4-3


 マタタビ荘へと向かう道中、僕とコマリはジェスチャーを入れながら色んなおしゃべりをする。


 仕事の外回り中は、いつも会話をする様にしている。

 僕もソックスほどでは無いけれど、とかい島に興味があるし、コマリの言葉の練習にもなるからね!


「お姫様は、毎日、ご馳走ちそう、食べるの?」

「✕✕✕✕?」

「コマリ、とかい島、ご馳走?」

「ウン! ゴチソウ、クウヨ!」

「いいにゃ~、いいにゃ~。毎日、ステーキ?」

「ステキ? ウン、ステキヨ!」

「うわあ、毎日ステーキ生活かぁ。お姫様っていいにゃ、いいにゃ」

「マメモ、ステキヨ!」

「にゃ? 僕はシノおばさんのご飯はとっても美味おいしいけれど、ステーキは毎日食べないんだにゃ」


「……フンン??」


 こんな感じ。


 ――実はね、少し前に逃げてきた理由……結婚の事もちょこっと聞いたんだ。

 どんだけ嫌なオス猫と結婚させられそうになったのか、ちょっと気になっていたのにゃ。完全な好奇心こうきしんにゃあ。

 でも、「ケッコン」って言葉を聞いた途端とたんに暗い顔をしたので、僕はそれ以上は何も聞かない事にした。


 だって、誰でも嫌な話ってあると思う。


 僕だって過去のおねしょの回数は? とか聞かれたら、同じ暗い顔をすると思うし。


 コマリのとかい島に戻りたくないと言う意志は固い。

 だから僕が手伝える事は、一日も早くはてな語を覚えて、コマリとハヤテが楽しくここで暮らせたら良いと思う。

 ……ただ、僕のお仕事について来るのは緊張きんちょうしちゃうから、勘弁かんべんして欲しいにゃあとは思うけれど……。

 

「……マメ」


「うん?」


「コマリ、はてな島、『タゐヲア』ヨ。コマリ、『ヲイモカ』!」


「タイ……? オイモ、カ? うんうん、僕もおいも大好きにゃ~!!」


「ウン、『ヲイモカ』。『マメネ、ヅイニツ、ヲイモカ、ダキ』」


 僕はコマリがとかい語で何を言っているのか、良く理解出来なかったけれど、食べ物はお芋が好きって事は分かったのにゃ。


 わざわざお芋の話をするほど、お芋が好きなんだなぁ……!



 (ΦωΦ)&(*ΦωΦ*)♪



 マタタビ荘に到着して、お庭の手入れをしているシノおばさんの元へ尋ねれば、すぐにリストを持ってきてくれた。


「はい、お知らせを出してほしいお店のリストよ♪」


 おばさんは、しっかり者だ。

 だからすでにリストアップしてあって、更に詳しい内容まで書かれていて、すぐに記事に出来そうだった。

 仕事が出来るから、記念祭の実行委員長をやっているのにゃ!


「ありがとう、おばさん!!」

「あ、そうそう♪ そういえば、このリスト以外に、お知らせを入れて欲しい猫が居たんだわ」

「……にゃ?」

「中央広場の管理猫さんの、タイツさんよ」


 僕はピクリとする。


「……タイツさん……かあ」

「うふふ♪ よろしくね」



 ……僕、タイツさん、苦手なんだよなぁ。



 …………だって。



 (ΦωΦ;)&(*ΦωΦ*)♪



「マメー!! お前、中央広場に右足から入りおって!! 広場に入る時は左足からと決まっているだろうがー!!」


 中央広場に一歩入れば、竹ぼうきを持った袴姿はかますがたのタイツさんの怒号どごうひびいた。


 タイツさんはこの広場の管理猫さん。そして何を隠そう(隠してないけれど)、ソックスのおじいちゃんでもある。

 ソックスと同じ黒猫だが、ソックスよりも手足の白い部分がとても長い。ソックスも変わり者で有名だけど、タイツさんも、相当変わり者。


 科学なんて物は信じず、昔古来むかしこらい伝承でんしょうやしきたりを大事にする猫なのにゃ。

 昔は中央広場は神をまつ神聖しんせいな広場だったらしい。今やただの広場だけど。

 タイツさんだけが、その昔の頃の広場として、中央広場を神聖な場所として扱っている。


 ――ただ、猫混みと夜が嫌いなので、その間は出没しゅつぼつしない。

 

 その間はみんなやりたい放題にゃー!!


 再び左足から入り直して(コマリは偶然左足だった様だ)、


「タイツさん、新聞に載せたい事があるんでしょ?」

「先にキャットタワーに礼拝れいはいしないかい!!」

「はいはい……」


 僕は言われた通り、キャットタワー前へと行き、手を合わせておがむ。

 コマリはそんな僕を見て、真似まねして手を合わせて拝んだ。


「おお、とかい島の娘も、このタワーの神聖さが分かるのか! 関心、関心!」


 とりあえず、コマリの第一印象は良さそうだ。

 拝み終わると、コマリはキャットタワーを見上げて、何かに気が付いた。

 あの時のハヤテ同様、なんか険しい顔つきだ。

 ころころマーケットの時もそうだったけど、古代遺跡のキャットタワーについて何か知っている様子だ。

 だから僕はキャットタワーを良く知るタイツさんに、直接尋ねてみた。


「タイツさん、このキャットタワーって一体、何なんですか?」

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