書きたかった2-おまけ 名探偵の休日と旧友と

 -午前8:00-


 私は朱宮あけみや天蓋てんがい。探偵を生業としている。


 見た目は……そうだな。その前に私について少し話そう。


 私は僵尸……日本で言うキョンシーだ。


 僵尸は鏡を見てしまうと筋肉が固まってしまう。だから、私の見た目を確認するには写真を撮ったりする必要がある。


「ふむ……」


 写真を見てみると、ラフなシャツと黒いズボンを着ている、高めのポニーテールなスレンダー美女が写っていた。


「流石私だな」


「確かに流石朱宮様です」


「だろ」


 こいつはローズ。このお屋敷のお嬢様。親は共働きでずっと家を開けてるとか。


「朱宮様の写真……よろしければこの写真貰っても良いですか?」


「ん?まぁ、いらないしやるよ」


 それを聞いたらローズはそそくさと写真を持ってどっかに行った。


 はて、何をする気なのか……。まぁ、別に良いや。


「それよりもとんこつラーメン食べたい」




 -正午-


「で、ここに来たと」


「あぁ、楓が作るラーメンは美味いからな」


 楓はラーメン屋の店長。博多生まれで博多弁を使う、ラーメンはとんこつラーメン以外食べないやつだ。


「はい、お待ち」


「よしっ、いただきます」


 麺を数本掬い、口へと運ぶ。


「〜〜っ!」


 一口。そう、たった一口で口の中に天国が創造された。


 こってりのスープと麺がとても絡まっていて、とんこつラーメンの旨みが有頂天だ。


 麺の硬さも完璧で、例えるなら……


「アルデンテ……」


「いやそれパスタ麺の硬さだよ!うちはラーメン屋!」





「ふぅ、美味しかったぞ」


「ん、いつもありがとね」


「いやぁ、いつも美味いな。でもどうせ私ぐらいしか通ってないだろ、ここ」


「それがそうでもないんよ!大学生の女の子二人いるんやけどいっつも来てくれるとよ!」


「女子大学生がとんこつラーメン屋に通う、ねぇ……大丈夫なのか、それ」


「それは私も心配しとーよ。でも、いつも美味しい美味しいって言ってくれるし……」


「そうか、良かった」


 この後も駄弁ってたら、噂の女子大学生と遭遇して色々と話したが、割愛。



 -午後15:00-


「〜♪」


 鼻歌を歌いながら家に帰っていると、以前遊○王でコテンパンに倒した小学生(以降師匠としてたまに教えてる)が寄ってきた。


「あ!師匠!」


「ホントだ!おーい、師匠!また決闘デュエルしてくれよ!」


「私もー!!」


「フゥン、前よりは強くなったんだろうな?さぁ、どこからでもかかってこい!」





「くっ……流石師匠、まさかそこで『墓守の罠』を使われるとは……!」


「現環境で使われてるカードの対策をしないわけないだろ。今度は対策の対策をしとけ」


「「「はーい!」」」


 にしても、現環境トップのデッキを作れるほどの金を……。正直その金が欲しい。


「さて、それはそうと今日はお前らに……そうだな。これをやろう」


「「「こ、これは……!」」」


 私はそれぞれ一人一枚カードを渡した。そのカードとは……


「「「青眼の白龍ブルーアイズホワイトドラゴン三体連結!?」」」



「これは4枚揃って一つになるタイプのカード。私達の絆の証だ」


「「「し、師匠ぉぉぉぉ!!」」」


「ふっ……じゃあお腹すいたし帰るわ」


「「「師匠ぉぉぉ!?」」」



 -午後17:00-


「……いらっしゃいませー、何名様ですかー?……あ、ご予約はされてますか?」


「予約していた松菜そんざいですー」


「それでは案内させていただきます」





「にしても、久しぶりに二人で焼肉だな、松菜。」


「だなー。性格的に大学ではめっちゃ仲良くしてたけど、学部も違ったから途中で疎遠になったし、職業的にも中々会えなかったもんなー」


「あぁ」


 松菜。高校教師。影が薄い、存在感空気。男勝りなところがあり、私と気が合う数少ない友人(今日その数少ない友人に沢山あった気もするが)。


「そう言えば最近、ブラックライのお嬢様と仲良いとか聞いたけど、弱みでも握ったのか?」


「何故そうなる……普通に、依頼から仲良くなっただけだよ」


 松菜は、ケラケラと笑う。全く、何が面白いんだか……。


「で、どのくらいの頻度で通ってるの?」


「……月に2、3回」


「おぉう、そうか、天涯にも友達が出来たのかー……天涯なのに」


「おい今天蓋の漢字変換を天涯にしてなかったか?」


「はは、気の所為だよー」


 この後も毒にも薬にもならない話を駄弁った。






「……」


 自宅へ帰る前に銀行に寄り、確認してみると金が無い。


「今日だけで使いすぎたか……。はぁ、依頼こなさないとな……」


 かくして。


 また別の事件に巻き込まれて面倒くさいことになるんだが……果たして、語る日は来るのか。

 



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