第十幕 31 『愛の囁き』
父さんとミーティア、姉さんたちブラバント公爵家の方々との話を終えて、今は別の人たちが挨拶に来ている。
色々話したい事はまだあったけど、他にも挨拶しようと待っている人たちがいたから、しょうがないね。
まあ、取りあえずは仲直り出来たことも分かったので良しとする。
印象的だったのは、リィナが随分チヤホヤされていたね…
特に姉さんのお父さん、クラウスさんは孫娘にデレデレな感じがした。
本人は顔に出さないようにしようと努力してたみたいだけど、バレバレだったよ。
やっぱり孫は特別可愛いものなんだろう。
その後も暫くは招待客の挨拶を受けるのに忙しかった。
父さんが来たときにしっかり食べておいて良かったよ。
そして、そんな挨拶攻勢も一通り終わって少し落ち着いた頃、フェレーネお
「お疲れ様。もう落ち着いたみたいだけど、大変だったね」
「まあ、主役だからな…母さんだって色々挨拶回りが来てたろ?」
「ハンネス達に任せて逃げてきた。カーシャ様も忙しそうだったけど、アルフォンスだけは暇してたね」
「
「それにしても、カティアちゃん、よく似合ってるね。私の見立て通りだよ」
「あ、有り難うございます。お
「うんうん、この子が選ぶと地味になるだろうから。やっぱり適度にエロが無いとね!」
「え、えろ…」
「母さん、言い方!大人っぽいとかセクシーとかあるだろ」
「何よ。あんただって嬉しいくせに。今夜はお楽しみかい?」
「母さんっ!」
……ぷしゅ〜
「ありゃ、真っ赤になっちゃって。ウブで可愛いわね〜。…何だ、お前たちまだそう言う関係じゃないのかい?」
「…まだようやく婚約したところだぞ」
「はぁ〜…ホントに朴念仁だね。もう少し強引なくらいで良いんだけどねぇ…カティアちゃんだって待ってると思うよ?」
そ、そういう話は本人の前でするものではないと思います…
本当にテオのお母さんとは思えないくらいにあけすけだ。
「そ、それはともかく…お義母さま、体調は大丈夫ですか?」
「あんたも心配性だね。全然大丈夫だよ。……何だかお腹、というか腰が痛いけど」
…え?
それって…もしかして…
「それ陣痛じゃないですかっ!?」
「…陣痛?ああ…言われてみればそうかも?」
「いや、『かも』じゃなくてっ!あわわ…は、早くお医者様を…」
「大丈夫だって。もし陣痛だとしてもまだまだ弱いから、そんなすぐに生まれないよ」
「いや、だからって…」
「パーティーが終わったらセンセに見てもらうさ」
「……言っても聞かないからな。でも、せめて主治医は近くに呼んでおこう。…すまないがお願いできるか?」
「は、はいっ!!」
と、テオが近くにいた従者に声をかけてお願いする。
「大袈裟ねぇ……でも、もしかしたら、この子も早く二人を祝福したいのかもね」
あまりにもお義母さまが落ち着き払っているので、私も少し冷静になった。
「じゃあ、生まれそうになったら私もお手伝いしますね!」
「カティアちゃんがかい?」
「ええ。こう見えてもウチの一座のちびっ子達の何人かは生まれる時に立ち会ってますから!」
さっきは突然のことに慌ててしまったが、出産の場面に立ち会ったことは何度か経験があるのだ。
「なるほど、頼もしいわね。頼りにしてるよ」
「はいっ!」
一先ず落ち着いて引き続きお義母さまと話をしていると、会場に流れていた音楽の曲調が変化した。
「おっと。ダンスの時間みたいだね。ほら、あんたたちも行ってきな。仲の良いところを見せ付けてやるといいよ」
そう言って私達の手を取って立ち上がらせて、広間に押し出される。
「っと、と。全く、強引だな」
「まあまあ、どっちにしても主役の私達が踊り始めないと始まらないでしょ?」
周りを見ると、私達が踊りだすのを今か今かと待っているようだ。
ファーストダンスは主役のものだからね。
「それもそうだな。…では、お手をどうぞ」
「ふふ、ありがとう」
恭しく差し出された手を取って、私達は音楽に乗って踊り始めた。
少し芝居がかった誘い文句に、思わず笑みが漏れた。
そして私達が踊り始めたのを皮切りに、多くの男女も踊り始める。
夫婦や恋人、私達と同じ婚約者たち。
それに、新たに恋が芽生えた人たちもいるかもしれない。
綺麗に着飾った男女が音楽に合わせてクルクルと軽やかに舞い、パーティーは一層華やかさを増す。
「お義母さま、大丈夫かな?」
「自分のことは本人が一番分かってるさ。主治医も呼んでもらったから大丈夫だろう」
踊りながらも囁きあうように会話する。
それなりにダンスの経験も積んだので、割と余裕が出てきた。
「赤ちゃん、楽しみだね」
「そうだな。最初は戸惑ったものだが…今は純粋に楽しみだ」
クルクル。
クルクル。
付いては離れ、クルクル回る。
慣れるとダンスは楽しいものだよ。
「…かなり上達したんだな」
「結構頑張ったんだよ。…妬けちゃう?」
「…まあな。これからは少しは余裕を持てるといいのだが」
ちょっと苦笑いでそんなことを言う。
ふふ、心配性なのはこっちもだね。
「えへへ〜、大丈夫だよ。…でも、ちゃんと掴まえていてね」
「もちろんだ。一生離さない」
テオは力強く私を引き寄せて、顔を寄せて甘く囁いた。
私は恥ずかしさに顔を赤く染めながらも、「うん…」と小さく呟くように応えるのだった。
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