41. ゴブリン爆破
「さて、研修をする! おい、Gランク! よそ見は止めるのだ!」
いきなり連れてこられた大草原、玲司がキョロキョロしているとミゥが叫んだ。
「え? ここで何を?」
「君は戦い方も知らないど素人。今のままじゃ即死なのだ。最低限のスキルをここで学んでもらう。ここはゴブリンの巣がある草原なのだ。ゴブリン狩りをやってもらう」
「ゴ、ゴブリン!?」
「なんだ、ゴブリンも知らんのか。緑の小さい魔物。一番弱いからちょうどいいのだ」
「大丈夫! マンガで見たことあるよ。楽しみかも」
浮かれていると近くの茂みがガサガサっと揺れた。
ひっ! 急いで玲司はミゥの後ろに隠れる。
「早くもお出ましなのだ。見てなさい」
ミゥはそう言うと、茂みから飛び出してきた緑色の小人に向かって指を銃のようにしてむける。そして、
「パーン!」
と、言った。
直後、ゴブリンはボン! と爆発し、汚いものをまき散らした。
後には何とも言えない悪臭の煙が立ち上る。
「はい、やってみるのだ!」
ドヤ顔のミゥ。
「ちょ、ちょっと待ってよ。やり方教えてよ」
「え? やり方知らないの?」
「昨日生き返らせてもらったばかりなんだもん……」
玲司はむくれて答えた。
ふぅ。
ミゥはため息をつくと肩をすくめ首を振る。
「しょうがないのだ。まずゾーンに入って標的に意識を合わせて」
「ゾ、ゾーンって何?」
「あー、そこから……。スポーツ選手が無意識にスーパープレイしたりするでしょ? あの状態がゾーン。深層意識に自分をしずめ、世界のシステムと直接つながるのだ」
「は、はぁ」
もはや何を言われているのか分からない玲司は、口をポカンと開けて言葉を失う。
「ご主人様、
シアンが横からアドバイスする。
「め、瞑想?」
「深呼吸を繰り返すだけだゾ。四秒息を吸って、六秒止めて、八秒かけて息を吐く。やってごらん」
「わ、わかった」
スゥ――――、……、フゥ――――。
スゥ――――、……、フゥ――――。
「うまいうまい。徐々に深層意識へ降りていくゾ」
玲司はだんだんポワポワした気分になってくる。すると、次々といろんな雑念が湧いてきた。
『朝食べた人肉サンド、美味かったなぁ……』
いかんいかんと首を振って再度深呼吸を始める。
スゥ――――、……、フゥ――――。
スゥ――――、……、フゥ――――。
『シアンの胸、綺麗だったなぁ……』
玲司は真っ赤になって首を振り、もう一度深呼吸をやり直す。
見かねたシアンが玲司をポンポンと叩いて言う。
「雑念は無理に振り払わなくていいゾ」
え?
「雑念は『そういうこともあるよね』と、横に流すといいんだゾ」
「あ、そういう物なの?」
再度深呼吸を再開する玲司。
スゥ――――、……、フゥ――――。
スゥ――――、……、フゥ――――。
『ワンピースの中に見えた美空の白い太もも綺麗だったな……』
『さっきの魔物、ドラゴンなのかな……』
『ギルドの野次馬、間抜けだったな……』
次々と湧き上がる雑念。だが、玲司はそれを消そうとせず横へとそっと排除していく。
しばらくそうしていると、いきなり、すぅ――――っと意識が深い所に落ちて行く感覚に囚われた。
どんどん落ちていく玲司。
しかし、玲司は抗わずにただ、ぼーっとどこまでも落ちていった。
やがて自分が地球と一体になっていることに気が付く。この世界に息づく全ての物が地球を介して自分の周りを包んでいる。その全てがくっきりと浮かび上がってきた。
そして始めて玲司はこの世界の本当の姿を知る。
そう、地球とはシステムだったのだ。こうやって多くの色や形をそして命を統合的に映し出すシステムそれが地球なのだ。命と命が形を通じて関わり、ぶつかり、そして時には消し去る……。
玲司はゾーンの中でその全てを直感的に理解する。
すると、遠くの方から一つの命が近づいてくるのが分かる。
玲司はそちらの方に指を伸ばし、意識を向けてみるとそのデータが頭に流れ込んでくる。ゴブリンだ。
さっきの爆発音に気が付いて調べに来たのだろう。
管理者権限をもらった玲司は、ゴブリンのデータを自由に書き換えることができる。吹き飛ばすこともワープさせることも、温度を上げたり下げたりすることも自由だった。
玲司は温度の設定に意識を合わせ、それを千度に設定する。
ズーーン!
ゴブリンは轟音を上げて吹き飛んだ。
玲司は初めてチート魔法とも呼べる管理者権限による攻撃を理解し、成功させたのだった。
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