第43話 順位予想
莉央との楽しい時間はあっという間に過ぎ去って行った。
そして、親父は完全に出来上がっている。
あのあともハイボールを飲み続けていたのだから当然だろう。
「じゃあ、私はそろそろ帰ろっかな」
「送ってくよ」
外はすっかり暗くなっていた。
「ありがとう」
「気にしなくていいよ」
マンションを出て、莉央を駅まで送っていく。
「今日はありがとうね。お父様も、妹さんもすごく話しやすくていい人だね」
「莉央がそう思ってくれたなら良かったよ」
「なんか、諒の今があるのってお父様と妹さんのおかげなんだなって」
「ありがとよ」
そんなことを話していると、駅まで到着した。
「送ってくれてありがとう。じゃあね」
莉央は小さくてを振った。
「うん、じゃあね。親父もああ言ってたし、気が向いたらまた飯食いにきてよ」
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えようかな」
俺が莉央に手を振りかえすと莉央は改札の中に消えて行った。
その笑顔を見るに、今日誘って良かったと思う。
そして、莉央と駅で別れて数時間後の出来事である。
プロホプルの日本大会まで、二週間を切っていた。
公式から、順位予想というものが発表された。
この予想は、一般のファンたちが投票して順位が決定するのである。
予想順位1位の所に、『Takamori、夏目莉央』の名前が並んでいた。
その下にはゲーム実況系のVtuberの名前があった。
実力も確かな2人である。
順位が発表されてすぐに、莉央から連絡が入った。
『1位だったね!』
「そうだな。三位くらいだと思ってたよ」
俺たちはデュオ部門では初出場である。
デュオ部門では、新参者なのだ。
それを考慮したら、順位は少し落ちると思っていた。
しかし、その考えは甘かったようだ。
大会優勝ペアとなれば、順位は跳ね上がる。
『期待されちゃってるね』
「みたいだなぁ」
公式からも、今大会1番の注目ペアとして押し出されている。
明日は、大会直前インタビューという企画が上がっている。
順位予想が1位だった俺たちは、当然その対象となった。
『明日のインタビューも楽しみだね』
「ああ、顔出しはまだ緊張するけどね」
顔出し配信は何回もやってきたし、数十万人の前で顔を晒して来た。
別に顔出しに抵抗があるわけではない。
しかし、どこか緊張している自分がいた。
『大丈夫だよ! 諒はかっこいいから』
「嬉しいこと言ってくれるね。まあ、莉央が居てくれるなら大丈夫だよ」
『それは、嬉しいですねぇ』
謎のスタンプと共に莉央から送られて来る。
「じゃあまた明日、いつものスタジオで」
『了解!』
そこにスタンプを送ると、俺はスマホを閉じて、パソコンへと向かった。
少しでも大会までに練習しておきたかったのである。
他の出場メンバーのプレイ動画も見たが、負ける可能性だって十分にある相手だとわかった。
慢心は一番の敵であるのだ。
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