一度目の人生を理不尽な婚約破棄と断罪で奪われた公爵令嬢、ループし若返ったので誰にも頼らずカフェを開いて自由に生きます!なのに常連客が断罪した王太子殿下達なうえ溺愛して来るって、これ何てイジメ?
24.続・死亡フラグの皆さんと、死亡フラグを回避しながらショッピング!(クライブ編)
24.続・死亡フラグの皆さんと、死亡フラグを回避しながらショッピング!(クライブ編)
さて、串焼きでお腹も一杯になった私は、上機嫌で目的のお店に足を進めていました。
結果的に、結構寄り道をしてしまったので、ちょっと時間が押し始めていますね。ここはちょっと横道に入って近道をすることにしました。できれば今日中に片づけたい仕事ですしね!
ですが、それがいけませんでした。
突然、待っていたかのようにガラの悪い男達が現れたのです。
「へへへ、ラッキー。見た感じ金持ちそうなご一行様じゃねーか!」
「多分金持ちの商家のガキとかだろうさ! くっくっく、こいつはついてるぜ!」
「有り金全部置いて行きな!」
えー!
いやいやいやいや!
何で今日に限ってこの平和な街に、こんな物騒なチンピラが湧くのですか⁉ しかも五人も! 何かのイジメですか⁉ 確かに横道使いましたけど、普段そんなに危ない道じゃないでしょう⁉
「へへへ、特にそっちの髪の黒い姉ちゃんは俺の好みだなぁ。どうだ、有り金はいいから、俺とこれからデートでもしねーか。ぐへへへへ」
そういって下卑た表情で私の方を見る。
死んでもお断りですわ! そう返事をしようとしたところに、クライブ様が……。それからなぜかミーナリアさんや殿下、バスクがすっと私の前に割って入ったのです。
「んだぁ? てめえはよう。こっちはこんだけ人数がいるんだぜえ? てめえらみてえなお坊ちゃんたちは抵抗するだけ無駄だぜえ。ぎゃーっはっはははは!」
チンピラたちのリーダー格の男がそういうと、周りの手下たちもゲラゲラと笑った。
だが、
「フッ」
それに対してクライブ様は軽い嘲笑を浮かべる。その声は深いバリトンで全員の耳によく響いた。
「てめえ、何笑ってやがる!」
「いや、なに」
彼は微笑みながら、後ろを向いてこっちへ向かってパチリとウインクをして、
「私の愛しき小鳥を守る栄誉を与えてくれるとは、神様も粋な事をすると思ったまでですよ」
おおー! 美男子が言うとまた一味違うなぁ。それにかなり気合が入っているように見える。
そうか、なるほど!
あのウインクは、私の目の前に立つミーナリアさんに向かってのものか!
確かに、こんな健気で可愛い子がいたら、騎士としては守りたくて奮起するものだろう。うんうん。もうかなり、ミーナリアさんの魅了が、裏切り三人衆たちに効きはじめていることの証拠でもある。
あっ! とするとこれはまずい!
私の脳裏にひらめきが走る! さえわたる頭脳!
ミーナリアさんをこのまま私の前にいさせた場合、きっと断罪シーンで、あのチンピラにわざと襲わせてミーナリアさんを盾にした、と主張されるだろう。騎士団長のクライブも同意して、犯罪者アイリーンの誕生だ!
まずいまずいまずい、どうにかしないと! 私はキョロキョロと周囲を見回す。すると、鉄パイプのようなものが打ち捨てられていた。私はそれをとっさに拾い上げ、
「ミーナリアさんは後ろへ! こんなチンピラに負けてなんていられませんわ!」
「ア、アイリーン様……」
何か言いたそうな彼女を無理やり私の後ろへ下げて、私は適当に鉄パイプを構える。
よっし!
これで私がミーナリアさんを盾にしようとしたとは言えないわ! チンピラたちも聞いたわよね⁉ 最悪、断罪シーンで証言してもらうからね⁉ 『確かにアイリーンはミーナリアさんをかばうように鉄パイプを俺たちに向けました』ってね!
「ああん! なめてんのかあぁ⁉ へへ、でも嫌いじゃねえぜえ! てめえみてえな美人なだけで、何でも思い通りになると思ってる女を思い通りにするのはよう!」
はあああああああああああ⁉
いやいやいやいや!
全然思い通りにならないんですけど⁉ このままだと断罪からの国外追放の死亡ルートなんですけどお⁉
そう叫びたかったのですが、その前にクライブ様の声が響きました。
「ふっ。やはりあの時と同じだ。誇り高く美しき鳥。騎士に守る栄誉を与えてくれる女神といったところか」
「?」
何を言っているのか分かりませんでしたが、それを理解する時間はありませんでした。
「しゃらくせえ! なら、お前からだ」
「残念ながら」
私が瞬きをした次の瞬間には、
「通って来た修羅場が違うのでね」
「ぎゃっ⁉」「なっ、ぐわ⁉」「何が⁉」「見えない!」「た、たすけっ……!」
「す、すごい。あれだけの数の敵を一瞬で……」
思わず感嘆の声を上げる。
まったくもって、剣筋が見えなかった。
これが将来、王国の騎士団長になるクライブの実力なのだ。圧倒的な強さ、そして、
「ご無事ですか、我が美しき鳥よ」
そう言ってこちらに微笑む。あっ、これは後ろのミーナリアさんへか。
ミーナリアさんは怖かったのか、私の手を握っている。震えてはいないのが救いだ。ただ、クライブの声に答えないのは、やはり怖かっただろう。
というか、怖がらせることになった原因は、もとはと言えば、私が近道をしようとしたのがこんなことになった原因だ。無事だったとは言え、クライブがいなかったら大変なことになっていたかもしれない。謝ろう。
「みんなごめんね。私が近道をしようとしたばっかりに。怖い思いをさせて」
そうシュンとして言う。すると、クライブ様とミーナリアさんは目を丸くした後、なぜか嬉しそうな表情を浮かべて、
「いえいえ。美しき鳥が舞いたき場所を舞い、それを邪魔する者あらば排除する。それこそが我が騎士の
ん?
すると、ミーナリアさんも、
「騎士様のように守ってくださろうと、私の前に出て下さって。本当に素敵でした。あの時のように。お慕いしています」
と言った。
騎士様のように、って。クライブ様は本当に副騎士団長だけどね、ミーナリアさんったら。
うーん、でも、今の会話を聞くに、どうやら二人はお互いを「守るべき対象」と「素敵な騎士」っていう感じで認識しているみたいね。
やっぱりさっき思った通り、どんどんミーナリアさんにクライブも魅了されていて、死亡フラグは進行しているんだわ。
幸い、機転を利かせて、決定的な死亡フラグは回避に成功したと思うけど、これからも気を付けないと! でないと本当に決定的で回避不能の死亡フラグを立てちゃうことになりそう!
私を妙に熱っぽい視線で見つめる死亡フラグ2名に、なんとか作り笑いを返しながら、私は決心を新たにしたのでした。
ところで、
「クライブ、こういう時は僕の分も残しておいてもらわないと困ります。あなただけいい恰好をしようとしましたね?」
「僕にもですよ、クライブ様。抜け駆けとは騎士道精神に反するじゃないんですか?」
キース王太子殿下と弟のバスクが、なぜかとても不満げな口調でクライブ様に文句を言っていました。
恐らく、ミーナリアさんにいい所を見せたかったのだけど、それをクライブ様一人に持っていかれたことを残念に思ったのでしょう。
恐るべし! ミーナリアさん!
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