第十五幕 32 『VS大魔王 前哨戦』


 大魔王ファーガス三世。


 邪神をその身に降ろしたという彼の身体は5メートルは超え、悪魔のような人外へとなり果てた。


 そして、ついに決戦が始まった。




 私を始めとしたシギル持ちは初めから発動状態で戦いに挑む。

 今持てる全てを出し切り、力を合わせなければ倒すことはできないだろうから。



 テオ、ルシェーラ、ロランさん、そして私は前衛として魔王に迫る。



 敵は余裕を見せてるつもりなのか、その場から動かずに待ち構えている。


 その両腕からは、3メートルはあろうかという巨大な剣が生えていた。

 接近戦を仕掛けるにしても、あの巨剣と打ち合うのは得策ではない。

 回避主体で手数で勝負……!




「先手必勝ですわ!!はぁーーーっっ!!」


 いち早く接近したルシェーラが、氣を纏った神聖斧戦斧ルーン・ハルバードで魔王の足元を薙ぎ払う!!



 ギィンッッ!!!



 魔王は巨剣を地面に突き刺して受け止める!



「ハァーーーーッッ!!」


「せりゃあっっ!!!」


 間髪入れずに私とテオが攻撃を繰り出す!!


 私の星剣&リヴェラ(小太刀)の二刀と、テオの聖剣による挟撃だ!!



『ふんっ!!!』



 ガィンッ!!!

 ギィンッッ!!!



 魔王はルシェーラの攻撃を防いだ大剣と、もう片方の大剣を大きく振り回して私達の攻撃を弾いた!!




「まだまだぁっっ!!!」


 次いでロランさんが魔剣を分割して全周囲から攻撃する!!



『裏切り者め!!よくもおめおめと姿を姿を見せたものだ!!』


「あいにく、こっちとしちゃあ仲間になったつもりは無かったんでな!!」


 6つの小剣が軽やかに舞い、本体を持つロランさんと連携を見せる。



 よし、私達ももう一度……!


 そう一気呵成に畳み掛けようとした、その時……!




『小賢しい!!纏めて吹き飛ばしてくれる!![黒死滅風]!!』



 っ!!

 何かヤバイ魔法だ!!


 魔王を中心に瘴気混じりの烈風が吹き荒れる!!!




「させないわ!![破邪聖風]!!」


 黒い風が前衛の私達を飲み込む寸前、シフィルの風魔法が発動!!

 清らかな破邪の風が禍々しい黒い風と拮抗する!!



「くっ!?押し返せない……!!誰か!!重ねてフォローお願い!!」


 ギリギリで私達に届く前に止めてくれたけど、じわじわと押されている……!

 風のタクトで極大化したシフィルの魔法でも抑えられないの!?



 私は急いで結界魔法を使おうとしたが……



「[天恵]!!」


 メリエルちゃんの魔法が発動……って、治癒魔法!?


 [天恵]は広範囲に治癒の光を放つ上級魔法だが、一体なぜ……?


 私はそう思ったのだが……何と、治癒の光が黒い風を消し去っていくではないか!



 ……そうか!


 あの黒い風は生命力を奪うものなんだ!!

 だから対抗魔法は治癒系になるのか……


 それを瞬時に見破ったメリエルちゃんが凄いよ!




「ナイスだよ!!メリエルちゃん!!」


「ぶいっ!!」



「反撃だよ!![滅天火]!!!」


「[滅雷・極]!!!」


「『光矢連弾』!!!」


 ミーティア、シェラさん、ステラの後衛火力による波状攻撃!!


 灼熱の火球と雷撃、光の矢が一斉に魔王に襲いかかった!!



『うおーーーっっっ!!!!』



 ドオーーーンッッッ!!!




 やった!!


 まともに直撃したぞ!!!



 火球が直撃したことによる爆煙が魔王の姿を覆い隠す。



 パリッ!!バチバチッ……!!


 雷撃の余韻と、空気の焼ける匂いが漂ってきた。



 極大魔法2発と退魔の矢の連撃だ。

 いかに魔族を超越した存在であろうとも、無傷ではすまされないはず……!!





 だが……!!




『ふふ……ふははは…………!!!』




 魔王の高笑いが響き渡る。


 そして爆炎が晴れたとき……全くの無傷の魔王がそこに立っていた!



「馬鹿な!!あれで無傷だと言うのか!?」


「とんでもないタフさですわね……」



 さっきの攻撃は私達の中でも最大火力に近いものだった。

 それが、傷一つ付けられないなんて……



『ふははは!!素晴らしい……!!これこそ世界を統べ、全人類を導くのに相応しい力だ!!!』


 魔王自身も自らの力を全て把握していなかったようで、驚く様子を見せながら悦に入っている。




 想像以上の魔王の力……


 一体どうやって打ち破る……!?


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