第28話 過去編 源翁心昭 可毗禮山 其七
集落から山頂への道に、あの面倒な植物は出てこなかった。
ただし、楽には辿り着かせないよとばかりに、地味に進み辛い道になっている。五平がいつも使っているという獣道が一つも見つからず、やむなく違う道に入ったが、小さな木が多く生えた場所で、周りが見えにくかった。
うふふ。もう少しでやってきますね。
ようやく斬れて嬉しいです。
あなたの兄は助けてやってもいいですよ。
いいえ。助かるのは選ばれた者だけでいいのです。
人類を殺し続ける死神として生かしてやってもいいんだよ。
九尾の狐さま。趣味が悪いです。
そうかい?うふふうふ。
しばらく進んでから、私は雰囲気的に何か危険なものを感じたので、五平には私の後ろを歩いて貰い、道を逸脱しそうになったら声をかけてもらうことにした。
そうやって慎重に進んだはずなのだが、いつしか私たちは危険に誘導されていた。
木の少ない盆地のような場所に出て、その中程に入ると、上、横、下から威嚇の唸り声が聞こえた。これは、すでに囲まれているという事だ。
この聞き覚えのある唸り声からすると、間違いなくここは狼の巣だ。
まだ一匹も姿を見せていないが、彼らは用意周到に私たちの隙を窺っている。集団での狩りで狼の右に出るものはない。
一旦立ち止まり、まずいなと思っていると、たまらず五平が声を出した。
「げ、源翁さま…こ、ここはまずいです。お、お、狼たちの巣です」
こういった弱々しい声を出して相手に恐れていることが伝わるのが一番まずいのだが、そこはもう仕方がない。
源翁は、丹田で溜めた気を網にして広げた。気の感知度としては、怪異はかなりの割合で居場所が分かるのだが、動物は少し精度が落ちる。それでも、源翁は動物に特化する術を修験に習っていたので、狼の居場所を難なく突き止めた。
一、二…五、六。六匹ですか。まあまあいますね。
「五平さん」
「は、はい」震えた声で掠れた返事が聞こえた。
「全部で六匹います」
「ろ、六匹も…」
いつも狩りをしている五平にはこの六匹という数がいかに絶望的な数なのかが分かる。昔から狼は一匹でも見かけたら、必ず逃げろと言われている。
「そこの小さな崖の上にいる四匹は私が何とかします。五平さんはその弓であそこから突っ込んでくる一匹を仕留めてください」
源翁が指差した先には茂みがあるばかりで狼がいるようには見えない。しかし、源翁には狼の居場所が分かるようなので、今はそれを信用するしかない。
「は、はい…でも何故一匹なのですか?」
「残りの二匹は生まれて間もない子供です。この狩りには参加しません。狼たちもこの山に必要な生き物です。無闇に狩っては山が悪い方へと傾きます。ですから、犠牲は最低限にしたいのです」
「わ、分かりました」
正直五平は、狼などいない方が安全に生きられるので、その狼に気を遣うことの意味が分からなかったが、源翁の指示に従うことにした。出てくるところが分かっていて尚且つ一匹であるならば、まず矢を外すことはない。猪と猪は何度も狩っているので、そこは自信がある。
「では、上の四匹を驚かせて分散させます。いきなり仲間の四匹が周章てて我を失ったら、あそこの一匹もどうしていいのか分からなくなり、私たちのところに突っ込んできます。そこを仕留めてください。あの一匹が動けなくなれば、他の四匹と子供も諦めてくれるはずです」
「が、頑張ります」
五平は、源翁に言われた茂みに向かって弓を構えた。狼がどれだけ速く走ってきたとしても、これだけの準備をしていれば問題ない。
源翁は、それではと、崖の上で虎視眈々と二人を狙う四匹の狼に向かって紙で作った式神を放った。
これには五平も驚いた。
