第19話鏡
朝食の前に、着替えだった。
理久にもこの世界の服が用意された。
着る前に、どんな感じかそれらをベッドの上に広げる。
黒い上等そうなパンツはいいとしても、胸元や袖にフリフリのレースの付いた白い長袖シャツに目が思わず点になる。
(こ…これを…俺が…マジで…?本当に、マジで…マジでマジで…?)
童話の中の王子様みたいで勘弁して欲しかったが、城の中ではこういうのを着ないといけないのだと…耐える事にした。
「理久は…一人で着替えるよな?」
クロが背後から妙な事を聞いてきたので
、理久はキョトンとした。
「う…うん、一人で着替えるけど…」
するとクロが、体格に似合わず小声でゴニョゴニョゴニョゴニョと言った。
「そうだ。それでいい…理久の裸を、他の奴には見せたくない…」
余りに歯切れも悪く、理久に聞きとれなかった。
「うん?何て言った?クロ!」
「あっ、いや…何でも無い…理久は、ここで着替えてくれ」
そう言いクロは、扉一つ隔てて続きになっている隣室に一人行った。
するとすぐ、何人かがそこに入ってきた音がした。
理久が慌てて着替えて行くと、大きな姿見を前にクロが立ち、その回りに黒のロングスカートの同じ制服の3人の侍女獣人がいた。
「クロ?!」
理久が動揺して背後から声を掛けると、鏡に映ったクロと目が合った。
「今から着替える。一応俺は、着替えは侍女がやる事になってるんだ」
クロが事もなげに言う。
美女達は、理久にも深々と頭を下げたが…
だが、なんだか理久は、クロに微笑みかけ回りに群がる余りに美し過ぎる侍女達にモヤモヤとしだす。
「アレクサンドル様…今朝のご気分はいかがですか?」
リーダー的な美女の一人が、クロを見詰めながら甘えるような声で尋ねる。
多分、理久の父や普通のサラリーマンのおじさん達なら、一発で鼻の下を伸ばしてニヤつくんだろうが…
クロは、前を向き落ち着いていて美女を見る事も無く、鏡に映る理久と目を一心に合わせ、それに答えた。
「ああ…今朝は理久が側にいてくれるから、とても目覚めがいい」
「それは、よろしゅうございましたね。アレクサンドル様…」
尚もリーダー的美女は微笑み、クロのローブを脱がせる前にクロの前に立った。
「あっ!待って!待って!」
たまらずに、理久は大声で静止した。
「どうした?理久!」
クロが、困惑の表情で振り返った。
メイド達も、一時動きを止めた。
「あっ、あっ、あの…きょ、今日だけは、俺が、クロ…いや…王様の着替え、しちゃ…ダメかな?」
理久は、最初の方は床を見ながら、最後の方は、クロの目を見ながら言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます