第十一幕 7 『再戦』


「おはよ〜!」


「おはよう!」


「おはようございます」


「おはよう。皆、久し振りだね」


 ルシェーラと話をしていたら、レティ、シフィル、ステラも登校してきた。

 既に教室には段々と人が増えてきている。



「あ、そうだ。カティア、婚約おめでとう!」


「「おめでとう!」」


「あ、ありがとう、皆」


 皆、祝福してくれるけど、やっぱり照れる。

 他のクラスメイトも挨拶したときに、同じように祝福してくれた。

 照れるけど、凄く嬉しくもあった。


「で、テオフィルスさんも一緒にイスパルに戻った来たんだよね。……もう同室だったりするの?」


「いやいやいや……まだ婚約しただけだし」


 レティの言葉を慌てて否定する。

 ちょっと、こんなところで何言ってるのさ…

 周りの人たちも聞き耳を立ててるじゃないの。


「あら…相変わらずお堅いのですわね」


「け、結婚するまでは清い交際なの!」


「結婚するの?決まったの?」


「ま、まだだけど…少なくとも学園は卒業してから…」


 前世の記憶的に、学生の身で出来ちゃった結婚とかはちょっと抵抗がある。

 …って、私は何を考えてるのっ!?


「…まぁ、顔が真っ赤ですわ。何を想像されたのかしら?」


「何でもないよっ!そう言うルシェーラはどうなのさ」


「私はまだ未成年ですから。卒業する頃には成人しますし、その頃には後継ぎの事も考えないとですわね。ああ、でも…騎士団で支えたいと言うのもありますし、悩ましいところですわ」


 くっ……冷静に返されたよ。

 この話題ではルシェーラに勝てる(?)気がしない…



「と、ところでレティ…式典の事だけど」


 話題を変えることにする。

 敗北ではない、これは戦略的撤退なのだ!


「あ、よろしくね〜。いよいよ本格的に開通に向けて工事を開始するからね!…とは言っても、もう難所の土木工事は大体終わっていて、あとは線路を敷設するのがメインなんだけどね」


 おお…もうそこまで来てるんだ。

 これは開通も近いね。

 楽しみだよ。


「テオフィルスさんと婚約者になったということは…この手の式典は今後は一緒に出席するのかな?」


「うん、そうだね。まだ正式には決まってないけど、将来の王婿として役職には付いてもらうみたい」


「王婿…そう言えば、カティアが女王様になるんだっけ。ついつい忘れそうになるよ」


 まあね。

 段々慣れてきてるとはいえ、自分自身まだ自覚があるとは言えないし。


 と、お喋りをしていたら始業時間になったみたい。

 スレイン先生が教室に入ってきた。


「おう、おはよう。席に付けよ」


 今日は休み明けなんだけど、もう早々に通常授業となる。
























 休み明け最初の授業は武術だ。


 今までは素振りや型をなぞらえるだけだったのだけど、そろそろ組み手とかも始めるみたい。

 先ずは同じ武器種同士で……なんだけど、弓の人はどうするんだろ?




 と、思ってたら…


「カティア!ルシェーラ!シフィル!こっちへ!ああ、あとガエルとフリードもだ!」


「「「はい!」」」


「…はい」


「おうよ!」


 何か呼ばれた。

 …ルシェーラとシフィル、ガエル君にフリードも。


「これから本格的に手合わせなども行っていくことになるが…今日のところは見取り稽古をしてもらおうと思ってな」


 なるほど。

 このクラスの中では私やシフィル、ルシェーラが突出した実力を持ってると言える。

 ステラもかなりの実力者だと思うけど、素の能力は今一歩というところか。

 それに、あの娘は控えめだからね…先生は彼女の実力は分かってると思うけど。


 ガエル君やフリードも次点くらいの実力者だ。



「先ずは…そうだな、カティア対シフィルで」


 呼ばれた私達は、思わず顔を見合わせる。

 そして、お互いに笑みを浮かべる。

 …周りが引くぐらいの獰猛な笑みだ。


「そう言えば、再戦の約束をしてたものね。リベンジさせてもらうわよ」


「ふふふ…そう簡単には負けるつもりはないね」


 お互いに拳を突き合わせて、武神杯以来の再戦に心躍らせる。


「あ〜、盛り上がってるところすまんが、魔法は無しだぞ」


「ええ、分かってます」


「先生、流石にカティア相手だと弓だけじゃキツイので、刺突短剣スティレットも併用して良いですか?」


「ああ、もちろんだ」


 前に武神杯に出場したときも矢をそんな使い方してたし…ダンジョンでは弓はステラに任せてそっちを使ってたと聞く。

 同じくらいの練度があるのだろう。






 そして、準備を終えた私達は同級生ギャラリーが囲む中で相対し、先生の合図を待つ。


 シフィルと戦うのは武神杯以来のこと。

 あの時はほぼ互角で、何とか勝利を収めることができた。


 あれから私はかなり成長したと思うが、おそらくシフィルも同じだろう。

 今回も負けるつもりはないが…果たしてどうなるか。


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