか……。

 

 ――それと、何かを失ってこそ何かを得られるなら……。

 「……それはおれの範疇じゃないが」と、ぼくが話すと天使はどこか感慨深げに言った。「掛け合ってみよう」


 ――あと、それからもう一つ――。アレを貸してくれ!

 「本当に、ありえないやつめ……」と、天使は初めてぼくに対して驚いた。「だがそんな気もした……」


 「いいだろう!」

 話はついた。急いで天使の部屋に戻ろう!


 引き返す直前、気づかせてくれてありがとうと、ぼくは少女の頭をなでた。すると少女は、はじめて笑った。

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