まるで紙が意志を持ったかのように飛んでいくのだ。すぐに式神たちは崖の上に消えた。四体の式神は、それぞれ狼の顔に張り付いた。狼が必死になってそれを取ろうとしても、式神は何故か破れずに顔に引っ付いたままだ。どうにもならず慌てふためき、四匹の狼がいきなり我を失ったので、茂みに隠れた一匹は、何もされていないのに我を失い、茂みを出て突っ込んできた。
その瞬間、五平の矢が狼の足に突き刺さった。
おぉぉぉん!!と吠えて、その狼はその場に倒れた。
「お見事。しかも足を狙うとは、中々の弓の名手です」
そう言いながら源翁は倒れた狼のところへ歩いて行った。五平が「げ、源翁さま!!危ないですよ!!」と叫んだが、それを意に介さず、源翁は、何でもないと言わんばかりに狼の脇に立って経を唱えた。
すると、狼はバタバタと暴れるのをやめ、突然大人しくなった。源翁は狼の足に刺さった矢を丁寧に取ると、狼の足に布を巻いてやった。
「今日は大人しくしておれ」
と言うと、驚いたことに狼が、ワォ!と一鳴きして盆地の外へと向かった。その先には狼の子供が二匹いて、怪我をした狼に寄り添うようにして去っていった。五平は驚きの目をそちらにやるしかなかった。
「さて、上もそろそろ解放してやろう」
源翁が指をぱちっと鳴らすと、上でもワォ!!と何匹かの狼の声が聞こえた。そして、タタっという足音と共にその声は遠ざかって行った。
「少し時間を取られました。また進んでいきましょう」
平気な顔でそう言う源翁にどう反応して良いか分からず、五平は「はい」と返事をするしかなかった。
その後は、小さな怪異が襲ってきたので何度か祓う事はあったが、概ね順調に進んでいますと五平は言った。恐らくは五平の言う通りで、集落を出てからかなり登ったはずだ。ただ、見慣れた道がとことん進めなくなっているのは変わらずのようで、かなり遠回りはしていると思う。
有り難かったのは、それでも五平は道に迷うことがなかったという事だ。
彼はこの山の方位と地形を熟知しているようだ。そのおかげで、山の道は多少険しかったものの、確実に頂上へ向かって進めている。そして、あの黒い気はもう間近に迫っている。
道に気を取られないおかげで、源翁は、おりんについて考えを巡らせる余裕ができた。
おりんは九尾の狐に操られているが、まだ完全に乗っ取られた訳ではない。九尾の狐の魂が未だ完全ではないため、おりんの人格を潰し、乗っ取るまでにはいっていないのだろう。良いことが一つだけあるとすれば、九尾の狐がおりんを殺すことはないだろうという事だ。
おりんがあの海燕という修験と違うのは、偏に九尾の狐にとって特別意味のある人間だという事に尽きる。だから今の今まで殺されずに、側に置かれているのだ。おりんは、九尾の狐の魂が実態を持つにあたっての依代なのだ。
普通の人間であれば、妖を身に宿した瞬間、身体の負担が限界を迎えて死んでしまう。ある程度怪異に耐性のある人間ですら一刻と保たないであろう。
しかし、おりんは違う。
あの九尾の狐が憑依しても大丈夫なのだ。これは驚くべきことで、そんな人間は全国を探してもまず見つからないだろう。運の悪い事に、九尾の狐が目を付けたこの山に、たまたまその特殊な人間がいたのだ。おりんが完全に乗っ取られると、九尾の狐が実態を持つ事態となり、人間側の勝機は限りなく遠くなるのは言うまでもない。
となれば、おりんは、私にとっても九尾の狐にとっても重要な要因だ。
私ができる事は言えば、おりんを気絶させ、その隙に九尾の狐を倒すことくらいだが、それほど簡単にはいかないだろう。だとすれば、まずは、その状況を作り出さなくてはいけない。自分が勝つ事も半分奇跡が必要なのだが、その奇跡というものは作りだせるものだと思っている。世の中に絶対という言葉はない。
