第十三幕 13 『Sランク』


 神殿に行った翌日。


 シェラさんはもう殆ど体調も元に戻ったようで、私よりも早起きして既に身支度を整えていた。



「あ、おはようございます、カティアさん」


「おはようございます。もう大分体調も良さそうですね」


「ええ、お陰様で」


 今の彼女の格好は、元々着ていた冒険者の服装ではなく、マリーシャが用意した如何にも貴族令嬢っぽいドレスだ。

 昨日も城内を散策する際に着替えていたみたい。


 因みに寝ている間は私の寝間着……では一部サイズが合わなかったので、そちらもマリーシャが用意したものを着てもらっていた。

 ……別に悔しくなんてないもん。



「やっぱり、ドレスが凄く似合ってますよね。流石は皇女さま」


「元……ですけどね。こんな格好をするのも随分久し振りだから……何だか新鮮な気分ですよ」


「ふふ……ここにいる間、何かご入用だったら遠慮なく言ってくださいね。そうだ、今日はどうしましょうか……?」


 暫くは王城で暮らしてもらう事になるのだけど、会談の日までは手持ち無沙汰だよねぇ……


「あぁ、それなんですけど……今日は街の方に出かけようかと」


「あ、そうなんですか?」


「ええ。ミーティアちゃんと約束してまして」


「うん!お姉ちゃんと一緒に出かけるの!クラーナちゃんもだよ」



 あ、いつの間にかミーティアも起きてきてた。

 随分とシェラさんに懐いてるんだ。


 身体が癒えてきたから、今度はマイエンジェル達に心を癒やしてもらうのも良いかもしれないね。



「それで、午後はギルドに行こうかと。今日はカティアさんの認定式があるのでしょう?」


「あ、ご存知でしたか。そうなんですよ……本当は断ろうかと思ったんですけど、断りきれなくて」


 何の話かというと……以前スーリャさんからも聞いていた、Sランク昇格が正式に決まり、その認定式を本日ギルドで行うことになってる。


 最初はそれこそ大々的な式典をするみたいな事を言われたのだけど、それはお断りした。

 正直、最近は殆どギルドの活動出来ていないのに良いのかな……と思ったからだ。



 だから、今日は学園の授業が終わったら、そのままギルドに向かうつもりだ。

 学園の制服のまま、という事になるけど……まぁ、学生の正装みたいなものだから良いでしょう。



「パパやお爺ちゃんも見に行くって言ってたよ」


「そうなの?そんな大層な式じゃないと思うけど……。あ、『お爺ちゃん』ってどっちの?」


「ふたりともだよ!」


「え……父様も来るの?何だか思ったよりも大袈裟な事に……」



 国王とうさまが出席するともなれば、色々と調整が入ってるはず。

 私としてはギルド員内輪の簡単な式程度だと考えてたんだけど。


 はてさて、どうなることやら……























 学園の授業が終わって早速ギルドへ向かう。


 そして、辿り着いたギルド……というか、ギルド前の広場には……



「何か、凄い人集りが出来てるんだけど」


「多分、みんな認定式を見に来たんでしょうね」


「え!?……まだ随分と時間があるはずだけど?」


「カティア様はイマイチご自分の人気の高さをご認識されてないですよね〜」


 い、いや……自覚はあるつもりだったんだけど。

 それでも想像以上に人が集まっていて驚いたよ。



 だけど、ちょっとあの中を突っ切って行くのは大変そう。

 普段は護衛の二人がいるから無闇に取り囲まれる事は無いのだけど、あれだけ人がいると混乱が起きそうだ。


 そう思っていると……



「カティア様、こちらへ……」


「…?あ、スーリャさん!」


 困っているところに声をかけてきたのはスーリャさんだった。

 この人、いつも良いタイミングで現れるなぁ……



「表の出入り口は混乱しますので、裏手の職員用の通用口からお入りください」


「何だかすみません」


「いえ。ギルドとして大々的に喧伝した結果なので……」


 と、申し訳無さそうに言うスーリャさん。

 どうやらギルドとしても想像以上の反響だったみたいだね。



 まぁ、劇団で歌姫なんてやってる訳だし、人気があるのは喜ばしいことだよ。


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