第十一幕 10 『ルシェーラ対フリード』

 先程の私達と同じように生徒たちが囲む中、ルシェーラとフリードが対峙する。



 ルシェーラはいつもの通り槍戦斧ハルバード

 実戦で使っている神聖槍戦斧ルーン・ハルバードよりも斧部分がやや小さいが、それでもかなりの重量になる。

 言わずもがなパワー重視のスタイルだ。


 一方のフリードは刺突剣レイピア護手短剣マンゴーシュの組み合わせ。

 攻防のバランスに優れたスタイルと言える。



 これはお互いにやり難い相手なんじゃなかろうか?


 取り回しの難しい重量武器のルシェーラは、懐に入られての連撃は捌きにくいだろうし、一方のフリードも重量武器の重たい一撃は護手短剣マンゴーシュで弾くのは厳しいだろう。


 おそらくは二人の成長を促すための組み合わせかと思える。




「ねえねえ、どっちが勝つと思う?」


 メリエルちゃんが無邪気に聞いてくる。


「フリードも強いけど…まぁ、ルシェーラが勝つんじゃないかな?」


「でも、彼も結構強いよね?」


 今度はレティが聞いてくる。


「もちろん、フリードが勝つ可能性もあるよ。……ただ、もしアイツが勝って調子に乗ったらムカつく」


「「あ〜……」」


 そう言う意味でもルシェーラには頑張ってもらわねば!









「よし、準備はいいか?」


「はい、いつでも大丈夫ですわ」


「俺っちもいいっすよ」


 二人とも気負いなく応え、構えを取る。



「では、始めっ!!」















「はぁーーーーっ!!!」


 開始の合図と共に飛び出したのはルシェーラだ。

 大きく振りかぶりながら一足飛びに間合いを詰め、低い姿勢からの足払い!!



「うわっと!?いきなりかよ!!」


 そう言いながらも、ヤツは後方に飛び退って危なげなく一撃を躱す。


 だが、ルシェーラの攻撃はそれで終わりではない。

 初撃が躱されるのは織り込み済みで、すぐさまハルバードを引き戻し、ヤツを追うように突きを繰り出す!



「くっ!!」


 何とか身体を捻ってそれも避けるが、余裕はなさそうだ。

 開幕の二連撃を辛くもやり過ごしたフリードは、距離を取って体勢を立て直す。





「いいぞ〜ルシェーラちゃん!!」


「変態をやっつけろ〜!」


「フリード!とっととやられちまえ〜!」


 観客から歓声(?)が上がる。



「ちょっと!!お前ら俺っちへの応援が無いんだけど!?」


 当たり前だ。

 (見た目)可憐な美少女と変態だったら、美少女を応援するのが普通でしょ。

 女子も男子も。



「…ちょっとフリード君、可愛そうじゃないかしら?」


「へ?…い、いや、ほら、皆本気じゃなくて、アレはじゃれ合いみたいなものだから…人気者だから逆にヤジも飛ばせるんだよ!」


「…そう?なら良いのだけど」


 …ステラ?

 ま、まさか……いや、そんな訳ないか。


 彼女は優しいから……それ以外の理由は無いはず!



 と、ともかく!

 今はルシェーラの試合に集中だ!











 初撃以降もルシェーラの怒涛の攻撃をフリードがギリギリのところで躱すという構図は変わらない。


 一見してルシェーラが押しているように見えるが……フリードがこのまま受け身のままとも思えない。

 ケイトリンみたいな、何をしでかすか分からない雰囲気があるんだよね。


 ヤツの表情も、最初のおちゃらけた感じは鳴りを潜め、今は真剣そのものといった感じだ。

 …いつもそうしてれば良いのに。





 そう思いながら試合の趨勢を見守っていると……遂に事態が動く。



 ルシェーラの薙ぎ払いを、スウェーバックでギリギリのところで躱したフリードが一気にルシェーラの懐に飛び込む!


「シッ!!」


 そして刺突剣レイピアの鋭い突きがルシェーラの右肩口へと繰り出された!


 だが…!


「ハァーーーッ!!」


 気合一閃!

 ルシェーラから放たれた圧縮闘気がカウンターでフリードを襲う!


 以前ガエル君との戦いで見せた技だ。

 全方位に放たれるこれを至近距離で回避するのは至難のはず。


 しかし…!



「なんのぉっ!!もらったぁっ!!!」


 フリードは咄嗟に攻撃を中断して、アクロバティックに跳躍して闘気を回避!

 ルシェーラの頭上に舞い…そのまま逆剣を振り下ろす!!



「甘いですわ!!」


 ルシェーラを捉えたと思った攻撃は、しかし空を切った。

 

 なんと…最初に躱された槍戦斧ハルバードを地面に突き刺して、棒高跳びの要領で彼女も跳躍したのだ。


 そして、空中でフリードど交錯…そのままヤツを蹴り落としてしまった!


「ぐはぁっ!?」



 そして、地面に叩きつけられ転がったフリードに、ルシェーラの槍戦斧ハルバードの切っ先が突きつけられ……チェック・メイト。



「よし!そこまで!!」


 遂に決着が付くのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る