第2話
クラスのざわめきが落ち着きその後夕子と会話を楽しんで居ると、ふと授業中に見た光景を思い出しその人物を話題に出してみた。
「そう言えば夕子は山田先生の事どう思う?」
突然先生の話題になり夕子は口をポカンと開き驚いた表情をした。
『あっ可愛い⭐︎』おっと、こほんっこほんっ。
「ゆ、ゆづ葉が男の話題を?!
はあ~~ビックリだわー。何何?山先となんかあったの??いつもは女子の話題
うわぁ、今日晴れ予報だけど雨、いや嵐じゃない?傘持ってきてないんだけど~最悪~!」
、、、なんか酷い言い様である。あれ?目から熱いものが溢れてくる気が。ハンカチハンカチ。。
確かに夕子との会話の中で男性の話題は
山先こと
身長は180センチ以上あり、筋骨隆々の姿は一言で表すなら熊と言えよう。年齢はーーー詳しくは知らないが多分そこそこ若いはずだ。
本来我が私立A学園高等学校は女子校ということもあり7割女性教師で3割が男性の教師なのだが、その男性教師は主に白髪混じりのおじいさんしか居なかった。そう
女子校という閉鎖された空間に、敢えて入学して来た生徒達なら男性を苦手とする者がいるだろうとの学園側の配慮からの人選だったそうだ。
だが姉妹校との合併という降って湧いたような出来事から一変した。
聞くところによると我が校は年々需要が減っている女子校ということで今の時代に合わなかったのだろう。伝統と歴史がありながらも生徒数は年々減少し経営は悪化。元々2000人以上学べる広大な敷地、校舎を維持することがままならなくなった。
それに比べ男女共学である姉妹校は少子化が進む昨今でも時代に合わせた多岐に渡るカリキュラムが人気となり生徒数が年々増加し教室が足りなくなった。
そこで互いの利害が一致し合併という形が取られたらしい。
親からそんな話を聞き絶望したのが何を隠そう私、本郷ゆづ葉だった。
可愛いモノ好きである私が可愛い女子だけを愛でるために、視界を女子だけにする為にこの高校を選んだわけだ。それが最終学年にして共学になるとは、、非常に遺憾である。
まあその個人的な嗜好を無しにしてもあまり共学は受け入れたく無かった。
男子という生き物は女子の変化に全く気付かず無関心、あまつさえ女子をいじる、いじめるのである。小学校そして中学校と何度悲しそうな女子を見たことか、、特に女子校のか弱き生徒達が耐えられるか不安だったのだ。
しかしその認識も共学生活が始まると共に一部誤解があったのだと気づいた。
男子は精神の成長が遅いという。つまり小中学生時代はただお子様なだけだったのだ。
高校生ともなると流石に紳士的な対応をするようになるようだ。
女子のちょっとした変化に気づき辛いのは変わらないが、女子全般に優しく接し、休憩時間は女子を気遣い教室外へと移動する。重たいものは自ら率先して請け負う。なかなかやるじゃないか。
そんな男子がいると女子は更に可愛くなって行く。そんな女子を見て尚、紳士化される男子。そして女子が更に更に可愛くなる。素晴らしい相乗効果である。
そして私は更に素晴らしい事に気づいてしまったのだ。
女子校+共学校=女子3対男子1。
女子ガフエターーーーーー!!!
うん、共学もいいかもしれない。これまでの認識を改め男子にも優しく接しないといけないな。
ビバ、女子の可愛いさ増シ増シーー。
そんな結論に至ったのだった。
おっと話題がズレてしまった。
つまり合併により教師陣も姉妹校から来た為、若い男性教諭も当たり前のように教鞭を振るうことになったのだ。
その中の一人が山田一先生だ。
「山先は担任としてはイマイチかな~。悪役レスラーみたいな不機嫌な顔で睨んでるからみんな萎縮してホームルームなんてお葬式状態だし~。
あっ、でも教師としては丁寧な授業してくれてるし良いと思うよ~。
なんせ山先担当の世界史はこの私が唯一赤点を取らない教科だしね~。」
胸を張ってそう言う夕子だが、他の教科の事を思うと頭が痛くなる。
試験勉強は一緒にやる事が多いのだが、私の教え方が悪いのか、試験結果はいつも低空飛行だった。
「確かにいつも眉間にシワが寄ってるよね。でも睨んではいないんじゃないかな?生徒一人一人をしっかり見てくれていると思うよ。
夕子は笑った顔とか見た事ある?」
そう言う私に夕子は自分の記憶を辿りながら話してきた。
「笑顔、、、なんて見たこともないよ~、ゆづ葉が女子の話題を全く出さないくらいあり得ないわ~ハハッ。
ってかゆづ葉は見たことあるの?」
うん、なんか泣きたくなるような事言われた気がする。気のせいかな?あっ、笑顔が可愛くて涙がでる。ハンカチハンカチ、、は、もう既にびしょ濡れだったっけ。
私の心情はともかく、やはり私が見た花壇の前で微笑む山田先生は気のせいだったのかもしれない。
夢でも見てたのかな?
しかもその微笑む姿を”可愛い”と私が思うなんて有り得ないことだしな。
男性は愛でる対象外だ。
「いや、まぁ担任の先生のことあまり知らなかったから聞いてみたかっただけだよ。教えてくれてありがとう。
あっ、そろそろチャイムが鳴るね。」
そうしてこの話題を終わらせ次の授業の準備を始めたのだった。
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