第26話 不穏な影
翌朝…
恋はお味噌汁のいい香りで目覚めた。
「あれ?わたし…」
寝室からリビングに行くと…
「あっ恋!おはよ!」
美紀が元気に挨拶してきた。
「美紀…わたし…昨日…」
「それよりさ…下…何か着ない?」
「え!」
恋が下を見ると、下着とパンストだけだった。
「ひゃ!」
慌てて隠す恋を見て、美紀が大笑いした。
「あはははは!わたしのスカート貸したげる」
「おねがーい」
恋は美紀のスカートを借りて履いた。
「美紀…色々と…ごめんね」
「はい!もう謝るのは無し!ねっ!」
「でも…龍兄にも謝らないと…」
「あー!いいの!いいの!あいつは大丈夫だから」
「うん…」
「一応ね、昨日の夜に関口さんには連絡しといた。私んちに泊まるからって」
「ありがとう…色々と…」
「さっ!ご飯にしよ?」
恋は美紀の作ったお味噌汁を一口飲んだ。
「…美味しい…」
「でしょー!隠し味にバター入れてるから」
「そうなんだ…」
「ねぇ、恋。スカートは一応仮縫いしておいたけど、ちゃんとお直し屋さんに出しに行こ?大事なスカートでしょ?これ。」
「うん。まぁ兄が誕生日プレゼントで贈ってくれたやつだから…」
「うん!恋、貰った時にすっごい自慢してたもんね。鼻の穴大きくしてさ」
「してないよ!鼻の穴大きくなんて」
「あははは!やっといつもの恋に戻ってきたかな?」
「うん…」
朝ごはんを食べて、恋はシャワーを浴びた。
恋はシャワーを浴びながら、昨日の事を思い出した。
(ああいう場合…わたしが受け入れるべきだったのかな…でも…突然すぎて…怖かった…心の準備もしてなかったし…わからない…)
シャワーから上がると、服が用意されていた。
「美紀。シャワーありがとう。服も借りるね」
「うん!気にしないで」
恋と美紀はソファーに並んで座った。
「恋…思い出しちゃうかもしれないけど…さ。昨日の事なんだけど…ちゃんとケジメつけよ?」
「ケジメ?」
「そっ!ケジメ!そうじゃないと恋、あんた前に進めなくなっちゃうじゃん」
「そだね」
「私は恋の絶対的味方だから、なんでも話して?」
恋は美紀を信頼していた。美紀になら、自分の全てを曝け出してもいいと思った。
そして恋は、自分の思いを語り始めた。
「わたしね、まだどれが正解なのかがわからないの。あの時、わたしはまこと君の行為を受け入れるべきだったのか…断るにしても、もっときちんと断るべきだったのか。あんな風に逃げるように帰っちゃって…」
「そう…恋。私の意見言ってもいい?」
「うん…」
美紀は恋の肩を抱いて、優しく頭を撫でながら
「恋は間違ってないと思う。悪いのはまこと君であって、恋は何も悪くないよ。こういう事ってさ、ほら…初めてじゃない?エッチするって。最初ってさ、すっごく緊張するんだよね。特に女の子は。だから、お互いがきちんと求め合ってするべきだと思うの」
「求め…あって?」
「そう!今回はまこと君が一方的にした事であって、恋はエッチするまで求めていなかったでしょ?」
恋は俯いたまま、恥ずかしそうに
「そこまでは…求めていなかった…と思う」
「うん。だってさ、初めての人って特別じゃない?」
「そうかも…」
「だからさ、今回はまこと君が焦りすぎたんだよ。恋は悪くない。わたしだって、龍ちんが急にガバってきたら怖いもん。多分逃げちゃう」
美紀がそう言うと、久しぶりに恋に笑みが戻った。
「ふふ…龍兄はそんな事しないけど…なんか想像しちゃった」
「まぁ、そうやって来たらビンタだね。恋はね、もう一度まこと君に会いたいと…思う?」
「…正直言って、会いたくない…かな」
「だよね。わかったよ。じゃあ連絡来ても、絶対出るんじゃないよ?」
「うん…」
「よし!じゃあ、もう大丈夫だよね」
「ところでさぁ…美紀。ひとつ気になってることあるんだけど…聞いていい?」
「おうよぉ!美紀様になんでも聞いて?」
「美紀は…エッチしたの?龍兄と…」
「え!?あっ…え〜と…」
「したんだ!初エッチ!ちょっと!いつ?どうやって?」
「んと…ね…1ヶ月前くらい…」
「何で報告がないの?約束しなかった?ちょっとぉ」
さっきまで、でーんと構えていた美紀がモジモジし出して、恋に当時の事を語った。
「あのね…龍ちんがお泊まりに来たの…その時にね…流れというか…」
「で?どうだったの?感想は?」
「龍ちん、優しかった。痛かったけど…幸せだった」
「やっぱり最初は痛いんだ…」
「でもね、でもね、うまく表現できないけど…気持ち良かったよ」
「きゃー!美紀ったら!先に大人になっちゃったの?ずるいよー」
「ずるくないじゃん!恋も、素敵な人に初めてを捧げられるといいね」
「素敵な人…かぁ…」
「あー!今まぁやんさんの顔浮かんだでしょ?」
「やだー!顔に出てた?」
「恋はすぐ顔に出るからバレバレなの!」
『ふふふ…あはははは!』
ガールズトークをしたおかげで、恋に笑顔が戻った。
そしてふたりはさらに深いガールズトークで盛り上がった。
あれから数日が経過した。
恋の元には頻繁にまことからの電話やメールが届いていたが、恋はこれを無視し続けた。
メールの内容は、その時の謝罪と会って話をしたいとの事であった。
しばらく無視し続けた結果、メールや電話は一旦止まった。
「まこと君から、連絡来なくなったね」
「もう諦めたんじゃない?」
「うん…そうだといいんだけど…」
そしてその夜…
恋は友達の手伝いで帰りが遅くなってしまった。
冬なので日が落ちるのが早くなり、17時にはもう外は暗かった。
恋はひとりでいつもの帰り道を歩いていた。
(ん?何か…付けられてる?)
恋の後ろをついてくる気配を感じていた。
(何か…怖いな)
恋は学園に向かって走った。
するとその気配も同じ様に走ってきた。
(やっぱり!付けられてる!)
恋は必死に走った。そして学園に着いた。
「恋ちゃん!どうしたの?そんなに息切らして?」
「佳奈さん!はぁ…はぁ…わ…わたし、はぁ…はぁ…誰かに付けられてる…」
「何ですって!」
関口さんは、おっきなほうきを持って、学園の外に行った。そして
「誰だ!出てこい!」
っと叫んだが、誰もいなかった。
「なんかやだね。警察に言うかい?」
「でも…」
「わかった。明日からわたしかスタッフの誰かが駅まで迎えにいくから」
「ありがとう!」
恋は今日の出来事を美紀にも話した。
☎︎「あいつかな?急に連絡無くなってからすぐだもんね」
☎︎「わたしもチラッとよぎった。でもなんで…」
☎︎「納得いってないんだよ。きっと。怖いよね」
☎︎「一応、明日から学園のスタッフさんが駅まで迎えに来てくれるから大丈夫なんだけど…」
☎︎「それ大事だけど…根本的な解決ではないよね」
☎︎「うん…」
☎︎「わかった!私、龍ちんに相談してみる」
☎︎「龍兄に?」
☎︎「実は今日、これから来るんだ。だから相談してみる」
☎︎「わかった…」
美紀は龍弥に恋のことを相談することにした。
そして龍弥が到着するのを待った。
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