第8話 おじさんよりも女の子同士の話がいい②
「それでエミリアちゃん。お泊り会は今度するとして、今は魔法のことについて教えてもらえないかな?」
「そ、そう? まあ、いいわ。なら教えてあげる。まずこの世界で魔法を使うには『
魔天籠とは――
この世界の中心に浮かぶ巨大な球体の名称であり、その場所には、あらゆる魔法が管理されていると言われている。
魔法を行使する為には、この魔天籠に接続しなければならない。
こんな風に言うと小難しそうに聞こえるが、実は本人確認さえできれば誰でも使えるガバガバスタイルである。
しかも、自分で新たな能力を開発し、申請して許可が下りれば、魔天籠の管理下に置かれることとなる。そうなれば申請した能力に応じて、お金を稼いだりできるのだ。
こう言われると、また小難しそうに聞こえるが、強い魔法でなければ申請できないという訳ではない。割と面白い能力でも許可が下りたりするので、子供からお年寄りまで万人が楽しめる一品となっている。
しかし、強さを求める場合は、その限りではない。
魔天籠は一応、六階層に分かれており、数字が上がるごとに使用難度、そして強さも上がっていく。要は努力をしなければ、強力な魔法を行使することができないという仕組みなのだ。
これらの初心者でも入りやすいシステムのおかげで、サブロウは伸し上がれたと言っても過言ではない。解説終了――
「……という訳なの。わかった?」
「うん! 教えてくれて、ありがとうね! それで実際、魔法ってどうやって使えばいいのかな?」
「そういうことなら、まずはアカウント登録ね。付いて来なさい!」
エミリアは無い胸を全力で張りつつ、満面の笑みでレッドを引き連れ、任務受付カウンターまで闊歩する。友達ができたことが、よっぽど嬉しかったようだ。
「受付のお姉さん! エミィの友達がアカウント登録したいって言うから手配してちょうだい!」
「あら、エミリアさん。こんにちわ。そちらの方は……勇者のレッドさんですね? 先日の魔王軍の撃退、お疲れ様でした」
ふんわりロングヘアーの受付のお姉さんは、朗らかな糸目のままペコリとお辞儀する。
「いえいえ、とんでもございません! 恐縮です」
レッドは少々恥ずかし気に丁寧なお辞儀で返す。
「あらあら、お可愛らしい。そうだ、アカウント登録の件でしたね。それでしたらこちらをお持ちください」
受付のお姉さんは蕩けたように頬を染め、魔法少女のステッキらしきものを手渡す。
「え~っと~……これは?」
「こちらのステッキで呪文を唱えながらポーズを取っていただければ、たちまちアカウント登録ができること請け合いです。因みに呪文はオリジナルでお願いします。さあ! 奮ってどうぞ!」
「ええっ⁉ いきなりそんなこと言われても……。っていうか、何で魔法少女みたいなことしなくちゃいけないんですか? 恥ずかしいよぉ……」
顔を真っ赤にしたレッドは、潤んだ瞳でエミリアへと助けを請う。
「我慢なさい、レッド。エミィは小さい頃にやったから、わりかしノリノリだったけど、今の年齢でやる勇気はないわ。だからと言って渋りすぎると、どんどんハードルが上がってやりづらくなる。早めに処理することをお勧めするわ!」
「そ、そんな~……」
レッドはそう言いつつも、ガッツポーズで送り出すエミリアの言葉に従い、魔法ステッキを強く握り締める。悩んでる時間すらも惜しいといった感じだ。
しばらく目を瞑り、身体を震わせ、顔は真っ赤。
可愛らしい唸り声を漏らしつつ、それが済むと意を決したように目を見開き――行動を起こす!
「ぴぴろん、ぱぴろん、ぴぴりゅぴん! アカウント登録にな~れっ!」
『アカウント登録にな~れっ!』って何? という野暮なツッコミは置いといて、ステッキを天高く振りかざし、腰に手を当てて膝をぴょこんと上げるレッド。
そんなプリティな姿に――
「「「「うおおおおおおおおッッ‼」」」」
客として来ていた男たちは歓喜の声を上げた。
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