第26話受入れは大変だ
洞窟で魔法循環機を設置完了して、しばらくするとあの人たちがぞろぞろとやって来た。
服装も身分の高そうな人も居れば、拷問でもされたのかボロボロの服を着ている者まで居る。
あれ、なんだ・・・全員が髪が少し濡れているな・・・
「あの人たちは髪が濡れているようだが、雨でも降ったのか?」
「あ!領主さま・・・領主さまは知らないようですね。あの人たちは物凄く臭かったので、川で体と服を洗ってもらいました。なんでも1ヶ月近く牢に閉じ込められたようです。病人は薬学所で治療を受けてます。可哀想なのは子供たちで、大半の子供は栄養失調で
「そんな事があったのか、しかし濡れているのは髪だけだ。服は濡れてないぞ」
「ああ、あれですか、ドベルトが火魔法で必死に乾かせていましたよ。本人は疲れたと言ってますが、まだまだ魔力に余裕があるみたいです」
そして勝手に使われた黒狼が帰って来た。
後ろの荷馬車には、セバスの料理の弟子が「クロ、あと少しだから頑張ってね」と声を掛けている。
黒狼はまんざらでもないみたいに、俺の目の前で止まった。
大鍋が下ろされて、すでに置かれた魔コンロへ載せると、調理に取り掛かっている。
その大鍋に水が注がれた。
「タタタタタ・・・」と野菜が切られ、オークの肉も切られ、大鍋へぶち込まれた。
瓶に入った調味料もどばっとぶち込まれた。
「クツクツクツ」沸騰すると、魔コンロのツマミで火加減を調整。
なにやらかぐわしい匂いが漂いだしてくる。
そうなると空腹なのか、人々が集まりだした。
「はいはい、並んで。出来上がったら配るから早く並んでよ。絶対に美味しいから・・・無くなってもじゃんじゃん作るからあせらないでよ」
リーダのように若い女があれこれと、指図していて皆もそれに従っていた。
「うまい。なんて美味さだ。帝国でも味わった事がない美味さだ」
ここには数少ない子供は「ママ、美味しいよ」
「あら、本当に美味しいわ。ミワは腹一杯食べるのよ。隠し持っていた干し肉がゴムのように感じるわ」
「あの肉はかたくてきらい」
「それでも、あの肉のお陰なのよ。もう贅沢は出来ないの・・・ウ・・ウウ」
あああ、あのお母さんは子供前で泣きだしているぞ。
そうとう辛い事でも思い出したのだろう。
俺にも経験があるから、なんとなく分かる気がする。
洞窟の前に2名の黒騎士を残した。
「この2名には、絶対に話掛けないでくれ。軍の決まりだ。これは領主命令だ」
その言葉を残して、荷馬車を操って出発だ。後ろには黒騎士を引き連れていた。
屋敷では、例のごとくメンバーが少ないが揃っていた。
アシラン「薬学所では、子供264名大人39名を治療に当たってます。そうとうな症状で、あと数時間で危なかったと認識してます。後2日、経過観察が必要です」
セバス「それでは、わたしから重大な報告があります。この反逆をでっち上げたのは、帝国の諜報部に間違いありません。色々と聞き取り調査をして証言をまとめるとこうでした。バランさまの失踪が始まりでした。諜報部が誘拐して嘘の証言にサインをさせたようで、バランさまに親しい貴族は、ことごとく逮捕されて嘘の証言を強いられたようです。頑固に拒否した者は、そのまま拷問死させるまで徹底されようで・・・後は諜報部が書いたシナリオ通りに事が進んだみたいで・・・皇帝もなにも言わないままだと聞いてます」
「それで黒幕は、誰なんだ」俺は思わず手の平でテーブルを叩いていた。
「ああ、すまん。ちょっと興奮したようだ。諜報部は正確な情報を集めるのが仕事だ。その諜報部が嘘で帝国を落とし入れた。あってはならないことだと・・・つい思って・・・」
セバス「シンさま、それはわたしも同じです。黒幕は推測域を出ませんが、第3位のロゲンさまです。第2位のミシュロンさまと親しい貴族もとばっちりに大勢が殺されています」
サラス「わたしも調書を読ませていただきましたが、軍部経験のあるわたしでも、容易に推測できます。ミシュロンさまの軍部に通じている全ての者が殺されてます。それも末端の者まで・・・明日でも反乱を起こせば、ロゲンさまが軍部を
「それはすぐだと思うか・・・」
サラス「いえ、すぐにはしないでしょう。皇帝が居るので、皇帝の一言はそれだけ重いのです」
「セバス、いよいよこちらの諜報部が重要になったな」
セバス「そのようです。アシラン、すまないが帝国に行ってくれぬか、ミライに大金を手渡して今後の計画に参加してくれ。重要な任務だ」
アシラン「分かってます。おいらの友達に闇の世界に住む奴が、大勢いるので上手く使ってみせます。その間、薬学所を頼みます」
「誰か(仮)担当官にさせれる人物でもいるか?」
アシラン「ロレン・ヘードでお願いします」
「あの人物を進めるのか・・・分かった」
こんなに人が急に増えるなんて、人の受け入りは大変だ。
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