第30話 ノックと辺境伯と銀狼と虹色の円環 後編その壱
しゅわぁんッ
だが、現れた
「ふぅ。敵の拠点に直接乗り込むのはやっぱり緊張するわね」
「でもアイツらはいなかったようね?まぁ、何事も準備をしておいて損はないわ」
「それじゃあ、ちゃっちゃと向かいますかッ」
少女は1人で空を駆けていた。だがしかしその姿は誰にも見えていない。
更には空を駆けている時に発せられるブーツの音でさえ誰の耳にも届かない。
少女はルミネに
その場所でブーツに火を
何故北なのか?それはさっきのフェンリルが銀髪の男を背に北に向かったからである。
銀髪の男は去り際に「まだやる事がある」と呟いていた。その「やる事」を
だから急ぎ北に向かっている。少女はデバイスを索敵モードにして索敵半径を最大にまで引き伸ばしていった。
暫くの間少女が北に向けて全速力で空を駆けていくと、遥か彼方に索敵に引っかかった「何か」がいた。
「
-・-・-・-・-・-・-
「いいかしら?アタシが今から話す提案以上のものがあるなら言って。でも、無いならそれに従ってちょうだい」
「えっ!?」 / 「なっ?!」
「アタシが今から行う作戦に、ルミネとハロルドの2人は同行させない。その代わり、手伝って欲しい事があるの」
がたッ
「そんなッ!!」
「先ず、ルミネはアタシに
「2人が父様の所に行ったら、ここで起きている事の現状を全て父様に話して欲しい」
「陛下…に?」
「現状を伝えれば、父様は動かざるを得ないからスグに動いてくれるハズよ。でも、敵の狙いが王都の可能性も捨て切れないし、邪魔が入るかもしれない。だから、その時はそれの相手をハロルドにお願いするわね?でも、きっと1人じゃ無理だと思うけど、そこは
「はい?」
少女は有無を言わす事無くハロルドに対してウインクをした。少女が紡いだ言葉を聞いたハロルドの顔には、少女が放った不穏な表現に因って絶望が浮かんでいった。
「父様が動いて人が集まったら、ルミネは北の辺境伯のさっきの山に皆を案内してあげて」
「で、でも……」
「たぶんだけど、そこで決着が付く事になると思う」
「どこまで先を読んでいるんです…の?」
ルミネはその提案を
だから止めたかった。でも、出来なかった。
余談ながらハロルドは最初から策が頭の中には無く、言われた通りにやるしかないと考えるのが精一杯だった。
ルミネのオッドアイは両眼共に魔眼である。左右それぞれに違う魔眼を持って産まれた
しかし、いかなる魔眼を持って生まれ落ちるかは誰にも分からず、「親が強力な魔眼を持っているから子供も」という遺伝的な因果関係は一切無い。
そして逆もまた
そんな
その為にアスモデウスは恐れた。この
だからこそアスモデウスの手に因って片方は封印された。
片方だけなら
封印されずに残した魔眼。「未来視の魔眼」
未来とは「「人の行動によって限りなく枝分かれをしていく大樹のようなモノ」であり、その中の「どれかの枝」を意図せず掴む事で確定させたモノ」と定義出来るだろう。
然しながら「どの枝を掴んだ時に何が起こるのか?」は誰しもが分かり得ない事象だ。それを分かる様に出来るのが「未来視の魔眼」だった。
だが一方でこの魔眼は言わば「視る」
結末を知っているという事はやり方に拠っては対処が出来るという事にも繋がるが、どうにもならない事は
そして、ルミネは「視て」しまった。この決着の瞬間を。
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