第十三幕 10 『夢から覚めて』
…
……
………
「ん、ん〜……ふぁ〜………………ねむ……」
何か…まだ寝起きなのに凄く疲労を感じる。
普段はスッキリ目が覚めるのに……
あぁ……あの『夢』のせいかな……
とにかく緊張感が半端なかったから。
300年前の魔王と勇者たちの最終決戦。
シェラさんから色々と話を聞いたから、前世の……多分、リディアの記憶が呼び起こされたのかもしれないね。
出来ることなら、あの神殿の場所とかが分かればよかったんだけど。
リディアが途中で気を失ってしまったからなのか……肝心の魔王を倒す場面が見られなかったし。
リシィ……シェラさんが魔王と調律師を封印するところも。
だけど、伝説に語られる出来事が実際にあった事なのだと……凄く実感した。
そして、魔王の強さも。
あの最終決戦におけるテオフィールたちの強さは、一線を画していた。
それこそ今の私などよりも数段は実力が上に見えた。
正にRPGで言うところのラスボスに挑むようなレベルだ。
だけど、魔王の強さは更に上を行っていた。
私だって、ここ半年で強敵との戦いやダンジョン攻略で、かなり実力が上がったと思うのだけど……もし、魔王と対峙するようなことがあったら、まともに戦えるとは思えなかった。
少なくとも、夢で見たリディア王女くらいの強さは身に付けないと……
「おはようございます、カティアさん」
「あ……おはようございます、シェラさん」
そうだった。
私の寝室では今、シェラさんも一緒に過ごしてるのだった。
あと、ミーティアも。
彼女はまだ私の隣で、すぴーすぴー…と寝息を立てていた。
そして、腕の中にはミロンを抱きしめている。
……取り敢えずカワイイので
こういうシャッターチャンスを逃さないように、近くに置いてあるのだ。
印画プレートもかなり買い足してるのだけど、ミロンが来てから更に消費が激しくなってる気がする。
「え〜と……」
いきなり撮影を始めたものだから、シェラさんが面食らってる。
「あ、ごめんなさい。あまりにもマイエンジェルがプリティエンジェルなもので……」
「は、はぁ……確かにミーティアちゃんは可愛いですね」
「そうでしょうそうでしょう」
……などと、朝っぱらから親馬鹿を発揮してしまうのであった。
「じゃあ、今日も行ってきますね〜」
「ママ、行ってらっしゃい!!」
いつも通り身支度を整えて学園へ向かう事に。
「シェラさんはゆっくりして……と言っても退屈ですよね。もし体調がよかったら城内を見学されたらどうでしょう?」
ずっとベッドに居るのも苦痛だよね。
昨日は読書して過ごしてたって聞いたけど。
「それでしたら私がご案内いたしましょう」
「私もお姉ちゃんを案内するよ!」
「お気遣いありがとうございます。そうですね……体調はもう殆ど良くなってるので、確かに少し動きたいですね」
「是非そうして下さい。では、行ってきます!」
「おはようございます、カティアさん」
「あ、ルシェーラ、おはよ〜」
教室に入り、既に来ていたルシェーラと挨拶を交わす。
いつもはルシェーラか私が最初に来て、次いでステラとシフィルの寮生組、そして始業ギリギリくらいにレティがやってくる感じ。
たまに隣のクラスからメリエルちゃんが来る(彼女はステラたちと一緒に登校してるはず。迷子になるから……)。
「昨日はありがとうございました。シェラさんはお元気ですか?」
「うん、もう大分良くなってるみたいだよ。ずっとベッドに居たんじゃ逆に身体に悪そうだったから、城内散策を勧めたんだ」
「それは良いですわね。庭園など見応えのあるところもありますものね」
立入禁止の場所も多いけど……市民に開放してるところもあるし、気晴らしには丁度よいかと思うんだよね。
ルシェーラの言うとおり立派な庭園もあるし。
「それにしても……昨日はお見舞いに行ったはずなのに、シェラさんには辛い話をさせてしまって申し訳ありませんでしたわ」
「でも、誰かに話を聞いてもらって良かったとも言ってたから……良かったんじゃない?あの人はずっと一人で抱え込んでたから……」
「……そうですわね。これからは私達も力になりますわ!」
ルシェーラの言う通りだ。
あの最終決戦を見たら、まだまだ実力を付けなければ…とは思うけど。
少なくとも…シェラさんや私が一人で抱える話でないのは確かだね。
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