第十二幕 43 『王都騒乱』
「巨人は!?」
「街の状況を報告しろっ!」
地下から急いで地上にもどった私達は、地上待機組の騎士たちに地上の状況を確認する。
「陛下!カティア様!地下で一体何が……いえ、それより!突如として巨大な魔物が街中に現れ……」
「それは何処!?」
「な、七番街区に現れたとの報告が…!!」
七番街……『学園』の近くじゃない!!
……いや、学園生の避難さえさせれば、広大な敷地のある学園はむしろ好都合か?
いずれにせよ、早く現場に向かわないと!!
「父様!現場へ急ごう!!」
「ああ!七番街へ行くぞ!!それから王城に伝令だ!!非番の者も緊急呼集して街の防衛に当たるように伝えろ!!」
「七番街の避難誘導もです!!」
「「「はっ!!」」」
父様とリュシアンさんの矢継ぎ早の指示に従って、騎士達が動き出す。
今はとにかく時間が惜しい……救援要請も行われたが、それを待っている暇は無い!
「俺たちも行くぞ!!エーデルワイスの力を見せてやれ!!」
「「「応!!」」」
「ダードレイさん!!どなたかをギルドに回して緊急招集を要請してもらえませんか!?」
リュシアンさんが父さんに言う。
冒険者でもあるエーデルワイスの面々に頼んだほうが早いとの判断だろう。
街に危険が及ぶような時は、ギルドも即応してくれるはずだ。
戦える者は多ければ多いほど助かる。
「分かった!ティダ、頼めるか?お前が一番速えだろ?」
「任せろ。すぐに合流する」
「ティダ兄!お願いね!!」
私の声に手を上げて応え、ティダ兄は颯爽と走り去っていった。
…と言うか、途中から家々の屋根に登って行った。
確かにアレなら早そうだ。
「カティア、俺たちも行こう!」
「分かった!!ケイトリン、オズマ!行くよっ!!」
「「はっ!!」」
一先ずの状況確認と各方面への指示を出した私達は、急ぎ七番街へと向かうのだった。
ーーーー シェラ 対 調律師 ーーーー
地下に残ったシェラと調律師は、激しい戦いを演じていた。
何名かの騎士達も残っているが……別次元の戦いには手出しすることが出来ず、リュシアンから言われた通り戦いの行く末を見守る事しか出来ない。
魔族二人の戦いは、どうやら両者とも魔法を主体にしているらしく、広く間合いを取った状態からの高度な魔法戦が繰り広げられていた。
「『虚空滅却』!!」
シェラが使ったのは、あらゆる物質を消失させる強力無比な攻撃魔法。
魔法の天才児であるレティシアですら長い準備時間が必要なそれを、殆どノータイムで放つ。
恐るべき威力を持った虚無の光が調律師に襲いかかるが、彼女は落ち着いていて迫りくるそれに手をかざして……
「『大聖封神』」
紡がれた言葉に反応して、一瞬のうちに虹色に輝く結界が包み込んだ。
結界に触れた虚無の光は、無数の細かい光に分解され……淡雪のように静かに消え去った。
「……やはり一筋縄では行きませんね」
「もう終わりですか?」
まるで挑発するかのような言葉だが、彼女にそのような意図は全く無い。
抑揚のないその声には全く感情の欠片も感じられない。
彼女はただ、純粋な疑問を口にしたに過ぎないのだ。
「もちろん、こんな程度では終わらないわよ。……それにしても、今回はどういう風の吹き回しなの?」
これまでと異なり、少し砕けた口調で話しかけるシェラ。
その言葉は、何処か親しみすら感じさせるものだった。
「?どういう……とは?」
「あなたが逃げずに私と戦ってる事よ。『黒神教』にとって重要人物だから、無理はしないんじゃ無かったの?」
「あぁ……それなら。私の役目はほぼ終わりましたから。あとは、あの御方が……」
「……そう。ならば!あなたはここで引導を渡してあげるわ!」
「ふふ……あなたにできるのかしら?
初めて感情をあらわにして答える調律師。
その声音は、とても嬉しそうだった。
ーーーーーーーー
突如として現れた巨大な魔物が、建物を破壊しながら暴れ、もうもうと土煙が舞い瓦礫が飛び散って……七番街は混乱に陥っていた。
多くの住民が逃げ惑っている。
……いや、中には果敢にも騎士と一緒に巨人に立ち向かおうとしてる人も結構多い。
イスパルの国民の気質は頼もしくはあるけど……あんまり無茶はしないで…!
おそらくは巡回中だったであろう騎士や兵士たちが既に避難誘導を開始していたが、人手が不足している状況では満足に動けないだろう。
王城に救援要請を出してはいるが、応援が来るまではもう少し時間がかかる……ここは住民の安全確保が最優先か。
「第5小隊から第8小隊までは避難誘導の応援に加わりなさい!それ以外は
「増援が来るまでは足止めを最優先に考えろ!!」
「住民は下げさせろ!!無茶だっ!!」
これ以上被害を拡大させてなるものか……!
混乱を極める王都市街戦……その戦いの幕が上がる!
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