アンコール 予感



ーーーー アクサレナ 某所 ーーーー



「ほら、お姉ちゃん!!早く!!終わっちゃうよ!!」


「ちょ、ちょっと待って!!私、そんなに速く走れないわよ……!」


「ふむ……相変わらず運動神経が鈍いのだな……」



 アクサレナの街に賑やかな女性たちの声が響く。


 何事かと通行人たちが驚いて振り向くが、三姉妹らしき女性たちは急いでいてそれどころではないようだ。



「もう〜!お姉ちゃんったら!!もう間に合わないよ!!」


「はぁ……はぁ……だって…………と言うか、あなたがあちこち色んなお店に顔を出すからでしょ……」


「全くだ。落ち着きがないのは相変わらずだな」


「うっ……しょ、しょうがないじゃない……だって楽しかったんだもの」


 今は少し言い争っているが、仲の良い姉妹なのだろう。

 しっかり者の長女に、おっとりした次女、元気一杯の三女……と言ったところか。



「まあ、間に合わなければそれもしょうがないだろう。また見に来ればいいさ」


「う〜……でも、エーデルワイス歌劇団は人気が凄くて中々チケット取れないんだよ?」


「いいじゃないか。人生長いんだ。ゆっくりいこうじゃないか」


「姉さんは相変わらず達観してるわね……でも、そうよね。私達の人生は、まだまだ長いんだから」


「もう……お姉ちゃんたちは……ま、いっか。じゃあ、どうする?何か美味しいものでも食べてく?」


「さっき昼ごはんを食べたばかりだろう。相変わらずお前は食いしん坊だな」


 そんなふうに、賑やかに、楽しそうにお喋りをしながら彼女たちは街の雑踏に紛れていった。






「また、いつでも会えるわよ……」





 季節は春。


 新たな出会いの予感が、すぐそこまで来ているのかもしれない……



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