第17話 晩ご飯デート

確か、近くにパスタの専門店があったはずである。


「ここでいいか?」


 喫茶店を出て、数分歩いた所で目的のお店に到着する。


「うん、いいよ。諒ってオシャレなお店知ってるんだね」

「まあ、地元だしな」


 生まれた時から、ここに住んでいるので何がどこにあるかなどは大体分かっている。


「いらっしゃいませー」


 中に入ると、ウェイトレスの制服を来た女性の声が飛んでくる。


「2名様ですか?」

「はい、2名です」

「空いているお好きな席にどうぞー」


 店内は混んでいるという訳でもないが、空いているという訳でも無い。

俺たちは奥のテーブル席へと座った。


「決まった?」


 莉央はメニューを真剣に眺めている。


「うーん、このチーズがいっぱい乗ったやつにしようかな」

「いいんじゃないか」


 女の子ってチーズ好きな子が多い気がするのは、偏見だろうか。


「諒は決まったんですか?」

「うん、俺はこの和風パスタにしようかと」


 俺はテーブルの上にある店員さんを呼ぶボタンを押す。


「はい、お伺いします」


 先ほどのお姉さんが注文を取りに来てくれる。


「トマトチーズパスタを一つと、和風パスタを一つお願いします」

「かしこまりました。お飲み物もセットにできますが、どうされますか?」

「じゃあ、アイスコーヒーで。莉央は?」

「アイスティでお願いします」


 注文を終えると、少々お待ちくださいと言ってお姉さんは離れていく。


「ごめんね、なんか私のわがままに付き合ってもらうみたいで」

「ん? 何のこと?」

「ほら、世界大会目指すって」


 そこで、莉央は水を一口飲んだ。


「いや、俺は莉央の提案すごく嬉しかった。それに、二人なら、世界トップも夢じゃないと思うんだ」


 一度、世界大会で優勝しているからこそわかる。

莉央の実力は十分世界でも通用する。

後は、連携をうまく取っていくことが鍵になるだろう。

 

 でも、それは今後一緒にいる時間が長くなれば、自然と出来て来ることだろう。


「そういうとこ、好き」


 莉央は花が咲いたような笑みを浮かべて言った。

その笑顔に俺は引き込まれる。


「私の顔、何かついてる?」

「いや、すまん。何でもない」


 莉央の声で、俺は視線を外す。


「いくら、私が可愛いからってそんなに見つめられたら照れるぞ!」

「それ、自分で言うかね。まあ、可愛いですけどね」


 俺が何気なく言った一言で、莉央はパッと顔を赤くした。


「お待たせ致しました。トマトチーズパスタと和風パスタです」


 その時、注文していたものが届いた。


「アイスコーヒーとアイスティです。ご注文は以上でよろしいですか?」

「はい、大丈夫です」

「では、ごゆっくりどうぞ」


 店員さんは伝票を置いて、その場を離れる。


「食べよっか」

「うん」


 俺は莉央にフォークを手渡した。


「ありがとう。いただきます」

「いただきます」


 俺たちはパスタを食べ始めた。

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