第十二幕 37 『対抗戦三日目の終わり』


 対抗戦三日目の結果である。


 先ずは私も参加したサバイバル戦は、私が早々に脱落するというハプニングがあったものの、他の3人が全員生き残って1年1組が優勝。

 次いで1年2組と3年1組が同率2位。

 そして、MVPにフローラさんが輝いた。


 その他……武術対抗戦の第3回戦が行われ、ルシェーラ、フリードともに危なげなく勝利。

 決勝リーグ戦へと駒を進めた。

 2組はガエル君が3回戦突破したが、フローラさんはサバイバル戦の疲れもあったのか、惜しくも3回戦敗退となった。



 更にマギ・ボールの第2、3回戦が行われたが、シフィルたちは残念ながら3回戦で敗退。

 めちゃくちゃ悔しそうにしていたねぇ……



 そして、レティが出場する魔導戦の第1回戦も行われた。

 戦闘は苦手なんて言ってたけど、流石の魔法チートぶりを発揮して対戦相手を瞬殺して初戦を突破。

 いくら強力な耐魔法特化の結界が張られているとはいえ、武舞台を埋め尽くすほどの飽和攻撃に曝された相手が可愛そうだったよ……



 というわけで1年1組は今日も好成績を残して、現時点のトップである3年1組との差を縮めている。

 明日の武術対抗戦決勝リーグ、明後日の魔導戦決勝リーグの結果によっては、総合優勝も狙える位置に着けているのだった。










 対抗戦の三日目を終えた私は早々に帰城し、その足で父様の執務室へと向かった。

 この時間ならばまだ執務時間のはずだ。


 普段はアポを取ってから訪問するのだが、今回は急ぎ伝えたい事があるので自室にも寄らずに直接向かっている。

 だから、まだ学園の制服のままだ。



 執務室までやってくると、扉の前には近衛が待機していたので取り次いでもらう。

 そして許可を得て、私は部屋の中へと入った。









 父様の執務室は、流石に国王のそれだけあってかなりの広さだ。

 落ち着いた色調の壁や調度品は、仕事を行うには快適そうな環境である。

 部屋の壁の一面は大きな書棚となっており、様々な書物がぎっしりと詰まっていた。

 部屋の中はよく整理整頓されているが、父様のいる執務机の上には決済待ちらしき書類がうず高く積み上げられていて、激務を物語っている。



「どうした、カティア。お前がここに来るのは珍しいな?」


 父様は書類に目を通すのは止めずに私に声をかけてくる。

 少々申し訳ないと思いながらも、私は急ぎ会いに来た理由を話す。



「父様、お忙しいところ申し訳ありません。実は急ぎお耳に入れたい話がありまして……」


 私がそう切り出すと、父様は書類仕事の手を止めて私の方を見る。

 どうやら何事かあったらしいと当たりをつけたようだ。

 目で続きを促される。



「実は……今日、私はグラナの皇女様にお会いしました」


「……なに?どう言う事だ?今日は学園の対抗戦だったはずだろう?」


 私の思いもよらない言葉に、驚きの表情を浮かべる父様。

 まぁ、いきなり言われても訳が分からないよねぇ……



 そうして私は、今日の出来事を詳しく説明するのだった。












「……なんと、そんな事があったのか。まさか、アグレアス侯爵が生きていたのも驚きだが、そのような複雑な事情が絡んでいるとはな……」


「……私が騙されてる、とは思いませんか?」


「ん?お前が見て感じたことに疑念は無いな。エメリール様の眷族たる者は、そういうものだと伝わっておる」


 へぇ……アグレアス侯爵が言っていたことは割と知られてるのかな?



「とにかく、そう言う事ですので……近くエフィメラ様との正式な会談の場を設ける必要があるかと。それと……」


「黒爪だな。こちらの動きを察知される前に、電撃作戦を敢行せねばなるまい。……今度こそきっちり壊滅させてやる」


 ギラリ、と鋭い眼光で父様は言う。

 ちょっと怖かった……

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