第56話 夏コミに行こう②
夏コミ当日になる。
朝から莉央と一緒に会場へと向かう。
会場に近づくに連れて、コミケに行くと思われる仲間たちが増えてくる。
何となく、雰囲気を見たら同士だとわかるものである。
最寄り駅から30分ちょっとかけて、コミケの会場に到着する。
会場の分かりやすい位置に緋山さんが立っていた。
「おはよう! 2人とも」
「おはようございます」
朝だというのにすごく元気である。
緋山さんは早朝の番組もやっていたので、朝は得意なのかもしれない。
「じゃあ、早速2人には着替えてもらおうかな」
あと30分ほどで開場する。
その前に、全ての準備を済ませておきたいらしい。
俺たちは緋山さんから、衣装を渡された。
緋山さんに指示された通りに着替えを済ませる。
今日の衣装はリュアーグがリリースしている育成系RPGの人気キャラだ。
「おお、似合ってるよ。2人とも。やっぱり私の見立ては間違っていなかったね」
緋山さんは満足そうに頷いている。
莉央と緋山さんもまた、同じゲームの女性キャラに、コスプレしていた。
「じゃあ、私たちのサークルに行こうか」
リュアーグのブースは壁側。
所謂、壁サーというものであった。
様々なゲームで人気を出している企業なので、それもまた頷ける。
「おはよう。お二人さん」
「おはようございます」
そこにはリュアーグの代表、大谷さんが居た。
「社長自ら来ているんですね」
「まあ、最初だけだけどね。午後から別件だから」
大企業の代表ともなれば分刻みのスケジュールになると聞く。
「まあ、ぶっちゃけ、莉央さんのコスプレを生で見たかった!!」
大谷さんは興奮している。
まあ、このくらいのフットワークの軽さは経営者にとって必要な器量なのかもしれない。
「さすが、美人プロゲーマーは似合っちゃうね」
「社長、私はどうなんですか?」
「もちろん、あやっちも似合ってるよ」
この2人は長い仲だと聞いているが、よく分からない関係性ではある。
リュアーグのブースにはゲームに登場したキャラの画集やフィギア、ポスターなどが並んでいる。
「お客さん、来てくれますかね?」
莉央が俺に尋ねてくる。
「まあ、リュアーグは大企業だし、その点は問題ないだろうな。それに、俺たちの投稿もバズったし」
莉央と俺がコミケでコスプレをするという話は、事前にSNSで告知していた。
その投稿は莉央の方が驚異の2万いいねという数字を叩き出していた。
ただ、コスプレをしてコミケに出るよという投稿に対して、その数字だ。
期待値が相当高まっていると思われる。
俺たちと直接交流できる場は少ない。
今回はその交流の場として機能するかは分からないが、ファンからしたら貴重な会える場となるだろう。
まもなく、開場の時間となる。
俺は大きく息を吐き出した。
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