泥酔魔王の過失転生～酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない！～

第30話 オズVSジーク（1）

「よし、やろうか」

「はい」

　オズとジークは、それぞれがアップをしながら準備している。

　オズは、まだ正体を隠すことを諦めていない。

　何か1つくらいはあるだろうが、ジークの今の実力を見ないと分からない

「シェリー、合図してね」

「はぁい」

「まずは、様子見するか」

　始まる前から、空気が先ほどまでとは違うのが肌で感じられる。

　この戦いは、普通ではないと。

「はじめぇー」

「出てこい、闇の騎士（ダークナイト）！」

「この数は凄いね」

「この数の召喚は初めて見るね（キラーン）」

　シェリーのふにゃけた合図とともに、戦いは始まった。

　オズは、様子見の為に闇の騎士（ダークナイト）を1000体程召喚した。

　既に普通ではないのだが、全員の感覚がおかしくなったのか、感心している。

「一気に倒すよー！　光の矢（ライトニングアロウ）！」

「ジーク、光属性魔法も使えるようになったのか」

　ジークの放った光の矢（ライトニングアロウ）は、雨が降るように闇の騎士（ダークナイト）を襲う。

　闇の騎士（ダークナイト）は、一瞬にして全滅してしまった。

「ジーク、ちゃんと修行続けてきたんだな」

　オズは、ジークがずっと頑張って修行していたことを感じ、嬉しく思っている。

　今のジークの実力は、全盛期の魔王と変わらないレベルだ。

「あ、これならいけるかもしれない。ちょっと試してみようかな」

　オズは、ついにジークに正体を明かすことなく戦う方法を思いついた。

「召喚（サモン）！」

　それは、バハムートのハムを召喚することだ。

　ハムがジークを倒してくれれば、オズの実力は隠すことができる。

　オズは、自分の頭の良さに困ってしまうと言わんばかりのにやけ顔をしている。

「今度は、テイム・モンスターか。どんなのを召喚するんだ？」

　ガオー

「……（ドヨーン）」

「可愛いなぁ」

「こんなかわいいのを戦わせるのか？」

「ご、ご主人お呼びですか？」

「おい、その姿はなんだ？」

「この姿じゃないと危ないので」

　呼び出したハムは、とても小さくて小動物みたいだ。

　ハムは、周りへの危険を考慮して小さくなっていたのである。

　みんなは、ハムを見て癒されている。

　一方のオズは、軽蔑の眼差しを向けている。

「仕方ない奴だな。障壁（バリア）」

「なんで障壁（バリア）を張ったんだ？」

「これからの楽しみですよ。ハム、これでいいだろ」

「ありがとうございます。いくぜー！！！」

　グワァァー！！！

「こいつ、バハムートか？　どうやって飼いならしたんだ⁉」

「神話で見た奴だぁ」

「こ、こんなのありえない（ビクビク）」

　流石に感覚がおかしくなっていても、神話の世界のモンスターが目の前に現れたので驚き、怯えている。

　しかし、ジークは戦う気でいるようだ。

「相手はかなり強いけど、殺しはするなよ」

「了解しました」

「おそらくギリギリになりそうだな」

　ハムとジークは、互角に戦っている。

　しかし、ハムは封印が解けた日以降、動いていないので体力が尽きてきた。

「はぁ、ハムは鍛え上げないといけないな」

「貴様、なかなかやるな」

「どうも、次で終わらすよ」

「光の新星（ライトノヴァ）！！！」

「ハム、消えろ。それが当たったら死ぬぞ」

「わ、わかりました」

「正体を隠すのは無理そうだな」

　オズは、バハムートがジークに倒されることが分かったので、やられる前に消えさした。

　ジークは、集中している為、お構いなしに放ってくる。

　オズは、正体を隠すことを諦めて、ジークと戦うことにした。

「これで終わりだ！　っていないじゃん……」

「パパ、見えてなかったんだぁ」

「先生は偉大だね！（キラーン）」

「まあ、オズ君を仕留めれたらいいか」

「それは無理だな」

「笑っている？」

「無の世界（ディナン）」

　シュゥゥン

「き、消えたのか⁉（オドオド）」

「これは、私たちも見たことがない魔法だぁ」

「無の世界（ディナン）まで使えるなんてね。君は一体何者なんだい？」

「ただの小さな村に生まれたオズですよ」

　オズとジークは笑っている。

　しかし、表情とは裏腹にもの凄い殺気が漂っている。

　これから、見たことのない戦いが始まろうとしている。

「この戦い、楽しみだね」

「そうですね。久しぶりだ」

（この子、久しぶりって言ったのか？　どういう意味だ？）

「ジーク先生、行きますよ！」

「来い！」