貴族子女の憂鬱

花朝 はた

プロローグ

 『母様』


 『なあに?』


 『人は一番好きな人と一緒になれないって聞いたのです。本当ですか?』


 『・・・。誰からそれを聞いたの?』


 『・・・皆がそう言っています・・・』


 『・・・うーーーん、そうね、そういうこともあるかもね』


 『・・・』


 『・・・でも、ね、別に誰でも良いのよ、一緒になる人を一番と決めないで、あとからその人を一番にすればよいのよ』


 『そ、そんなことが、できるのですか?』


 『ええ、できるわ。相手を一番好きになることはそう難しくないの。その人の良い所を近くで見つけて、その良い所を受け入れればよいのよ』


 『・・・私にもできるでしょうか・・・』


 『・・・』


 『・・・』


 『難しく考えないのよ。その人のやることを理解すれば、自然に好きになるわ』


 むかしむかし、今となってはもう片方は記憶していない何げなく会話したお話。


 ・・・しかし、もう片方は今も憶えている会話。そして、今もそれを引きづっている・・・。

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