第十三幕 49 『森都防衛戦3』


ーーーー メリエル ーーーー



 カティア、テオさん、ステラ、イスファハン王子、リンデお姉ちゃん……

 わたしの祖国を守るため、皆が力を貸してくれている。


 わたしも、お父さんに会って皆のことを伝えたら、早く参戦しないと!!



 建物の間を駆け抜け、やがて視界が開ける。

 本陣がある大樹広場は、もう目の前だ。



 ……わたし、迷子になってない!!

 非常時だけど、思わず嬉しさが込み上げてしまった。




 大樹広場……円形の敷地のそこは、一面芝生に覆われた小高い丘のようになっている。

 その頂点、円の中心には一本の巨大な樹が生えている。

 大樹広場の名の由来となった御神木だ。




 そして、話に聞いていた通り、広場の北街区方面には多くの兵が配置されている。

 あのあたりが本陣……かな?


 わたしが近付いていくと、何人かの騎士や兵がこちらに気がついたみたい。






「メリエル様!?」


「何故こちらに!?」


「詳しい話は後!お父さんに会わせて!!」


 東門の時と同じように、わたしの突然の帰還には皆が驚きを見せる。

 だけど今は詳しい説明をしている暇はない。



「こ、こちらです!」


 騎士の一人に案内されて本陣へと向かう。


 そして……








「メリエル!!」


「お父さん!!」


 お父さんはわたしを見るなり抱きしめてくれる。

 ……鎧が当たってちょっと痛い。


 だけど直ぐに離して、真剣な顔で言う。



「何故……戻ってきたのだ。イスパルに居れば、取り敢えずお前の事は心配する必要はなかったのだぞ」


「……お父さん。わたし、シギルを継承したんだよ」


「!!……そうか。やはり、そうだったのか」


 お父さんは驚いた顔をしたけど、予想はしていたみたい。



「お姉ちゃんは……大丈夫なの?」


「……安心しろ、命に別状はない。しかし、シギルの力を使いすぎた影響か……今は城で安静にしておる。メリエナは、お前がシギルを継承する可能性を口にしていたが……その通りだったな」


「良かった……お姉ちゃん。良かったよぅ……」


 お姉ちゃんが無事と聞いて、思わず涙が溢れてきた。



 でもまだ安心は出来ないね。

 このままじゃあウィラー王城も陥落してしまう。


 そうさせないために、私たちは来たんだ!

 涙を拭って、私はお父さんに宣言する。


「お父さん、私も戦うよ!!」


「……ならぬ。まだ遅くはない、お前はここを脱出せよ。お前さえ生き延びていれば……いずれ森都奪還のチャンスも巡ってくるだろう」


 お父さんの返事は予想していたものだった。

 だけど引き下がるわけにはいかない。



「私は戦うよ。エメリナ様からお願いされたから。……ううん、お願いされなくても、私の故郷を見捨てることなんて出来ない!」


「エメリナ様から……だと?」


「カティアと一緒に神界に招かれて直接お会いしたんだよ。今、カティアや他の王族の人たち……シギル持ちの仲間がウィラーを守るため参戦してくれてる」


「何と!?それはまことか!?」


「うん。そして私も。シギルの力だけじゃなく……メリアドール様と同じ力にも目覚めたんだよ。だから、私も戦える!!」



 私には皆と一緒に戦うための力がある。


 私の決意を聞いたお父さんは、少しだけ考えてから再び口を開いて……



「……分かった。かつて初代様に託されたように……エメリナ様がお前に託したと言うのであれば、我々もそれを信じようではないか」


「お父さん……うん!!」




 よし!!


 ここからが私の戦いの始まりだよ!!

 グラナなんかコテンパンにやっつけてやるんだから!!

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