私があれこれ奇跡を起こす戦略をまとめていると、五平が話しかけてきた。
「源翁さま。あの木が見えたので、もう少しでお堂に着きます」
五平は、葉が枯れて黄色くなっている木を指差している。なるほど、常緑樹ばかりで枯れた木はあれしかないようなので、目標としては間違えようがない。そして、ここまで来れば、敵もそれ相応の怪異を配置しているかもしれない。
「分かりました。ここからは、もう少し気を張って備えます。待ち伏せなどがあるとまずいですからね」
五平にそう言うと、源翁は 今一度袋の中の呪具を見定め糺した。そして、丹田に力を入れ、より多くの気を腹の中で練った。その上でより精度の高い気の網を広範囲に張り巡らせた。
気を放った瞬間、身体がぞくっとした。
九尾の狐が本当に近く感じたからだ。その黒い気はここ数日感じているように、天をも包み込みそうに大きく、禍々しくも頂点に立つ者としての威厳を感じるものだ。例えて言うなら、私が今まで戦った中で最も強力な怪異である『越後の鬼』がまるで稚児に感じるような、背の高い大人の気だ。
あの越後の鬼の覇気は、近くに寄ると卒倒しそうになるほど大きな圧で、それはそれは尋常ではなかった。
私はあの時、大きな山を一つ吹っ飛ばせる程の巨大な覇気だと感じたが、九尾の狐はそれ以上で、山も海も全部ひっくるめた大いなる自然の全てを吹っ飛ばせるような大きさに感じる。この気は、規模感が大きすぎて、相当な術者でなければ完全には理解できないと思う。
だからと言って、勝てないと思ってはいけない。世の中、やり方次第なのだ。だから、あの鬼も祓えた。
私は痺れるような巨大な気を感じる方向を指差して、五平に言った。
「九尾の狐は、あの辺りで強烈な気を放っています。とてつもなく大きな気は、私たち人間にはないもので、私が祓ってきた怪異の中にもあれに比類する者はいません。この世で最も大きな覇気を持ち、最も強い気を練られる怪異と言っていいと思います」
私の指先の方向をじっと見て、五平は不安げな顔をして聞いてきた。
「そ、それほど九尾の狐は強大なのですか?」
「はい。妖の王と言ってもいいほどです。しかし、この力を持っているが故に、妹さんが命を取られる事はないように思います」
「な、何故ですか?」
「妹さんが九尾の狐に狙われたのには理由があるからです。これだけの気を宿す怪異が、何もない人間を欲しがる訳がありません。九尾の狐と妹さんは何かしらの相性がいいのです。九尾の狐は、妹さんを依代にして実体を持つつもりなのだと思います。まずは、それを防がねばなりません」
「おりんにそんな力が…」
五平は半信半疑という感じで、山頂の方を見た。
そして、私たちは目を合わせ、黙ってお互いに頷くと、さらに上へと向かった。
もう引き返せないし、ここで全てを終わらせなくてはならない。
五平があと一里もないと教えてくれた。間も無くあの九尾の狐とご対面だ。いよいよ押し潰されそうな黒い気が、周辺に充満してきた。一歩一歩が重く感じるし、何かの壁に押し戻されている感じすらする。
すると、怪しげな鳥が「キョー」と不思議な声をあげた。あんな泣き声の鳥は聞いたことがない。
「あの鳥は何ですか?」
「あれですか。実は私たちの仲間もあれの姿を見たことがないのです。キョーなんて鳴くので、恐鳥なんて呼んでいますが、実際鳥なのかも分かりません」
「そうですか」
姿が見えないとすれば、恐らくは陰摩羅鬼の一種だろう。普段から聞けるのであれば、やはりここは元々霊のいつく山なのだと納得した。私が倒した鳥の怪異も、大きな枠組みで言えば陰摩羅鬼だったのかもしれない。そして、その鳥らが我々をじっと見張っているのだろう。油断すればまた背中を切り裂かれかねない。
