第21話 告白


告白


8月5日、キャンプ当日

出発は学園からとなった。

皆が続々と集合してきた。

「恋!忘れ物ないか!」

「なーい!全部積んだよ!」

美紀たちも合流して、車の席取りが始まった。

「美紀ちゃん達はどうする?」

「私は龍弥さんの車に乗る!」

美紀は積極的に、龍弥の近くをキープした。

(美紀ったら。なかなかやるわね)

恋は美紀の積極的な行動にほくそ笑んだ。

「まぁやんさん!車に乗せて貰ってもいいですか?」

麻衣子も負けじとアプローチする。

「いいけど…俺の車狭いぞ?」

まぁ兄の車は日産の180SXというスポーツタイプの車であった。

とてもキャンプに行くような車ではなかった。

「ごめんな。レンタカー借りられなかったんだ」

「全然大丈夫です」

恋はまぁやんにアプローチする麻衣子を見て、少しイラッとした。

「まぁ兄!わたしも乗る!」

「お前もか!しゃーないな。どっちか後ろだぞ」

麻衣子は恋を見る眼が変わった。

「恋!負けないよ」

「わたしだって!」

『じゃーんけーん…ポン!』

恋が勝った。

麻衣子は悔しそうに、後部座席に乗り込んだ。

「まぁ兄。お邪魔します」

「てかよ!お前らがもたもたしてっからみんな行っちゃったじゃねーか!」

「ごめーん。急ごう」

そしてキャンプ場へ向けて出発した。


龍弥の車では、美紀が龍弥に猛アタックをしていた。

「龍弥さん、キャンプは良くいくんですか?」

「まぁ…たまにね」

「何だか龍弥さんってキャンプ似合います」

「はぁ?なんだそれ?」

「何か…頼れる男性っていうか…」

「ふふ。ありがとうよ」

美紀は順調に龍弥との距離を詰めていった。

「ところで美紀ちゃんは彼氏いるの?」

「えぇ!いないですよ〜」

「そうなんだ。モテそうなのにね」

「…そんな…でも…好きな人がいます」

「そうなんだ。どんな人?」

「カッコよくて、頼り甲斐のある人なんです」

「へー。高校生でもそんな男いるんだ」

「あっ!その人は年上なんです」

「美紀ちゃんは年上好きなんだ。意外だな」

「そうですか?」

「なんか、引っ張っていきそうな感じだと思った」

「よく言われるんですが…実は甘えたい方なんです」

「ふふふ…可愛いね」

美紀はまたまたキュン死した。


一方まぁやんの車内でも、麻衣子がまぁやんの事を知りたくて、色々質問していた。

「まぁやんさんってどんな女性がタイプなんですか?」

「んーそうだな…おしとやかだけど、芯の強い人かな?」

「見た目はどうですか?」

「見た目…あーそうだな…俺足フェチだから、足が細くてすらっとしてる人かな」

「まぁやんさん、可愛い」

「なんだよ…それ…どこが可愛いんだ?」

「普通ならフェチなんて言いませんよ」

「はははは!そっか!うっかり喋っちまったな」

(まぁ兄は足フェチっと)

恋は頭の中にインプットした。

「まぁやんさんの初恋の話聞きたいです」

「えー!めちゃ恥ずかしいじゃん」

「じゃあ、私から話しますね!私は…」

麻衣子は赤裸々に初恋話を始めた。

「はい!次は恋の番だよ」

「えっ!わたし?」

「そ!はやくぅー」

恋は初恋の相手が隣にいるのに…と思いながら答えた。

「わたしは年上の人なんだ。初めてあったときは怖かったんだけど、実はすごく優しくて…」

「へー!恋は年上なんだ?どれくらいなんだ?」

まぁやんが恋に聞き返した。

「結構年上…かな」

「わかった!龍弥だろ?」

まぁやんはこういうことはすごく鈍感であった。

「言わない!はい!まぁ兄の番」

「俺か…俺も年上だったな…髪の毛の匂いがすごくいい香りがして、優しくて…」

そこまで言ったら、まぁやんは黙ってしまった。

「ん?どうしたの?」

「あっ…いや…止めよう。あまり思い出したくないんだ」

車内がり沈黙した。

「よし!飛ばすぞ」

まぁ兄は車のスピードを上げた。


みんなキャンプ場に着いて準備を始めた。

龍弥はテントを設営して、まぁやんはタープを設営した。

女性陣は食材の仕込みを行ってた。

野菜を洗いに恋が行くと、麻衣子も一緒に来た。

「恋…もしかしてさ、まぁやんさんの事好きなの?」

「えっ!いや…その…」

「だって恋のお兄さんでしょ?」

「でも、血の繋がりはないから。ただ兄として今まで尊敬してたってだけで」

「今まではってことは…好きなんだね?」

「うん…ごめん。麻衣子」

「謝る必要はないよ!ただライバルになったんだから」

「うん。ライバルでも、友達だよね?」

「そりゃそうだよ!私は負けないよ!」

麻衣子は 鼻息を荒くして去っていった。

(わたしがまぁ兄のことが好き?男性として?そっか…)

恋がモヤモヤしていたものがスッキリした。

気持ちが確信に変わったからだ。

「麻衣子に負けない」

恋はまぁやんに対しての想いを「恋」だと認めた。


夜も更けて来た頃…

龍弥はひとりで歩いていた。

そして、湖のほとりで座って、地面に寝転んだ。

龍弥の視線の先には、満天の星空が広がっていた。

「綺麗だな…」

すると横から

「ほんと綺麗…」っと声が聞こえた。

「うわぁ!」

龍弥は驚いた。

「へへ!見かけちゃったから」

美紀だった。

「美紀ちゃん。びっくりしたよ」

「龍弥さん。一緒に星見ましょ?」

ふたりは並んで寝転んだ。

「なんかさぁ、落ち着くよな…」

「うん…」

「星も綺麗だし」

「うん…」

「湖の波の音もいいね」

「うん…」

「なんか…うんしか言わないね?」

「うん…」

「美紀ちゃんの好きな人って…俺でしょ?」

「うん…」

「やっぱり」

「どうしてわかったの?」

「あんだけアプローチされたら気づくでしょ?」

「そっか…」

美紀は起き上がって龍弥を見た。

「ちゃんというね。私、龍弥さんのことが好き。龍弥さんから見たら、私なんて子供かもしれない。だけど、この想いにウソはつきたくない」

「……」

「龍弥さん?」

すると龍弥はガバっと美紀を抱きしめた。

「あ…」

「美紀ちゃん。ありがとう。嬉しいよ。ただ一つだけ約束してくれ?」

「はい…」

「もう二度と、「私なんて」って言うな。美紀ちゃんは子供なんかじゃない?立派な女性だよ」

「龍弥さん…」

「俺で良かったら…付き合おう!」

「はい!」

ふたりは再び、星空の下で抱き合った。

「でもさ、一つだけお願いしていい?」

龍弥が美紀の耳元で囁いた。

「ん?」

「まぁやんにだけは、しばらくこの事伏せておいてくれ。俺から折を見て話するから」

「うん。いいけど。どうして?」

「今度話すけどさ、あいつの女絡みのトラウマがあってさ。だから頼む」

「わかったよ。恋には報告していい?相談してたし」

「わかった」

「ふふふ」

「ん?どうした?」

「さっきまで、龍弥さんと話すだけで緊張してたのに、今は全然平気だよ」

「なぁ?」

「ん?」

「ふたりだけの時は…龍弥でいいよ」

「龍弥…」

「美紀…」

自然の流れで…ふたりは…初めての口づけを交わした。

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