雀妖鬼改め

「そういえば、今度さー、雀妖鬼さんと遊ぶことになったんだけど、リンちゃんもおいでよ」

「行く行くー。麻雀するの?」


 つい先日、億単位のお金を賭けて麻雀をしたライバルはお友達になっていた。

 サバサバしていて感じいい先輩って感じで私は好きだ。


「あと、あの人もあの雀妖鬼アバターは雇い主が足がつかないように用意した別のなんだって。そもそも名前も違うらしいよ」

「へー、どんな感じ?」


 私はお姉さんから送ってもらったデータを見せる。


「本当は雀姫でジャンキーって名乗ってるらしいよ、メインアバター」


 とはいえ、基本的には見た目はそんなに変わらない。2本ツノのチャイナドレスの美人さんだ。本人のものだけあって、装飾が細かい。


「ジャンキーって、ギャンブル中毒ってことかな?」

「そうなんじゃないの? あとこれが中の人」


 私は雀姫の中の人のWikipediaを表示する。


 築地あさひ 35歳 元女流プロ雀士

 そして獲得タイトルがズラリと並ぶ。


 複数団体を渡り歩いてその全ての最上位タイトルを獲得した生ける伝説だったそうだが、その後ヤクザの代打ちとして超ハイレート賭け麻雀を打っているところを週刊誌に撮られ、タイトルを剥奪されたとある。

 国内最高峰リーグでもMVPを獲得し、チーム優勝に導いているが、スキャンダルと同時に引退している。


 写真も載っているが、かなりの美人でファンも多かったらしい。

 突然の引退、失踪で死亡説も流れているとある。


「本人は身元オープンにしてるし、生きてるんだけどなーって言ってた。自分で今はVTuberとして活動中ってWiki更新しようかしらって」

「言いそうー。でもさ、麻雀って賭けたらダメなんだね。麻雀ってお金賭けるイメージあるけど」

「一応、違法なんだよ。賭け麻雀って」

「え? そうなの?」


 リンちゃんが驚いているが、当然だろう。


「そうなんだよ。でも一応違法ではあるんだけど、少額のものは社会的影響も少ないから放っておきましょうってことになってるだけ」

「へー、本当に色んなこと知ってるね。でも、ここであたしとTJがジャンケンして負けた方がジュース奢りねってやっても犯罪ってこと?」


 お、鋭い。良い質問であるな。


「よく気づいたね。それは合法なのよ」

「なんでー?」

「ジュース一本とかすぐなくなっちゃうものをたまに遊びで賭けるくらいはいいよってことになってるから」

「線引きあるんだね」

「曖昧だけど、賭けたものの値段とか頻度とか、あと職業とかそういうのも加味して判定しますって感じ」

「でもVRはいいんだ? 2億賭けても」

「それはいいんだよ。なぜか合法なの。日本円じゃないバーチャルなアイテム賭けてるからオンラインゲームと一緒っていう理屈なんだけど……」

「そんなわけないじゃーん」


 これはそんなに鋭くなくてもできるツッコミである。


「まぁ、色々利権とか絡んでるんじゃないの? でも、そのおかげでリンちゃんは助かったんだし、合法にした政治家と利権貪ってる悪い人たちに感謝だね」

「あはは、感謝はしないけどねー」


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