第十四幕 19 『戦勝祝2』
ウィラー王城のパーティー会場。
楽団が優雅な音楽を奏で、そこかしこで着飾った男女が談笑する。
もう何度目かの社交の場だ。
私もすっかりこの雰囲気にも慣れたと思う。
今回のパーティーは、貴族以外にも戦いに参加した騎士や隊長格の兵士も参加するもので、あまり堅苦しい雰囲気は感じない。
むしろ私達王族の方が浮いてるかも。
私達が会場入りすると視線が集まるのだが……
今回一番目立ってるのは私ではない。
テオにエスコートされた私。
注目されたのは一瞬の事で、直ぐに後ろに続く二人へと視線は移る。
会話のざわめきが途絶え、会場に沈黙が降り、楽団が奏でる音楽だけがやけに大きく聞こえた。
「あら……静かになっちゃったわね」
「は〜い、みんな〜!私達のことは気にしないで楽しみなさ〜い!」
気にするなと言うのは無理じゃないかな。
でも、その一言で会場は再び賑やかになり始める。
きっと彼らの話題は、専らリナ姉さんやメリアさんの話題になってる事だろう。
「エメリナ様、メリアドール様、本日はよくご参加下さいました。テオフィルス殿とカティア殿も、どうか楽しんで楽しんで頂きたい」
最初にメルド陛下のもとに挨拶にお伺いすると、穏やかな笑顔で歓迎の言葉をかけてくれた。
メルド陛下の他には、王妃のアンリエッタ様、メリエナさん、そしてメリエルちゃん……ウィラー王家勢揃いだ。
それぞれ挨拶を交わす。
「メリエナ、体調は大丈夫かしら?」
リナ姉さんが心配そうに聞く。
ここ最近は療養中で、会議等の出席も最小限にとどめていたみたいだけど……最初にお見舞いした時よりは大分お元気になっているようには見える。
「はい、お陰様でかなり復調してまいりました。今日は、この度の戦で戦った者たちを労うための大切な場ですから……皆に感謝を伝えるためにも、是非出席したかったのです」
「そう……でも、あまり無理してはダメよ。あなただって今回の功労者の一人なのだから」
「そうよ。よくウィラーを護ってくれたわね。私も誇らしいわ」
「は、はい!ありがとうございます!」
伝説の人物二人に褒められて、メリエナさんは顔を紅潮させて嬉しそうにしている。
リナ姉さんの言う通り、メリエナさんは今回の戦いの最初の功労者だ。
彼女が命懸けで結界を発動してくれたおかげで、ウィラー軍が体勢を整えたり、援軍が来るまでの時間稼ぎが出来たのだから。
「カティアさんたちも……本当にありがとうございました」
「メリエルちゃんのお陰で何とか援軍に間に合いました」
「ええ。私が思った通り、メリエルに
……やっぱり、
大森林結界の発動によってグラナ軍を足止めして時間稼ぎをしながら、同時に非常事態が起きていることを瞬時に伝える。
あの時はアクサレナでサミットが行われていたから、早急に各国から支援軍を派遣してもらえる事が期待出来る……と。
「もう、お姉ちゃんは無茶するんだから……お父さんもお母さんも止めなかったの?」
「もちろん止めましたよ。でも、この娘は言い出したら聞かないし……それはエルも知ってるでしょう?」
王妃様がため息をつきながら答え、メルド様も、うんうん…と頷いている。
親としては、娘に命の危険を伴う行動をさせるのは本意ではなかっただろう。
「私は全て上手くいくって信じてたけどね。私も死ぬつもりなんてないし、メリエルは絶対
……凄い信頼感だ。
姉妹の強い絆が今回の勝利を呼び込んだのは間違いないね。
「流石はメリアの子孫たちよね。頼もしいわ」
「ふふ……そう言われるのは嬉しいけど、本人たちの才覚よ」
「最終的には……多くの民や兵の命が救われたのは、エメリナ様、メリア様のお力があればこそ、ですな。ありがとうございます」
「もう、何度もお礼はもらったわよ」
「何度感謝してもしきれるものではありませぬ。此度の奇跡は未来永劫にわたり、感謝とともに語り継がれる事でしょう」
「大袈裟ねぇ……」
リナ姉さんはそう言うけど、新たな伝説になるのは間違いないだろう。
もう既に、吟遊詩人たちが競って詩歌や物語を創作して披露してるって言うし。
そのうちウチの劇団でも演じられる日が来るかもしれないね。
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