有名人は大変

「マッキーって本当に芸能人だったのか」

「いや、だから最初からずっとそう言ってるし、この常人離れした美貌を前にして平然としてるのはTJくらいだから」

「それは言い過ぎでしょ」

「いや、マジでマジで。私、雨の日とか傘ささずに歩くじゃん? 3歩くらいで誰か男の人が傘くれるから」

「え? ギャグ? オモシロ嘘トークじゃなくて?」

「それが本当のことなのよ。本当にあった怖い話的な」

「だったら嘘じゃん。あれは本当にあった風の怖い話でしょ」

「え? そうなの? 絶対実話でしょ」


 本当にあった系の怪談が本当にあったかどうか談義は今すべきではないので、話の方向性を戻す。


「いやー、しかし割と本格的な芸能人だったかー」

「そうそう、すごいっしょ」

「すごいわ。そりゃ、サークル員もその美貌に狂わされるわ」

「なんで半笑いなのよ」

「サークル追い出される話は本気で可哀想ではあるんだけど、追い出す側のサークル員もバカみたいだし、結果的にオモシロエピソードと化してるとこあるよね」


 マッキーの苦労話はオモシロ要素が強すぎる。根っから陽気な性格で悲壮感を出さないからだろう。それは良いことだと思う。


「そのオモシロエピソードも話す相手、TJしかいないけどね。サークル入ってない友達ってTJくらいだから」

「せっかくなんだから、この雑誌のインタビューとかで言えばいいのに。そしたら追い出した連中へのちょっとした仕返しにもなるでしょ」

「言わないでしょ。嫌味過ぎるわ! 私モテ過ぎてヤバいんですよーって誰に向けたエピソードトークよ」

「マッキーのファンってそういうので喜ばないの?」

「喜ばないよ、たぶん」

「藤堂ニコのファンとか大喜びしそうだけどね」

「ニコちゃんのファンとはファン層違い過ぎるから。別に私は推理力も毒舌も求められてないし。綺麗な服を綺麗に着こなしてお人形のように立ってることが求められてるの。ま、そういう需要だからさ、あんまり喋らない方がいいなってことでメディアもあんまり出ないんだ」


 たぶん藤堂ニコが自虐自慢したり、モテエピソードとか喋ったらニコをいじってくる感じの辛辣コメントとか嘘認定でコメント欄は大盛り上がりするだろうし、スパチャもいっぱい飛んでくると思う。

 可愛いって言われようとしない方がウケるし、たぶんファンも可愛い要素は他のVに求めているフシがある。

 なんなら中の人の私のことをあんまり可愛くない子が入ってるとすら思っているような気がする。こんなに可愛い現役女子大生だというのに。

 メイド服の自撮り写真見せてやりたい。


「芸能人ムズイね」

「芸能人もムズイし、大学生もムズイわ」


 大学生はムズくないと思う。


「まー、あとあれよ。地上波メディアに出るくらいの超有名人になってくると怪盗Vに狙われる可能性もあるし」

「なに? 怪盗Vって?」

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