一度目の人生を理不尽な婚約破棄と断罪で奪われた公爵令嬢、ループし若返ったので誰にも頼らずカフェを開いて自由に生きます!なのに常連客が断罪した王太子殿下達なうえ溺愛して来るって、これ何てイジメ?
17.死亡フラグ包囲網 完成(キース殿下・陥落編)
17.死亡フラグ包囲網 完成(キース殿下・陥落編)
さて、そんなこんなで下校時刻となった。
残念ながら殿下に副騎士団長、義理とは言え公爵家の長男に囲まれている私に女友達なんて出来るわけもなく……。今日も今日とて夢見ていた女子学生生活とは程遠い、むさくるしい男たちに纏わりつかれての下校となった。もちろん、まだ諦めていませんけどね! みんなそれぞれ公務がある身だし、ずっと私につきっきりとはいかないはず。隙をついて絶対に女友達を作ってやるんだからー!!!!
と、そう内心意気込みながら、学院の美しい庭園を抜けて下校しようとしていた、その時でした。
「や、やっとお会い出来ました! ア、アイリーン=リスキス公爵令嬢様!」
はあはあ、と可愛らしく息を切らして、私の前に現れたのは頬を紅潮させたいかにも庇護欲をそそる容姿をしたミーナリアさんだった。朝会った時と同様、ミーナリアさんは、おっとりとした柔らかい声をしている。やっぱり可愛いなあ、と思わず見とれてしまった。しかも、なぜか私に対して優し気な微笑みまで浮かべていて、つい私も微笑み返しそうになる。
はっ⁉
おっと、いけない、いけない⁉
彼女の魅力にまんまと油断させられてしまっていた! くそう、これか! これが彼女の力なわけなのね⁉ 私は俄然納得が行った。
そして、最大のピンチが訪れていることに戦慄を禁じえなかった。なぜなら、まさに今、私を
もしかしなくても、これって完璧に死亡フラグが一気に進むイベントじゃない⁉ 私完全にやらかした⁉ 朝の事件の際、ちょっとしか顔を見られなかったし、早々に退散したから大丈夫だと思ってたけど、まさか私を執念深く追いかけて来るなんてー! 早退すりゃ良かった! でも、どうしてもサンドイッチを食べたかったから、仕方なかったのよー⁉
ああ、これにて私の二度目の人生は終了なのね(がーん)。
そう、打ちひしがれたのだった。
しかし、
「あ、あの、アイリーン様……。も、申し訳ありません。私のような下級貴族が唐突に呼び止める無礼に、
そう、モジモジと頬を染めて言ったのだ。可愛い。だが!
「そ、そうなの、おほほほ。大丈夫よ、大したことはしてないから。変な黒い靄をビンタしただけですもの。だから気にしないでね」
そして、出来れば私の傍に近寄らずにいて頂戴! 死亡フラグを立てないで下さいませ⁉
でも、そんな心の声にはお構いなしに、彼女は私の目の前まで来ると、更に私の顔を見上げて、目を潤ませながら……。
「いいえ、あんな恐ろしい正体不明な存在に
そう言って、頬を朱に染めたのだった。
あれ? なんかちょっと様子が変じゃない?
何だか本当に私に感謝しているような気が……。それに気のせいじゃなければ、何だか羨望のまなざしを向けられているような……????
いえ、油断してはダメよアイリーン!
1周目の人生で学んだじゃない! 彼女は私の死亡フラグ! 私の陥れるために、お礼を名目に近づいてきたことは確定なんだから!
な、なんとか断らないと……。
そんなことを私が考えていると、殿下たちがなぜか狼狽するような声を上げた。
「なんということでしょう。まさか女性までとは!」
「油断していましたね。やはり放っておくと収拾がつかなくなる!」
「これだからアイリーン姉さんはっ……!」
そう三人が鬼気迫る様子で頭を抱えてから、ジトーっとした目で私の方を見る。
えっ? えっ? なんで? 私が何をしたっていうんですかぁ⁉
そんな風に慌てているうちに、殿下が私をなぜかかばう様にして、口を開いたのでした。
「ミーナリアさん、とおっしゃいましたね。僕はキース=シュルツ第一王子です。このたびは
そうにこやかに言った。最後に何かぼそっと聞こえたような気がしたが、気のせいだろうか?
殿下の言葉に、ミーナリアさんも微笑みながら返事をした。
「殿下からのお言葉、ありがたく存じます。殿下のおっしゃる通り、身分ではなく当人たち同士の合意で友情が成立するという学院の理念素晴らしいと思います。もちろん、私も単にアイリーン様のお役に少しでも立ちたいと思っているだけですので、断られれば無理を申し上げるつもりはありません。殿下もアイリーン様に婚約を依頼されていると聞いていますので、それと同じく、私もアイリーン様と直接お話し合いをして、合意が出来ればなと思っているのですが……それはだめでしょうか?」
「ぐっ⁉ そ、そうですね、もちろん両者の気持ちが通じ合わないといけませんね…‥。合意が必要、ですよね……本当に……」
「あ、あの、殿下? どうされたのですか? 何か失礼なことを申し上げましたでしょうか?」
「いえ、何でもないんですよ、何でも。でも、ちょっと自分のふがいなさがね。いえ、明日からもっと薔薇の数を増やしましょう。なぜかそうしないと、新しいライバルにとられてしまうような予感がしますしね」
なぜかミーナリアさんの何気ない言葉に、微笑を絶やさない殿下が落ち込んだ様子で肩を落とす。かと思ったら、更なる情熱を瞳に宿してこちらを見た。
「?????????????」
私は戸惑って頭の上に疑問符をたくさん浮かべるだけだけど。
すると殿下は「はぁ~」と嘆息される。えっと、また何かしてしまいましたでしょうか⁉
それはともかく、今の会話どういう意味だったんだろう?
落ち着いて考えましょう。アイリーン。死亡フラグがまさに今立とうとしているのよ。今が私の二度目の人生で生き延びて自由に生きられるかを決められる瀬戸際なんだわ。
えっと、人生の1回目を踏まえれば、私を捨てる方向で会話が行われたと考えるべきだ。
つ、つまり⁉
ミーナリアさんの言葉……『私もアイリーン様と直接お話し合いをして、合意が出来ればなと思っているのです⇒(訳:おとなしく殿下を諦めてもらうように説得するつもりだ)』
殿下(浮気男)…………『(結婚は)両者の気持ちが通じ合わないといけませんね⇒(訳:アイリーンを捨ててミーナリアと相思相愛になりたい。あ、邪魔なアイリーンは極刑ね)』
そういうことかあああああああああ! やっぱり完全に死亡フラグじゃないですか⁉
いえ! いいえ!
落ち着いてアイリーン。落ち着いて、私。1度目の人生だったら婚約済みだったから、婚約破棄された上に追放なんて憂き目にあったわ。でも、今回は求婚を全部断ってる! だから他人! 完全な他人! だから、私のことは気にせず、二人でラブラブになってくれて大丈夫なんですよ⁉
私は今回、自分の人生を独りで自由に謳歌致しますので、巻き込まないでくださいませー⁉
……そして、私がそんな内心の悲鳴を上げていると、クライブ様が口を開いたのでした。
(続きます)
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