第四幕 21 『解明』
「さて、カティアよ。先ずお前が聞きたいのは、エメリールの眷族たるお前が…なぜ私の
「は、はい。歴史上、二つの
「ふむ…そもそも
「え?…それぞれの
「正しくは、『血筋であること』、『資質があること』、『同種の
…?
最初と最後の違いが分からないけど…?
『同種の〜』と言うのは、同じ
「その…『血筋であること』と『王族であること』の違いがよくわからないのですが…」
「例えばだ、王家の血筋の者が降嫁などで王族の籍から外れる場合などは条件から外れると言う事だ。人々を導く立場の者に受け継がれるように、と設けられたものだな」
ああ…それで、長い歴史を経ているのにもかかわらず、平民には現れないのか…
「そして、『王族であること』という条件は、受け継がれる
なるほど…
…え?
そうすると、私は一体…?
「カティアのケースは特殊ね。あなたはイスパル王家の娘として生を授かった。にもかかわらずそれが認知されなかった」
…父さんやリュシアン様の話によれば、母は疎開していたアダレットの地で私を産んだということになる。
だが、そのアダレットではクーデターが起きてイスパルに宣戦を布告した…
その時おそらく、イスパルの王族である母は人質に取られそうになるなど、その身に危険が及んだはずだ。
身分を隠し、産まれたばかりの私を守りながら逃亡した、あるいは逃亡中に私を産んだのか…多分、そういう事なのだと思う。
「そうだ。王族でありながらそうではない存在。それは『王族であること』という条件が曖昧になる事を意味する。それ故に、受け継ぐべき
「それでも…通常であれば、可能性が高いのはやはりディザールのものであるはずなの。だけど、ディザールの
「どうして?」
「何故なら、あなたの母親が既にディザールの
「そう、条件の一つだ。もし、同じ王族で
「母が…」
記憶は何も残ってないけど、命懸けで私を守ってくれたんだよね…
母さん…
どんな人だったんだろう?
どんな想いで私を産んだんだろう?
そして…どんな想いで私を父さんに託したのだろう…
「エメリールの
そうだ。
既にリル姉さんの
「先程の条件を聞けば分かる通り、宿す事のできる
「あ…そう言えば…」
でも、宿す事ができる種類には制限があるから、実質的には二種類宿すことはできない。
だけど、私はその制限が曖昧だったから…
「そう、お前は種類の制限が曖昧になっていたので、母親が死んだ時点で私の
「『資質があること』の条件よ。資質と言うのは具体的には魂の質とか強さとか、そういうものなの。でも、どんなに良質で強い魂を持っていたとしても、人間の魂である限りは宿せる
「魂……そうすると、やはり…?」
「そう。あなたの魂は…元のカティアの魂もすっかり回復したことによって、最近になって二人分の魂が融合したでしょう?つまり、二種類の
あ、私の魂が統合された事は、リル姉さんには分かるんだね。
「…私は可能性の一つとしては考えていたが」
「……」
ああ!?
もの凄く落ち込んでる!?
これ以上
「お前が転生する時には私も見ていたのだがな…」
「え!?あそこにいらっしゃったんですか?」
「この人、こっそり覗き見をしてたのよ」
あ、ちょっと拗ねてる。
意外と可愛らしいんだな…
「ああ、悪い、そう拗ねるな(すっかり取り繕わなくなったな…)。…まあ、とにかく私もお前が旅立つところを見送っていたのだが、転生前のお前の魂も、その質、強さ、そして善性は
「そうだったんですね…」
「わ、私も当然あなたが優れた資質の持ち主だと思ってましたよ!でなければあのようなお願いはしてませんから!」
「ふふ…分かってるよリル姉さん」
なんか、ディザール様の前だと子供っぽく見えるなぁ…
「あ、そうだ。今回ミーティアも
「あの子の場合は更に特殊よね。『神の依代』として創られた存在だから…人間に課せられた条件はあまり当てはまらないと思うのよ。その上であなたの魂が核になっているから、私の
う〜ん、リル姉さんでもよく分からないのか。
もう、『神の依代』だから、でいっか。
あと気になるのは…
「
そう、またリル姉さんが悲しむんじゃないかと…
それが気がかりだ。
「多分、それは大丈夫じゃないかしら…」
「そうだな。お前という前例が出来た以上は、今後エメリールの
「え?そう言うものなんですか?」
「そう言うものよ。だから、今後のことは気にしないで大丈夫よ。あなたの愛しい人と子供を残してくれればね」
「にゃ!?こ、ここここ子供って!?…まだ、早いというか………あ、カイトも
「ああ…確かリヴェティアラのだったわね。とにかく、あなたがイスパルの王族であっても、レーヴェラントに嫁いだとしても、私の
と、嫁ぐって…
でも、カイトがレーヴェラントの王族なら、将来的にはそういう事もあるのかも知れないのか。
け、結婚なんてまだ考えてなかったな…
そもそもまだ正式にお付き合いしてないのだし…
「もし、カティアがレーヴェラントに嫁ぐならリヴェティアラには言っておいたほうが良いだろうな」
「そうね。でも、あの娘なかなか捕まらないのよね…」
リヴェティアラ様って「自由の女神」だっけ。
いや、前世の某大国の某大都市にあるやつじゃなくて…
なかなか捕まらないって、本人も自由気ままってことなのかな?
「あとは何か質問はあるか?」
私が二つの
う〜ん、あとは…
「え〜と、あともう一つ。イスパル王家にアルマの血が受け継がれているのは…?」
「…エメリール?」
「…おそらくは、300年前のことかと」
「やっぱり…アルマのテオフィール王子とイスパルのリディア王女の間に子供がいた、ということ?」
「…そうね、私が知る限り可能性があったのはその二人ね。もちろん、全ての婚姻関係を知るわけではないのだけど」
「…実は、最近その二人のことを夢に見たの」
「…え?」
「以前見ていた自分自身と会話する夢みたいに、普通の夢と違って妙にリアルで…過去に実際にあった出来事のように思えるの」
「そう…」
「?リル姉さん?」
「あなたはどう思うのかしら?」
「え?…う〜ん、私の前世…地球のじゃ無くて、
「…可能性はあるわね。それで、もしそうだとしたら?」
「へ?別に何も…。過去の事は過去の事だし、今生きているのは『私』だしね」
私がそう言うと、リル姉さんは嬉しそうに頷いた。
「そう…それで良いと思うわ」
「あ!でも、戦い方は凄く参考になったよ!今回の事件でもそれが助けになったし。テオフィール王子の
「ふむ、初めて発動した割には見事だと思ったが…そのような事があったのか…そうだ、話が終わったら私が稽古をつけてやろうか?」
「え?いいんですか?是非お願いします!」
「…しっかりディザールの気質も受け継いでるのね」
リル姉さんが何か言ってるけど、『武神』と言われるほどの神様に稽古つけてもらえるなんて、滅多にどころか、普通ではあり得ないことだよ!
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