私は、陰摩羅鬼の羽の音にも気を配りながら前を見据えた。すると、前の茂みに何かの気を感じる。これは鳥ではない。気の網の精度をあげると、そこには人間がいると分かった。
これは前に感じたことのある気だ。間違いない。おりんの気だ。
私は、茂みに向かって呼びかけた。
「おりん。そこにいますね?五平さんがあなたの心配をしています。あの集落に戻ってはいかがですか?」
木の影からスッとおりんが出てきた。真っ赤な異国の服を着たおかっぱ頭の少女は薄く微笑みながら手に持った禍々しい三日月型の青龍刀の先端をこちらに向けた。
「ふん。気だけでよく分かったな。ただ、人間の分際で私に命令するなど笑止千万。九尾の狐さまを拝めぬうちに果てるがいい」
「ほう。おりんどのは人間ではないと?」
「私は九尾の狐さまに力を頂き、人間を超えた存在となった。お前たちとはそもそもが違うのだ。そこにいる兄には世話になったが、もはや用無しだ。二人揃って彼岸へ行くがいい」
そう言うと、おりんは力任せに青龍刀を地面に突き刺した。
まずい!!そう思った瞬間、刀が黒い光を帯びた。
あの刀は私たちを斬るための刀ではなく、彼女の持つ魔の力を増幅するための呪物だったのだ。
おりんは両掌で球体を待つような構えをすると、知らない言語で何かを呟いた。おそらく呪文の一種だ。すると、おりんの両手の中に、バチバチと音を立ててどす黒い球体が現れた。あれは黒い気を吸った大気の塊だ。
急激に気圧が変わり、源翁と五平の耳は変調をきたして聞こえ辛くなった。その上、強風が巻き起こり、吹っ飛ばされないよう踏ん張っているにも関わらず、ジリジリとおりんの方へと引きづられていく。
これほど完璧に自然を操つる術式など源翁は聞いたことがなかった。
気を操って抗えども、あの術式に対してはどうにもならなそうなのが厳しい。これ以上近づけば、あの雷が刃と化し、私たちは貫かれてしまう。
五平は涙目になって、吸い寄せられないよう踏ん張っている。それでもジリジリとおりんへと引き寄せられている。
「早くこっちに来い!!身体を二つに切り裂いてやる!!」
おりんがそう言った瞬間、源翁は、五平を思い切り両手で突き飛ばした。
「うわっ」
吹っ飛んで尻餅をついた五平と源翁の間に、形を不規則に変えながら巨大なかまいたちが通り過ぎて行った。地面には、かまいたちで抉られた巨大な亀裂ができていた。
なんという威力。なんという術式。これが九尾の力か。まるで太古の神々が操ったというインドラの矢のようだ。おまけに、更なる気圧の急激な変化でさらに耳が痛んだ。雷を放たれなくて良かったと思う。
おりんは怒り狂った。
あの術式に絶対の自信があったのだろう。ただの一人も仕留められなかった事で、全身を震わせながら低い唸り声を上げた。顔は不動明王のように怒り、怒髪天を突くその姿に、五平は腰を抜かしてしまった。
しかし、私はそれを見ながら思った。
怒りを操れないのは致命的だと。
勝負とは、冷静に力を見極めた先に決するものだ。私は煽り半分でおりんに向かって叫んだ。
「おりん殿。その技では私たちは倒せない。もうやめなさい!!」
それを聞いたおりんは、さらに激昂した。絶対の技を馬鹿にされればそれは怒るだろう。獣のように肩を怒らせ、殺してやるなどと小さな声で物騒な言葉を何度も吐きながら、蛇のように真っ赤に充血した目で私たちを睨みつけ、新たな手印を作った。
先程の余波で僧服がなびく中、もう次が来ようとしている。
私は腹をきめた。
ここまでの相手だ。今まで通りに戦っても勝ち目はない。そして、九尾の狐に会う前に死んではならないのだ。
私は気だけで闘うことを諦め、術式を使う事にした。気は精神に毀損を与えるが、術式は物理的な毀損を与える。それだけにおりんには最新の注意を持って使わなくてはならない。
