第十四幕 21 『エメリナ神殿へ』


 戦勝祝のパーティーの翌日、朝早くから私は旅支度を整えていた。

 既にメリアさんもリナ姉さんも起きているので、話をしながらである。



「いや〜、昨日のパーティーは楽しかったわね〜。神殿も含めて、あんなに沢山の人と話すのは本当に久しぶり」


「リナちゃんは会話を楽しむより、料理に夢中だったんじゃない?」


「ちゃんとお話もしてたわよ。確かに料理も美味しかったけどさ。お陰で神界での食事もアップデートできそうよ」


 あ〜、だから片っ端から食べてたのか。

 ガツガツしてたわけじゃないけど、結構な勢いでヒョイぱく、ヒョイぱく…ってしてたからね。


 皆の女神に対する幻想が打ち砕かれてなければ良いけど……



「カティアちゃんは私の神殿に寄ったら、アクサレナに戻るのよね」


「うん。リル姉さんには会えるよね?」


「それは大丈夫。一度私が神界に行って伝えておいたから」


「ありがとう」


 昨日神殿に行った用事の一つはそれか。

 リナ姉さんも地上にいる間は自由に神界に戻れる訳じゃないみたいだから、私と同じように神殿に行く必要があるらしい。



「リナ姉さんはこのまま森都に残るの?メリアさんも」


「私は森都に残るわ」


 メリアさんは森都に残る、と。

 そしてリナ姉さんは……



「そうね……カティアちゃんに着いてくのでも良いのだけど……多分、ここにいた方が良いかな。……邪神の手がかりが分かったのよね?大体のことはメリアから聞いたわ。神界に行くのもその話をお姉ちゃん達に共有するためでしょ?」


「そうだね。でも、グラナの侵攻を考えると『黒き神の神殿』に向かう暇なんて無いのだけど……」


「それよ。出来ればカティアちゃんを助けてそっちを何とかしたいのだけど……どうも私達は東大陸に踏み込めない感じなのよね」


「……以前、リル姉さんがグラナの情勢は神界からは見通せないって言ってたけど、それと関係が?」


「多分ね。神霊精霊の類を寄せ付けない何か……あるいはそれこそが邪神の力なのかも。だから、私達はこの地の守護のために力を振るうべきかもしれない。そうすれば……あなた達が動けるようになるでしょう?」


「……つまり、今回のリナ姉さんみたいに、グラナの侵攻があったら他の神様たちも降臨して力を貸してくれるって事?」


 もし、それが実現したら……凄いことだよ。



「状況次第だけど、そう言う事ね。とにかく神界に行ってリルお姉ちゃん達に情報を伝えないと」



 だね。


 そう言ってる間に準備は整った。

 まぁ、パーティーに行くわけでもないのでそれ程時間がかかるものではない。



 さぁ、出発しようか。





















 そして、私達はエメリナ大神殿へと向かう。

 神殿に行ったあとはそのまま帰国するので、メリアさん、メルド陛下や王妃さま、メリエナさん、ジークリンデ王女とは既に別れの挨拶をしている。

 イスファハン王子は先に、飛竜籠が待機している大樹広場で待ってるとの事。


 一緒に神殿に向かうのは、リナ姉さんにテオ、ルシェーラ、シフィル、ステラそして……



「メリエルちゃん、このままここに残らなくて良かったの?」


 今回の件を機に、ウィラーに残るように言われてるのではないかと気になったのだ。



「うん、お姉ちゃんが『あなたはカティアさんの力になりなさい』って。私もそのつもりだったし。それに、私はまだまだ学園でも学ぶことがあるよ」


「そっか。一緒に来てくれて心強いよ」


「ホント?」


「もちろん!心から頼りになる仲間だって思ってるんだから」



「メリエルの活躍は私達も聞いたよ。随分暴れたみたいじゃないの」


「森都の皆様も、鼻が高いでしょうね」


 シフィルとルシェーラはメリエルちゃんの活躍を直接は見てないけど、色々と話には聞いたんだろうね。








 そうして、私達はエメリナ大神殿へとやって来た。


 昨日見たときは多くの人々で溢れかえって中に入るのも厳しかったが、今日は普段通りの落ち着きを取り戻していた。

 原因であるリナ姉さん含めて変装しているので、また大騒ぎになることは無いだろう。


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