第七幕 33 『武神杯〜本戦 インタビュー』

 武神杯本戦初日の試合は全て終了した。


 未だ激戦の興奮冷めやらぬ中、勝ち残った選手にはまだやる事があった。

 それは…



『それでは、見事今日の試合を勝ち抜いたベスト4の選手の皆さんに話を聞いてみたいと思います!!』


 そう、選手インタビューだ。


 私を含めた四人の選手は再び舞台に上がり、司会のお姉さんからから拡声魔道具マイクを向けられる。


『ますはお一人ずつ今日の感想と、明日の試合に向けての意気込みを語っていただけますでしょうか?』



 最初はラウルさん。


『あ〜、そうだな…今日は一回戦のイリーナがなかなかホネのあるヤツだったな!まだまだ伸びるだろうし、また戦ってみたいと思うぜ。で、明日は嬢ちゃ…もとい姫サマに当たるんだが、もう今から楽しみでしかたねぇぜ!』


『おお!もの凄い気合が入ってますね!』


 ふむ、私の正体を知ってもヤル気満々である。

 やっぱり私が見込んだ通りの漢だね。

 私も彼と戦うのは楽しみである。


『次戦のお相手…カティア様は魔法も武技もハイレベルな強敵かと思いますが、何か作戦はお有りでしょうか?』


 おお、それを聞いちゃいますか!


『作戦?そんな物ぁねえが…いや、秘策はあるな!』


『おお!?それは何でしょうか?』


 いやいや、秘策は秘密だから秘策なんでしょう。


『ふっ、秘密…と言いてえとこだが、特別に教えてやろう!!』


 教えんのかい!?


『言っておくが、俺に魔法攻撃は通用しねえ!!』


 魔法が…?

 それはいったい…?


『魔法が通用しない?どう言うことでしょうか?』


『それは明日のお楽しみだな!』


『なるほど…では明日を楽しみにしております!』


 流石にそこまでは言わないか。

 でも、試合前にそこまでバラすだけでも普通は有り得ない事だね。


 しかし、魔法が通用しないと言うのは…

 考えられるのは、今日の試合で私が使ったような魔法無効果の結界とか。

 でも、ラウルさんは魔法を使うタイプには見えないよなぁ…偏見かもしれないけど。

 そうすると考えられるのは魔道具の類か…特別なスキルか…


 まあ、ラウルさんの言う通り明日の楽しみとしておこうか。



『ラウル選手、ありがとうございました!』


 ラウルさんのインタビューは終わり、彼は観客に手を上げて歓声に応える。






『では続きまして…カティア様よろしいでしょうか?』


 次は私だ。

 本当だったらまだ正体不明のディズリル選手だったんだけどね…

 まあそれはしょうがない。

 観客も盛り上がってるし良しとしましょう!


『今日はなんと言っても初戦のシフィル選手との戦いが圧巻でした!』


『そうですね…彼女は本当に強かったです。最後の攻防は賭けでしたが…正直、どちらが勝ってもおかしくなかったですね』


『解説のダードレイさんが仰ってましたが、最後のシフィル選手の攻撃は予測していたと言うことでしょうか?』


『はい。あの最後の局面まで出さなかった切り札…それはつまり彼女にとってもリスクがあるもの、と考えたんです』


『なるほど…そんな高度な駆け引きも行われていたのですね!』


 それだけ追い詰められていたと言う事でもあるけどね。


『次はラウル選手との対戦ですが、どう攻略されますでしょうか?』


 ふむ…ラウルさんは少しサービスしてくれたし、私もちょっとだけ…


『ラウルさんは何と言っても近接戦闘のスペシャリストですからね。本当だったら魔法を主体にアウトレンジで戦いたいところなんですが…』


『先程のお話ですと、『魔法は通用しない』…ですか』


『ええ。そう言う話でしたね。それがどういう理由によるものなのかはまだ分かりませんが…それが事実なら、後は薙刀による中距離戦か…』


『か?』


 そこで私はラウルさんをチラッと見てから、ニヤリと不敵な笑みを浮べ…


『私も格闘戦を挑むか、ですね』


『ええええっ!?』


 驚きの声を上げるお姉さん。


 だが、私的には選択肢の一つとして十分あり得るものだ。

 前世の【俺】が習得した古流の技は、今の私になってから更に磨きがかかっていると実感しているし。



「ふはははっ!!面白え!!」


 ラウルさんも私の言葉を聞いて好戦的な凄みのある笑みを浮べる。



『ま、選択肢の一つとして考えてるってことです』


『はあ〜、ダードレイさんが言ってた通り、本当に戦い方の幅が広いのですねぇ…』


 もともと【私】自身が色々出来る上に、【俺】とゲームキャラのカティアもベースになってるからね。

 チートだと思わなくもないが…それが今の私だ。


『これはますます楽しみですね!カティア様、ありがとうございました!』


 インタビューが終わって、私も観客の歓声に応えてにこやかな笑顔で手を振る。


『エーデルワイス歌劇団の方もどうぞよろしく〜』


 そして宣伝も忘れない!







『次は…ティダ選手お願いします!』


 ティダ兄は口数は少ないけど、舞台経験豊富だからこう言うのにも慣れてる方だ。


『よろしく』


『きゃーーっ!!ティダ〜!!カッコいいわよ〜!!』


 …姉さんまだ放送席そこにいたの?

 私は恥ずかしいよ…



『あ、あははは…え〜と、本日の試合を振り返って如何でしたか?』


『そうだな…ラウルやカティア程には強敵に当たらなかったからな。些か消化不良なところがあったんだが…次はかなりハードな戦いが期待できそうだ』


 チラッとイーディスさんを見て静かな闘志を燃やしながらティダ兄は言う。


『そうですね、準決勝の相手、イーディス選手も圧倒的な強さで勝ち抜いてきております。何か作戦は?』


『そんな物は無いな。ただ己の力を信じて最善を尽くすだけだ』


『きゃーーーっ!!イカスわ〜っ!!ティダの優勝間違いなしよ〜っ!!』


『だあーーっ!!止めんかっ!!恥ずかしい!!』


 もっと早く止めようよ父さん…

 余りの贔屓っぷりに観客もドン引きしてるよ…

 司会のお姉さんの笑顔も引きつってるし。


『は、はは…え〜、ティダ選手、ありがとうございました!!』


『…エーデルワイス歌劇団もよろしく』


 副団長たるティダ兄も宣伝は忘れない!!







『さあ、最後に…イーディス選手お願いします!!』


『……』


 無言。


 そう言えば、これまで彼の声を聞いてないね。



『あ、あの…こ、これまでの試合を振り返って如何でしたか?』


『……大した事はない。次は楽しみだ』


 お、喋った。

 う〜む、中々シブい声だねぇ…

 イケボってやつだ。


 しかし無口にも程がある。

 実は緊張してたりして。


『え、え〜と…ティダ選手との試合に向けての作戦などは…?』


『……次は本気出す』


 それは作戦ではないね。

 でも、本気と言うのは二刀使うってことかな。


 二刀流vs二刀流。

 だけどその技は全く異なるもの。


 何れにしても楽しみな対戦カードには違いはないだろう。



 そしてお姉さんはそれ以上のインタビューは諦めたようだ…


『イ、イーディス選手ありがとうございました!!…それでは、最後に選手の皆さんに今一度盛大な拍手をお願いします!!』



 ワァーーーーッッ!!!

 パチパチパチパチッ!!


 歓声と拍手が大きなうねりとなって会場を満たす。


 私達はまたそれに応えて手を振りながら舞台を後にするのだった。

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