おりんのような高度な術式は、今まで人間には使えなかった。だから、おりんも反撃はないとたかを括っている雰囲気がある。それが間違いなのだ。人間も進化する。油断は敗北への一本道だ。
「風結界!!」
お札を一枚取り出し、源翁は叫んだ。そしてお札に念を込める。すると、お札が金色に輝き、そのまま空気に溶けるように消えた。五平は現実とは思えない源翁とおりんのやりとりを、何も出来ず見ているしかなかった。
源翁と五平の前に何かの壁ができた。
突然おりんが少し見えにくくなったので、目の前に何かがあるのは確かだとは思う。しかし、それが何かなのかは五平には見当もつかない。これが風の結界というものだろうかと思っただけだ。
しかし、その壁の奥に見えるおりんには明確な変化があった。突如、おりんの目が異様に見開かれ、次いで悪魔のような怒りの顔が張り付いた。
五平は余りの恐怖に悲鳴をあげた。獣のようなおりんの叫び声といい勝負の大きな声だ。
源翁は、ある意味、自分が待っていた展開になったと今後の展開を予想しながら動く。
私は、おりんを挑発するように、わざと何事もなかったかのように淡々とした表情で次なる術式を発動するべく動いた。
ここにきておりんも、私が術式を操れると認識したようだ。それももう遅い。初めから相手が何をしてくるのかを考えていなければ、全てに対応する事は難しいのだ。
私の次なる術式が起動すると思い、焦ったのか、おりんは、自らの手中で成長させている大気をこちらに飛ばしてきた。
雷が鳴り響き、真っ黒な雲のようなようなものが源翁と五平に向かって飛んでくる。
飛ばされないように地面にうつ伏せになっていた五平は、雷が目の前に迫り、思わず目を瞑った。
ここだ!!
私は心の中でそう叫んで、風の壁を大きく引き伸ばすと、そのままおりんの放った大気を包んだ。大気の球は、その出どころを失って風の包みの中で暴れたが、そこを抜け出す事はできない。
そして、私は目をおりんへと向けた。
おりんの背筋に冷たいものが走った。こんなはずではないとの思いが駆け巡るが、源翁の動きは止まらない。
次の瞬間、風に包まれていたあの大気の球が、事もあろうにおりんへ向けて投げ返された。激しい稲妻と強風がおりんを襲う。おりんには、それを防ぐ手立てはなかった。
凪た山に、再び自然の風が還ってきた。先程まで荒れ狂っていた小さな大気は消え失せ、源翁の前にはおりんがうつ伏せで倒れていた。
顔を上げた五平には、何がどうなったのか分からない。分からないが、おりんが倒れているのは分かった。五平は何はなくともおりんの元へと走った。
「おりん!おりん!」
と叫びながら、何度も転びながらおりんにたどり着くと、ぎゅっとおりんを抱きかかえた。
ゆっくりと源翁が五平の横に歩いてきた。
「気絶しているだけです。五平どの。妹さんの顔をもう少し上に向けてください」
五平は言われるままに、おりんの顔を上に向けた。
源翁はそのおりんに向けて経を唱えた。気絶しながらも強張っていたおりんの顔が徐々に和らいでいく。五平はその顔を見ながら、おりんが戻ってくるのを感じていた。源翁が経を唱え終えると、おりんが薄らと目を開けた。
「おりん!私が分かるか?」
おりんは五平を見つめ、小さく頷いて「お兄ちゃん」と答えた。
「そうだ。お兄ちゃんだ…」
最後はもう声が小さく聞き取れないほどであったが、おりんは兄が自分のことをこれだけ心配してくれていた事が嬉しかった。
自然とおりんの目にも涙が浮かび、兄妹揃って号泣した。
私はそれを見て、私は兄弟愛とはいいものだとしみじみ思った。
そして、おりんは力尽きるように眠りに落ちた。
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