第25話一角獣と飛竜
予定が狂い、朝食会は短時間で終わった
。
それでもクロの両親は、理久と僅かだが和やかに会話出来て礼も言え満足気で…
理久とクロも笑顔で帰りを見送った。
しかし、理久は、オルフェが気になって仕方なかった。
オルフェも別れ際笑顔だったが、理久にだけはそれがどうしても造りモノに見えて仕方無かった。
そして何より…
オルフェの食事の仕方が流石上流階級の者らしくて、ただ紅茶を飲みサンドイッチを食べるだけでも美しく品格があり…
理久は、ただの日本の一般高校生の自分と真の王子様との格の違いを見せつけられた。
そして…
クロのプロポーズを断ったのは、理久本人なのに…
逞しく勇壮なクロと、美しく麗しいオルフェ…
二人並べると、文句が付けようがない完璧な一対のパートナーに見えて…
理久は、さっきより更にどんどん自信を喪失していた。
「さぁ!理久!これから一緒に町に遊びに行こう!でも、その前に、動物好きなお前に見せたいモノがある!」
そんな理久の顔をずっと見ていたクロは
、急にそんな事を言い出して、理久の右手を強く握ってきた。
クロはそのまま理久の手を引いて、城の裏手の、明るい日差しの降り注ぐ広大な草地に連れ出した。
そこは、時折駆け抜ける涼やかな風が爽やかな薫りを纏い煌めき、色鮮やかな花や短い緑草を揺らす。
従者レメロンや護衛の獣人騎士達は気を遣い、理久とクロからかなり離れた場所に待機していた。
理久は眼前、少し遠くに放し飼いのようにされている何匹もの動物達に目を見張り叫んだ。
「クロ!あれって、もしかしてドラゴンとユニコーン?」
「ああそうだ、理久。でも、あのドラゴンは草食だし、他の肉食のドラゴンと違い小さいし大人しいから大丈夫だぞ」
ニッコリ笑ったクロは、手を繋いだまま理久と二人だけで、ドラゴン達の近く、草地の真ん中へ行く。
「うわっ!マジで…本当にドラゴン…でも、今は飛べないようにしてるんだ」
理久は、一瞬オルフェを忘れ歓喜しながら…
どのドラゴンもどのユニコーンも大きさは理久の世界の普通の馬位…
今は飛べないよう体に軽い金属で、痛くないよう羽根の部分が固定されているのに驚く。
「クロ!やっぱ、異世界凄いよ!あのさ…このドラゴンって撫でたりしても大丈夫かな?」
「ああ…」
クロの言葉通りここにいるドラゴンは、ただここの草を食べて本当に大人しい。
「アハハ!以外とかわいいな!」
理久は、ドラゴン特有の、ダイヤモンド並みに硬い鱗が並ぶ体を撫でようとした
。
しかし…
突然クロが、その撫でようとした理久の右手を掴んで静止させ、クロの右頬に当ててスリスリした。
「クロ…どうしたの?」
理久が照れながら戸惑うと、何故かクロも戸惑った表情を浮かべた。
「あっ…いや…なんだか…やっぱり、俺以外を撫でてるのを見るの…イヤなんだ…」
「え?!」
「この前と逆だな…連れて来たのは俺なのに…俺のわがままだって分かってるけど、俺以外、触って撫でないでくれ…理久…」
そう言うとクロは、スリスリしていた理久の手のひらにキスしてきた。
「あっっ…」
思わず、理久は意味深な声を上げてしまう。
「理久…」
その声を聞きクロは、理久の腰を引き寄せ抱き締めた。
「えっ?!」
理久が更に戸惑うとクロは少し体を離し
、やがて理久の顔を両手で持ち上げ見詰めた。
「理久…好きだ…愛してる。愛してる…理久…」
余りにクロがイケボで直球で甘く囁くから…
理久は固まり、声が出ないまま…
クロの唇がキスしようと理久の唇に近づいた。
だが…その刹那…
「グワッォ~、グワッォ~」
さっき理久が撫でようとしたドラゴンが二人に顔を近づけ、全く怖く無い、どちらかと言えば優しい鳴き声を発して来た
。
「プッ…アハハハ!」
理久は、それに思わず笑ってしまった。
すると、クロの尻尾と頭の犬耳が、一国の王と思えない位又しょぼんとしなだれた。
後からドラゴンやユニコーンは、馬と同じ移動に使うと理久はクロから聞いた。
ただ、素人はいきなり乗れないらしい。
ちゃんと教習を受けて、レベル別に許可証が発行されるし、単身では16歳以上しか乗れないらしい。
理久は、これからクロのこの世界にしょっちゅう遊びに来るんだから、いつかは自分も乗って大空を駆け巡るんだろうと…
この時信じて疑わなかった。
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